2020/09/12
680.
「ウオッスみずきオッハヨゥッス!」
「あら美々香おは・・・え、何その恰好」
「今日のラッキーカラーが黒だから合わせた!」
「黒のアイテムなら他にも色々あるでしょう。何でそれにしたの」
681.
「そりゃあ黒が多い方がいいだろう? ほれほれ~、あんたの想い人の服だぜぇ?」
「勝手に人を変態にしないで。私が興味あるのはあなたの義姉になることであって、お兄さんそのものではないわ」
「それも十分フツーじゃないんだが」
「あなたがフツーじゃないからこうなってるのよ」
682.
「今日1日それで過ごすつもり?」
「当然だろ? 自分の制服は家に置いて来てんだから」
「いやいや、既にかなり目立ってるけど。今の内ならまだパフォーマンスで済むんだから、遅刻してでも着替えて来なさいよ」
「やなこった。どんな服着てたって授業自体は変わらんだろう?」
683.
「いやでもまだ長袖暑いでしょ」
「甘いな。その程度でラッキーカラーを無視する訳がないだろう。真冬にミニスカ履くのと同じだと思え」
「ファッションと運勢を同列に語らないでもらえる?」
「ホントに甘いな、みずきは。私は今日着たい服を着たまでだ。理由なんて二の次なのさ」
684.
「ではホームルー…って満月さんどうしたの。川にでも落ちた?」
「失礼な。今日のラッキーカラーに合わせただけですよ?」
「そんな理由で自由を主張するものじゃないわ。着替えて来なさい」
「私は今日スーパーにパーフェクトなんだ! この恰好じゃないと集中できないんだ!」
685.
「仮にあなたが集中できても周りが集中できないわ。そもそも今は夏服よ?」
「お言葉ですが、先生」
「あら橋口さん、どうしたの」
「校則では制服を着用すればいいとしかなっていないため、入手さえできれば日替わりでも、真夏に学生蘭服を着用しても問題ないものと思われます」
686.
「なん、ですって・・・!?」
「よく言った、委員長!」
「し、しかし・・・これではあなたも集中できないでしょう」
「今日のラッキーカラー、でしたか。満月さんの奇行はよくあることなので、平気です」
687.
「そうね。これくらいで気を乱してはいけないわね」
「オイオイ2人して随分な言い草だなぁ?」
「「あなたのような人を学級に抱える身になってから言って」」
「私は抱えてるぜ? 私という人間そのものを」
688.
「あなたは自分だから平気でしょう。こっちはそうも行かないのよ」
「全く、同感ですね」
「委員長はどっちの味方なんだよ」
「規則に忠実なだけです。そしてそれは、個人的な感情とは独立してなければならない」
689.
「もういいでしょう。違反じゃないようだからこれ以上は言わないけど、くれぐれも他の生徒の邪魔はしないように」
「もち! 授業なんて寝るから誰にも迷惑かからんぞ!」
「“この恰好じゃなきゃ集中できない”はどこに行ったのかしら・・・!」
「それは、眠る。あなたの記憶の中で」
690.
「ハァ・・それから、暑いからと言って袖をまくったりしないように」
「アイアイサー!」
「あと、これは断言しておくけど、あなた、明日は自分の制服を着て来ることになるでしょうね」
「オイオイ大した自信だなぁオイ? いいのかな? そんなこと言っちゃってぇ」
691.
「結局認められちゃったわね、それ」
「へっ、当然よ。委員長グッジョブだったぜ」
「半分以上諦めも入ってたようだけどね」
「今さら校則が変わることもないだろう。最後は、時代が私の味方に付いたのさ」
692.
「ブレザーなら違和感も少なかったんだろうけど」
「しょうがないだろ、うちは学ランなんだから。でもこれエリ固くて首キッツいな。確かにこりゃ明日は無理だ、暑いし」
「結局暑いんじゃないの。見てる方も暑苦しいんだから夏服にしてよね」
「明日のラッキーカラーが白だといいな」
693.
「さて最初の授業は数学だな。昼寝日和だぜ」
「本当に寝るのね。ていうかまだ全然昼じゃないけど」
「そういや数学教師って兄んトコの担任だな」
「そういえばあなたのお兄さん、今日はどうしてるの?」
694.
「普通に夏服着てんだろ」
「あ、それもそうね」
ガラッ。
「あ、来たわよ」
695.
「お、満月の妹のクラスだったか」
「チョリッス。どうです、兄がいるような気分になれますか?」
「お前の兄、“妹に制服パクられたショックで動けない”って理由で欠席しやがったんだが、本当だったんだな」
「あいつ私を利用しやがった! もう二度と学ランなんて着て来ねぇ!」