2023/11/26
4861.
ガラララッ。
「はい、いらっしゃいま・・・って、え・・・!?」
「なんだ有働、手を止めるな。・・・って、毛利!?」
「こんにちは」
4862.
「もっ、毛利っ、お前っ、なっ、何をしにっ・・・まさか道場破りかっ!?」
「なんでそうなるんですか。普通にサバカレーうどんを食べに来ただけです。本当にここでアルバイトしてたんですね、満月さんのお兄さん」
「サバカレーうどんを食べに来ただけ、だと・・・? だっ、誰の差し金で来た! ここが世界サバ・フィル・ハーモニーの系列店だと分かってのことかっ!? ここを物理的に潰すことはできてもその後の身の安全の保障は・・・! いや毛利相手じゃ無理・・・かっ、家族の身の安全の保障は・・・!!」
「物理的にも社会的にも潰したりなんかしませんよ」
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「え、じゃあマジで何をしに来たんだ?」
「だから食事ですって。世界サバ・フィル・ハーモニーの系列店はアスリートにも問題ないお店なんですよ。お願いですから、普通に1人の客として対応してくれませんか?」
「毛利が、カレーうどんを食べに来ただけの、客・・・? すまない、俺の中でそれらの言葉が上手く繋がらないんだ・・・!」
「普通の日本語なんですけど?」
4864.
「だってお前が誰かの差し金で行動する時って、基本的に組織を潰すとかの依頼が入ったイメージしか湧かないんだよ」
「そもそも誰かの差し金で来たんじゃないんですけど。というかそんな依頼なんて来たことないですからね?」
「そうか、組織潰しはナシか・・・すると誰が狙いだ! 有働か? 店長か!?」
「なんで裏がある前提でしか人の話を聞かないんですか?」
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「はぁ、もういいです。他の店員さんに頼みます。あの、注文いいですか? 席はここにしますね」
「あっ、ひゃっ・・・ひゃい!」
「“ひゃい”・・・? どうした、有働。まさかっ、手も触れずに何かされたのかっ! やはり闘気で・・・!?」
「・・・いい加減にしてくださいます?」
4866.
「ま、待て! 待ってくれ! 頼むから単にサバカレーうどんを食うだけで帰ってくれ!」
「最初からそのつもりで来たんですっ」
「よし有働、後は頼んだ。俺は厨房作業に専念するぜ」
「えっ、私っ、えっ、ちょっ、ちょっと待って!?」
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「なんだ有働。ビビるのは分かるが俺らを始末しに来たんじゃないって本人も言ってるだろ?」
「あの・・・もしかして本当はそういう展開を望んでます?」
「望んでない望んでない! 我々の使命はサバの素晴らしさをより多くの人に届けること! もちろん、あなた様も例外ではありません! こちらの有働が対応いたします!」
「絶対逃げてるでしょこの人・・・」
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「というわけで有働、あとは頼んだぞ」
「待って待って待って無理無理無理!! お願いだから私を1人にしないで!」
「はぁ? 今更そんな可愛い子ぶられても困るんだが」
「他の人にまでこんな怖がられると地味にショックなんだけど・・・もしかして私ほとんどの人にこう思われてる・・・? いやいや、満月さんのいる牛丼屋さんではこんなことなかったし・・・」
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「とっとにかく私は無理だから満月君がこっちね!」
「いやマジでそんなビビる必要ねぇって。毛利の方も知り合いが店員なんて嫌だろうし」
「どっちでもいいんですけど早くしてくれませんか・・・?」
「おい有働! 早くするんだ! 頭をプッツンさせて恐怖心に打ち勝つんだ!! 俺にはそれができないんだ!!!」
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「む、むりだよぉ・・・だって、あの毛利さんだよ? 市民大会も見た・・・去年の都大会も見た・・・私・・・大ファンなんだもん!!」
「「・・・・・・は?」」
「だってあの毛利さんだよ!? 大人の男性も次々となぎ倒して、強敵との戦いもマジ凄まじくて、ネコちゃんのビーム投げ返して・・・そんな人がこんなサバカレーうどんなんてワケわかんない店に来てくれたんだよ!!? 感動してまともに手が動かないに決まってるじゃん!!」
「そ、そうか・・・ただ言えることは、“ワケわかんない店”なんて本音をさらけ出すのはやめような」
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「と、とにかく私は舞い上がっちゃって無理だから満月君お願い!」
「違うぞ有働! 舞い上がってしまうからこそ行かなければならないんだ! 感情が恐怖じゃなかっただけであり、お前がそれに打ち勝たなければならない事実は変わらないんだ!!」
「あの・・・ホントにどっちでもいいので注文を・・・」
「ほら! 客が待ってるぞ!! 今こそ有働! 眠れる力を呼び覚ませ!!!」
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「毛利とてただの女子高生! 舞い上がる必要などどこにある!」
「“ただの女子高生”じゃないよ! みんなの憧れの的だよ!」
「おい! そこは“最強の女子高生だよ!”って言うところだろ!?」
「そんなのに付き合う心の余裕なんてないよ!」
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「そもそもなんで満月君はそんなまともに毛利さんと話せるの!?」
「別に言うほどのファンではないからな。学校も同じだし」
「同じ学校だったら死んじゃうよ! 全女子が!!」
「安心しろ。ウチの学校の女子は誰1人として死んじゃいない」
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「嘘・・・満月君の学校の女子、メンタル強すぎない・・・?」
「お前は毛利を何だと思ってるんだ」
「私は数分前のあなたに同じことを言いたいですけどね・・・」
「すまない。有働を見てたらなんか冷静になった」
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「しょうがない。毛利からの注文は俺が取ることにしよう。だがそうなると、毛利のためのカレーうどんは有働が準備しなければならないが大丈夫か?」
「大丈夫じゃないよぉぉぉぉ!! 毛利さんのためのサバを切るなんてやったら手元が狂って大惨事だよ!!」
「だそうだ。毛利、お前って間接的にも人を流血させることができたんだな」
「変な噂を広めたら許しませんからね?」
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「しかし、有働がこの有り様だと店が回らんな・・・俺はこいつの半分ぐらいの戦力でしかないし・・・」
「もうちょっとプライドを持ったらどうなんですか・・・」
「しょうがない。緊急事態だからサバ令嬢に来てもらおう」
「アルバイトの穴埋めに幹部を呼ぶなんて始めた見た・・・」
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「くっ! サバ令嬢に用事があって断られた! こうなったら、休憩中の小暮さんを呼んで来るしかない!」
「普通そっちを先にやりますからね? とにかく注文言いますね。サバカレーうどんを並みで」
「え゛、大盛とか特盛じゃなくていいのか?」
「本当に私を何だと思ってるんですか?」
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「ふぅ、ごちそうさま。美味しかったと、有働さんに伝えておいて」
「ああ。結局休憩室で寝込んでしまったからな。“憧れの人は、遠くから見てるだけが一番”だとよ。有名人も大変だな」
「ここまで思い知ったのは今日は初めてですけどね・・・」
「という訳で頼むからどうか、今後は他の店舗に行くようにしてくれ。めでたく出禁だ。ブラックリストに載るのも初めてだろう?」




