2020/07/05
432.
「母よ!」
「なんだい、うるさいね」
「猫を拾って来たぞ!」
「はぁ? なに子供みたいなことしてんだい」
433.
「そりゃ子供だからな。ピチピチの女子高生さ」
「ピチピチじゃない女子高生もいるってことは分かったよ」
「ハンッ、自分がそうだったんだな」
「否定できないから“ピチピチじゃない女子高生”は最低でも2人だね」
434.
「おいおい自分はともかく実の娘にそんなことを言うのか?」
「むしろ人んちの娘には言えないね」
「わたしは実の親友にさえ言えるぜ? なあみずき?」
【そんなくだらないことで電話しないで。あと猫は?】
435.
「おや、みずきちゃんかい。すまないねぇ、こんな奴と仲良くしてもらって」
【いえ、お気になさらないでください。お母さま】
「あらまぁ、“お母さま”とは嬉しいねぇ。ホントにお嫁に来てもいいんだけど涼太にはもったいないか」
【いえ、お気になさらないでください。お母さま】
436.
「オイなに外堀埋めようとしてんだ」
「いいじゃないか美々香。いい子なんだし。ピチピチの女子高生っていうのはみずきちゃんみたいな子を言うんだよ」
「いやソイツ頭のネジ何本かイッちゃってるぞ?」
【脳内でネジが踊ってる人に言われたくはないわ】
437.
「そうだよ美々香。みずきちゃんはアンタの100倍は良い子なんだから悪く言うんじゃないよ」
【お言葉ですがお母さま、美々香はマイナスなので100倍ではマイナスに大きくなってしまいます】
「おっと、そうだねぇ」
「今コイツ母親の前で“人んちの娘”を壮絶にディスったんだが?」
438.
「にゃ~~ん」
「おっと、猫を拾って来てたんだった」
「ちゃんと世話するんだろうね」
「するさ! 兄が!」
439.
「おい、通りすがった所に何押し付けようとしてんだ。お前が拾ってきたんだろ」
【安心してください、お兄さん。猫の飼い方は私が調べるので】
「よし涼太、アンタが世話しな」
「これにて決定! フーーーッ!」
440.
「どうしてこうなった・・・」
「巡り合わせさ。まず名前を考えないとな。いっそ“みずき”にするか」
「いや知り合いと同じ名前は面倒だろ」
【そうよ美々香、同じ名前だと後々面倒でしょう】
441.
「・・・とにかく名前だな。う~ん、じゃあ“クレセント”にしよう」
「中々いい響きじゃないか。由来は何なんだ?」
「そんなものはない。響きだけで付けた」
「でもなんか意味あるかもじゃーん。えぇーっと・・・“三日月”だって」