2020/07/04
415.
「ゼェ、ハァ・・・酷い目に遭ったぜ」
「全く。何が“激流の川も何のその”なのよ」
「あれはただの歌だ。その通りになるとは限らない」
「ただでさえワケのわからないことばかり言ってるんだからせめて言ったとおりに動いてくれる?」
416.
「第一さっきの思い付きで歌ってたでしょ。“なんのその”って思ってたんじゃないの?」
「流されても“なんのその”って意味さ」
「“ヘルプミ~!”とか叫んどいて何言ってんのよ」
「親友が助けてくれるから“なんのその”なのさ」
417.
「次、助けないわよ」
「それでも親友か! 落とすぞ!」
「あんたこそそれでも“親友”のつもりなの?」
「Of course」
418.
「とにかく行くぞ。横に逸れちまったから戻らんとだな」
「いやまだ服乾いてないんだけど」
「歩きながら乾かせ。待つつもりなんてないぞ」
「そうだ! みんなで濡れれば全員ここで止まって乾かすことができる!」
419.
「まずはみずき、貴様だ!」
ズルッ。
「「「「あ」」」」
「ヘルプミ~~!!」
420.
「ゼェ、ハァ・・・。くっそが・・・」
「自業自得でしょ。人を落とそうなんてするからよ」
「てか何でマジで助けないんだよみずき!」
「男手が2人いるから十分でしょ」
421.
「美々香のことだから死にはしないんだろうが何かあったらピクニック禁止とか言われ兼ねん世の中だからな」
「私的には既に“何かあった”んだが?」
「お前の身などどうでもいい。大事なのは事故が起こらないこと自体だ」
「おい! それでも私の兄か!」
422.
「いや人を落とそうとしといて何言ってんだよ」
「旅は道連れって言うじゃないか!」
「そこまで道連れにせんでいい」
「じゃあどこまで道連れにすればいいんだ!」
423.
「普通に目的地に行くまででいいだろ」
「ていうか何で道連れにする前提なのよ」
「もう目的地ここでよくない?」
「話を聞いて?」
424.
「まぁぶっちゃけ元のルートに戻るの面倒だしいいけどな」
「兄さん、変に美々香の肩を持たないで」
「よく言ったみずき兄よ。どうせ上まで行ったって緑の芝生しかないんだ。弁当食うだけならどこでも一緒だろ」
「頂上まで行く達成感、を美々香に求めるのはバカの所業ね」
425.
「というワケでここに決定~! 水辺で食う弁当もまた一興よ」
「美々香にお弁当を持たせてなくて本当に良かったわ」
「なにをう! こっちはスマホがバグったんだぞ!」
「お弁当の方が大事よ」
426.
「ではその“大事なお弁当”とやらを見せてもらおう!」
「やれやれ、結局目的地変更か。ま、美々香だしな」
「別にいんじゃね? ルートからめっちゃ外れたから貸切状態だし」
「それがまた美々香を厄介な方向に動かすのよ」
427.
「二度も川に落ちたんだ。さすがにちょっとは自重するだろ」
「そうだ! 私は同じミスを三度もしない!」
「次回、“美々香、また川に落ち…」
「次回予告の呪いはやめろぉ!!」
428.
「落ちねぇぞぉ、絶対落ちねぇぞぉぉ~っ?」
「それ、フラグだからな」
「自分が落ちないことばかりに気を取られてたらサンドウィッチを落としちゃうわよ」
「落とさねぇ。落とすワケが、ねぇ・・・」
429.
バサッ!
「え?」
「え・・・なに、今の」
「・・・トンビだな。凄い勢いだったな」
430.
「って、私のサンドウィッチ! どこだ! まさか今の衝撃で川に!?」
「いや違うぞ美々香ちゃん、トンビに取られてる。足でなんか持ってるぞ」
「マジか! 私のサンドウィッチ!」
「一瞬のできごとだったわね・・・」
431.
「クソ待ちやがれこのトリ野郎! サンドウィッチ返しやが…どえぇっ!?」
「「「あ」」」
バッシャーーン!
「予定調和、お疲れさま」