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2023/12/30

4893.


「よぅ崇、お前はどうだった? ちなみに俺は2回だ」


「フッ甘いな涼太。俺は3回だ」


「なん、だと・・・ッ!」


「フッ」



4894.


「よぅ兄ども」


「1年連中じゃないか。来たのか」


「冬休みって案外ヒマだしな。部室でたむろするに限るぜ。お茶も菓子もあるし、何より暖房がある」


「それな。我が家のボロアパートとは効きが雲泥の差だ」



4895.


「それで、何を数えてたんだ? 兄が2回でみずき兄が3回って話だが」


「聞いて驚くな。今年俺らが間違えて女子トイレに入った回数だ」


「お前らマジ死ね?」


「ゼロじゃないことが本当に驚きなんだけど・・・」



4896.


「というか、3回の崇さんが2回の涼太さんに“甘い”と言っていたのですけれど、なぜ数が多い方がいいと言うことになっているのですか?」


「愚問だな。男子禁制の女子トイレだぞ? 間違えたという大義名分がなければ入れない。それを崇の奴は、俺の1.5倍も成し遂げたんだぞ?」


「“やらかした”の間違いだろどう考えても」


「恥ずかしくないのかしらこの人たちは・・・」



4897.


「そういう美々香ちゃんたちだって、間違えて男子トイレに突入したことぐらいあるだろ?」


「ねーよ」


「兄さんと一緒にしないで?」


「人を何だと思っているのですか」



4898.


「そん、な・・・っ。お前ら、それでいいのか?」


「いいに決まってるだろうが」

「いいに決まってるでしょうが」

「いいに決まっているでしょう?」


「ハモんなよ気持ち悪い」


「年に何度も女子トイレに突っ込む奴に言われたかねーよ」



4899.


「いやマジで、人生で数回ならまだしも、年に数回ってどうなってんだよお前ら」


「いや普通に、ボーっとしてたり考え事してたりしたら、気付けば女子トイレに入ってることあるだろ?」


「ないから言ってんだよ」


「何をどうすれば間違えるのよ・・・」



4900.


「安心しろよ。個室まで入ったことはねーから」


「そこまであったら大問題ですわよ」


「女子トイレの壁の色がピンクなのって、ちゃんと意味があったんだな。あのお陰で違和感感じてすぐに気付けるんだよ」


「お前らのようなボケのために色分けしてるんじゃないと信じたいぜ・・・」



4901.


「服部君も言ってやってちょうだい。先輩たちはおかしいって」


「ちなみに僕も今年2回でした」


「サバ令嬢さん、これは非常にまずいんじゃないの?」


「由々しき事態ですわね・・・男子部員全員が年に一度は間違えて女子トイレに入ってしまうなんて」



4902.


「これ統計取ったら面白そうじゃね? 間違えて異性のトイレに入ってしまった回数の年平均、この感じだと男の方が圧倒的に多いぞ」


「そんなくだらない統計を取るメディアがいるとも思えませんけれどね」


「でも本当に間違える男の人が結構いるってなると、対策も考えた方がいいんじゃないかしら」


「いやここは敢えて、壁の色を男女とも白で統一することにより気付くのを遅れさせ、通報して捕まえるというのはどうだろう」



4903.


「やめろ美々香お前なんて恐ろしいことを考えるんだ。俺たちを刑務所に送るつもりか?」


「本当に一旦インド洋でサバ漁をして頂くのがよいのかも知れないと思い始めてきましたわ」


「なっ部長も何てことを言うんだ! 来年は1回に抑えるからそれだけは勘弁してくれ!」


「年に一度も入るなという話なのですけれど?」



4904.


「とりえず、男の方が間違える率が高いとして、なんでそうなっているかを考えてみよう。まずは兄、言い訳はあるか?」


「そんなもの、入ってしまうまで分からないの一言で済ませられるだろう?」


「ふざけるな。次、みずき兄」


「ならこれはどうだ? 女子トイレは、間違えて入ってしまっても全部個室だ。一方の男子トイレは、入っただけで見えてしまう可能性がある。そのせいで女は防衛本能が強く働いて“絶対に間違えない”を強く意識するのかも知れん」



4905.


「なるほど。ですがその理屈で言えば、殿方の方が、いくら女子トイレは全て個室とは言え、間違えて入ると最悪は警察沙汰になるのですが、その点の防衛本能は働かないのですか?」


「それに関してだが、男には潜在的に“秘密の花園に入ってみたい”という本能がある。そして“うっかり間違えた”の言い訳が成立するように“本当に気付かない”という予防線を張っているのかも知れん」


「本当に言い訳が苦しいですわね」


「もうこれは“うっかり間違えた”も厳しく取り締まるしかないんじゃないかしら」



4906.


「まぁ兄たちの言う通り、トイレだし別にって気もしなくもないが」


「そもそも、お風呂ならともかくトイレなんて、個室の中まで覗けたとして嬉しい人がいるのでしょうか」


「甘いぞサバ令嬢。男には特殊な変態だっているんだ。俺が言うんだから間違いない」


「お兄さん、そうやって私に嫌われようとしたってそうはいきませんからね」



4907.


「みずきは黙れ。だが兄の言う通り、世の中とんでもない変態もいるんだ。あらゆる事態を想定して対策をすべきだとは思う。なんだかんだ覗かれるならトイレより風呂の方がマシな気もするからな」


「こっちだってごく一部の変態を除けば、トイレよりは風呂の方がいいに決まってるんだが、どうあっても女湯には“うっかり間違えた”で入れないからな」


「なお、女装して堂々と突入する変態は存在する模様」


「本当にどうなってるんですのよ・・・」



4908.


「結論! とにかく、男どもはこれ以上、間違っても女子トイレに入ったりしないように」


「間違えてしか入らないから安心しろ」


「“間違えても入るな”っつっただろうがバカ」


「そうは言われても脳が勝手に意識を疎かにして間違えてしまうのだが?」



4909.


「それもまた、男としての本能ということなら、それを超える防衛本能を植え付けるだけね。サバ令嬢さん」


「そうですわね。ではこのサバ部の会則として、間違えて異性の化粧室に入ってしまった場合、その回数かける1週間の間インド洋に行って頂くことにしましょう。来年から適用です」


「ふっ、ふざけるな! 部長だからといって勝手にそんなことを・・・!」


「ちょうど、この場に部員全員が揃っております。総会での結論ということに致しましょう」



4910.


「待ってくれ部長。それじゃあ筋が通らないぞ? 確かに全員揃ってるが男3人に女3人だから、過半数にはならない」


「ジョンとベンジャミンをお忘れではなくて?」


「なっ、しまっ・・・!」


「当然2人は賛成票を入れますから、過半数になりますわ」



4911.


「それ以前に、僕もお嬢様に合わせるので否決票は先輩たちの2票だけですよ」


「服部てめぇ! 裏切るのか!」


「裏切るも何も、女子トイレに入らなければいいだけではありませんか。僕も気を付けますので」


「決まりだな。お前ら全員、命がけで女子トイレを回避するように」



4912.


「よし、新ルールもできたし、こんなところでいいだろう。1年の終わりとしては上々だ」


「そうね。臨時とはいえ総会もやったし、十分に締まる形になったんじゃないかしら」


「1年の終わりがお手洗いの話で本当に良かったんですの?」


「それを言うなサバ令嬢・・・」

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