2020/07/25
501.
「海! そして海!」
「なんで2回言ったの?」
「大事なことだからだ!」
「そ」
502.
「てかみずき、今日は思いっ切りアピってくると思ったら意外と控えめじゃないか」
「何事もバランスが大事。あんまりアピールが過剰でもイメージダウンするのよ」
「だったら普段の言動を見直せ?」
「そのセリフ、美々香にだけは言われたくなかったわ」
503.
「おぅ来たか。思ったより早かったな」
「海が待ってるのに時間かけてなんかいられないだろ?」
「んじゃ、場所取りするか」
「そっちは任せたぞ! 私は海が呼んでるから行って来る!」
504.
「ちっきしょ・・・か弱い乙女に力仕事させやがってぇ」
「海に入りたがってたじゃないか。ちょうど良かっただろ?」
「そうよ。あなたの働きでパラソルが準備できたんだから、人の役に立てたと喜びなさい」
「私はその程度で喜ぶほど器の小さい女じゃない!」
505.
「私はな! 人の役に立つことに喜びを感じないんだよ!」
「十分に器小さいじゃないの」
「何をう! バカにしやがって! 海より広い私の心も…」
「それ以上は言っちゃダメよ」
506.
「んじゃ、俺は適当にくつろいでるから、お前ら行ってこ―い」
「なんだ? 泳がねぇのか崇?」
「さすがに見張り番が1人は要るだろ。ぶっちゃけ疲れんのやだし」
「なるほど、さすがみずき兄。“ここは俺に任せて先へ行け”、ってやつだな」
507.
「いや、そんなつもりはないんだが・・・まあいいや」
「でも、盗まれて困るようなのなんてあったかしら? お金なんて最悪はロッカーに戻ればいいし」
「これだ」
「それは・・・伝説のプレミア漫画! “マンガン2世の恋人”!!」
508.
「なんで海にマンガなんて持って来るのよ」
「見張り中の暇つぶしだ」
「なんで見張りが必要な状況になってるんだっけ?」
「こいつが盗まれたら困るからだ」
509.
「別にいいだろ。さっきも言ったけど泳ぐの疲れんだよ」
「ま、兄さんがいいならいいけど」
「そんなことよりみずき、行くぞ! みずき兄、ここは任せた!」
「あと崇、今日の帰りにそれ貸してくれ」
510.
「意図せず両手に華の状態になったな! 兄よ!」
「そのうち片方がお前じゃ華になんねぇよ」
「つまり、私は華として数えられるということですね?」
「ごめん、なんかゾッとした」
511.
「ところで、クレセントちゃんは大丈夫なの? 海」
「心配無用。こいつは“なみのり”をマスターしているからな」
「それでビート板なのね・・・」
「さあクレセント、お前の力を見せてみろ!」
512.
「すご・・・ほんとにビート板に乗ってサーフィンできるのね。でも、それ以前に・・・、」
「ん? どうした?」
「何で二本足で立てるのよ」
「猫だからさ」
513.
「その理屈で言えば世界中の猫が二足歩行できるんだけど」
「“なみのり”のマスターが前提に立つがな」
「待って。二足歩行って、“なみのり”マスターの副産物なの?」
「そうだが?」
514.
「そんなことより、私たちも泳ぐぞ!」
「あ、普通にビート板として使っても泳げるのね」
「クレセントの能力に突っ込むのは野暮だぞ、崇妹」
「そうみたいですね・・・」
515.
「よし! あの浮き島まで行くぞ!」
「地味に遠くない?」
「いざとなったらビート板があるから大丈夫だ!」
「むしろビート板1枚しかないんだけど」
516.
「何言ってんだみずき、“足つった~”とか言って兄に接近するチャンスだぞ」
「だから、そんなあざとい真似したらイメージダウンするって言ってるでしょ」
「作品的にも必要なんだよ、やれよ」
「そっちにも“あざとい”って受け取られるから一緒よ」
517.
「ゼェ、ハァ・・・地味に疲れたな」
「もう、向こうに戻る体力ないんだけど」
「しゃあねぇ、こいつを使うか」
「それは・・・イルカ! よくポケットに入ったな!」
518.
「よし、膨らんだな」
「2人乗りか。ここは公平に、ジャンケンで決めるとしよう!」
「“次回、美々香…”」
「させねぇよ!?」
519.
「「「ジャン、ケン、ポン!」」」
「うっし、まず俺の勝ちだな。あと1人はどっちだ?」
「みずきはさっき言っていた! ここでイチャつくのは“あざとい”と読者に言われるあると! つまり! ここは私が行くしかない!」
「えっ、ちょっ、美々香・・・待ちなさーーーーい!!」
520.
「お、戻って来たか。みずきはどうした?」
「あいつは自力で泳いで帰って来るらしい。タフなヤツだ」
「マジで置いて来て大丈夫だったのか・・・?」
「心配無用。私への怒りをバネに奴は泳ぎ切ってみせるだろう」
521.
「みみ、か・・・・・・」
「お、帰って来たかみずき。おっつかれぇ!」
「よくもやってくれたわね・・・! 私、堪忍袋の緒が…」
「「「やめろ」」」
※「マンガン2世の恋人」は実在しません。




