2020/05/31
336.
「友よ!」
「何?」
「星を見るぞ!」
「はぁ?」
337.
「で、夜、みずきんちの屋根で星を見ることになりましたとさ」
「なんでウチなのよ。美々香んとこでも良かったでしょ」
「兄同士のじゃんけんの結果だ。ウチの兄が負けやがったのさ」
「星を見るとか言っておいて移動するのは面倒なのね」
338.
「美々香がどうかは知らんが、俺はどうせ星見るなら自分ちじゃないほうがいいけどな」
「なんだよ涼太、意外と雰囲気とか気にするのか?」
「いや、自分ちで星見たってつまんなくね?」
「それは分かるが、お前がそれを気にするとは思ってなかったんだよ」
339.
「何言ってるの兄さん、雰囲気は大事に決まってるでしょう。だからちょっと席外してくれる? ついでに美々香も」
「そしたら俺と美々香ちゃんが2人っきりになるけどいいのか?」
「やっぱりやめて。美々香の義妹になるなんて無理」
「ま、俺も涼太の義弟になるなんて無理だけどな」
340.
「だよなー。俺もお前の義弟どころか親族になるのが無理だわ」
「そんな、お兄さん・・・」
「友がフラれる現場を見るのは楽しいな。でも何でお前らそんなにそこ気にするんだ! 家族ぐるみの付き合いを超えて家族になれるんだぞ!」
「「「その中で友達の下に位置するのが無理」」」
341.
「ったく、そんなのどうだっていいじゃないか! 私だってコイツの妹だがこうだぞ、こう!」
「いてっ、いてっ。叩くんじゃねえよ」
「じゃあ美々香、もし実の妹か弟がいたら?」
「そりゃもう私専属の小間使いにするに決まってんでしょうよ」
342.
「よく堂々とそんなことが言えるわね」
「自分が得するなら気にならないに決まってるだろ? そんなことより歌うぞ。手伝え、兄よ」
「は? 何だよいきなり。てか今お前サラッと何て言った?」
「美々香ちゃんってたまにしか会わないけどやっぱ凄いよな」
343.
「美々香の言動をいちいち気にしても疲れるだけよ、兄さん」
「何だよみずき、星を見てたらさ、ほら、歌いたくなることもあるだろう?」
「ごめん、わからない。星なんだから黙って見上げてればいいじゃない。静かに」
「それは無理な相談だ。インスピレーションが、私を動かすから」
344.
「なに芸術家気取ってるのよ。歌手でもないクセに何で歌うワケ?」
「そこに歌があるからさ」
「“そこ”ってどこよ」
「My heart」