2020/07/18
475.
「夏と言えば!」
「海!」
「山!」
「という訳で、第31回夏の陣を開催する!」
476.
「見事に海派と山派で2対2に割れたな。まず海派の主張をさせていただこう! 山なんて夏じゃなくても行ける!」
「馬鹿野郎。夏に行くからこそいいんだろうが」
「知るか! 海の時期が終わってから行っても変わらんだろ!」
「やれやれ、これだからお子様は」
477.
「では! もう1人の海派、みずきさんどうぞ!」
「水着を着れるわ。私をアピールするチャンスよ」
「兄よ! これに反論してみろ!」
「それがあるから海に行きたくねぇんだよ」
478.
「では! もう1人の山派、みずき兄どうぞ!」
「俺がこっちに来ないと2対2にならんだろう」
「恐ろしくメタな理由だった!」
「なんてったってコイツは作者にとって“本作品の良心”。作者の都合の良い方に動くのさ」
479.
「だったらせめてその内情を隠して普通に議論に参加して欲しかった!」
「悪いけど嘘はつけないんだ。“良心”だから」
「それは違うぞ! 良心からつく嘘もあるはずだ」
「確かにこの場でのメタ発言での議論放棄は良心的とは言えんな」
480.
「悪い、じゃあ議論に入るか。山だとな、涼しいし日陰もある。暑さから逃れるために山に行くんだ」
「何事もなかったかのように始めたぞ。さすがは“良心”、素直だ」
「だからこそ取って付けた感ハンパないわよ。あれ絶対本心じゃないでしょ」
「しょうがないさ、このまま続けよう」
481.
「世の中には、敢えて本心と反対側の席に座らせて議論させることもあるらしい!」
「この間、本心とは逆の立場の作文をさせられたわね」
「しかし私は何も書かなかった。学校の成績よりも守るべきものがあるのさ」
「はいはい。それより海か山かの話を続けるわよ」
482.
「山派の主張は”涼しい”ってことだったな。そんなものはエアコンで手に入る! 涼むために山に行くなど愚の骨頂!」
「違うぞ美々香。海か山か、どっちかに行かねばならんとなったら涼しい山を選ぶんだ」
「なぜ義務感覚で出掛けるんだ!」
「お前が“どっか行くぞ”とか言うからだろ」
483.
「ということは、言い出しっぺであるこの私が行先を選べる! だから海だ!」
「連れ回される側の意見を取り入れろ。お前は“一緒に出掛けてください”って頼む立場だから、行先の選択権はこっちにある」
「私はお兄さんに同行いただけるならどっちでもいいわ」
「みずき!!」
484.
「まあぶっちゃけ俺もどっちでもいいんだけどな」
「崇てめぇ!!」
「この兄妹は自分というものを持ってないのか!」
「フッ、所詮、俺ら兄妹には勝てないのさ。満月こそ、最強」
485.
「お兄さんのいる方に私も行きたい。それが私よ」
「作者にとって都合の良い方に振る舞う。それが俺だ」
「それを“自分を持ってない”って言ってるんだろうが」
「自分を持ってる人間がどうなるか、あなたを見てたらよくわかるのよ、美々香」
486.
「それは負け惜しみだな。 まあ? 周りにどう思われても関係ないし? 自分にさえ愛されればなぁ、人生勝ち組なんだよ!」
「私、急激に山に行きたくなったわ」
「何っ!?」
「残念だったな美々香、これで3対1で山だぞ」
487.
「み、みずき兄! こっちに来い! どっちでもいいんだろう!?」
「それは無理だ。そろそろ終わらせねばならんからな。このまま決着にしよう」
「な、なんだってーー!!」
「あなたの負けよ、美々香。自分にさえ愛されれば勝ち組ですって?」