2020/08/08
538.
「いよっし! 全ては金のため、今日は家事にいそしむぞ!」
「ちょっとはお母さんのためとか考えないのかい」
「そういう母さんこそ! 我が子のためとか思ってるのか!」
「半分ぐらいは思ってるよ。あんたと一緒にしないでおくれ」
539.
「私は風呂をやる! 兄はキッチンを頼むぞ!」
「オイなに楽な方に行こうとしてんだ。キッチンが面倒臭ぇの知ってんだぞ」
「心配無用だよ涼太。先に終わった方には次のことをやらせるだけだからね」
「私がキッチンをやろう!」
540.
「言っとくけど、わざとトロくするようだったら小遣いカットするからね」
「そんなことをやってみろ! 労働組合に直訴するぞ!」
「どこにあるんだよ我が家の労働組合」
「私が正義だ!!」
541.
「バカなこと言ってないでさっさとやるんだね。時々チェックさせてもらうよ」
「不当な監視だ! パワハラだ!」
「小遣い、いらないのかい」
「この美々香、喜んで掃除をやらせて頂きます!」
542.
「ちっきしょ~1週間で3千円かよ。普通にバイトやった方がマシじゃんか・・・」
「ぶつぶつ言ってる暇があるんなら手を動かすんだね」
「げっ、母さん。見回りに来んの早すぎだろ」
「目を離した直後が一番サボられやすいって父さんの教えがあるからね」
543.
「おのれ、現役サラリーマン」
「あんたもそのうち社会に出て行くのさ。修行だと思ってみっちりやるんだね」
「だったら尚のことバイトの方がいいだろ」
「アンタたちにちゃんとしたアルバイトは務まらんさ。その前段階の修行だよ」
544.
「別にバイトぐらい軽くやってもいいだろ」
「簡単にお金が手に入るなんて思わないことだね。それに、ここでの仕事なら我が家の役にも立てるし一石二鳥じゃないか」
「さすがに週に3千円じゃ割に合わないんだが」
「割に合わないことをさせられるのも修行のうちさ」
545.
「よし、クレセント! その細い腕を使って排水口を頼む! 私はコンロ回りだ!」
「ニャー! ニャニャニャー!」
「なにぃ? 5リットル100円の安物から“エディアン”に変えるなら考えるだって? 交渉は決裂だな、母さんに直接頼め」
「ニャニャッ」
546.
「チッ、くそが。なんでこんなカビルンルンなんだよ。これ見よがしに普段やってないことまでやらせやがって。ちょっと休憩すっかー」
「ニャー! ニャニャニャー!」
「何だ! クレセント、貴様! タダで手伝えとは言わないが邪魔するな!」
「ニャニャニャー、ニャー!」
547.
「その子は邪魔をしてるんじゃないよ。それが仕事なのさ」
「何ぃ? それはどういうことだ!」
「アンタらの見張りを買って出てくれたんだよ。普段やってる水をグレードアップさせるのと引き換えにね」
「クレセントてめぇ!!」
548.
「ゼェ、ハァ、終わったぁ・・・」
「もうこんくらいでいいだろ、母さん」
「そうだね。今日のところはこんくらいにしておこうかね。掃除は。その調子で晩ご飯も頼むよ。買い物もまだだからね」
「「な、に・・・ッ!」」




