2020/05/23
296.
「友よ!」
「何?」
「カラーボックス買うならさ、何色がいい?」
「はあ? 何よいきなり? う~~ん、あえて買うなら、黄緑かなあ」
297.
「チッ、チッ、チッ。甘いな。所詮みずきはみずきだったか。まあしょうがないさ、あの境地には簡単には到達できないからな」
「え、何? 何でカラーボックスの話でこんなに言われるの?」
「イメージだよ。イメージ」
「だから何が?」
298.
「わからないのか! 母だぞ! 母!」
「何が母なのよ? カラーボックスが?」
「そうさ。友よ、お前は、黄緑のカラーボックスから何を感じる」
「いや、何って、カラーボックスから感じるほどのものなんてないでしょ」
299.
「はぁ~。やれやれだぜ」
「さっきから何なの?」
「イメージしろ。黄緑のカラーボックスを、自分の部屋の中の、最高の場所に置いた時のことを」
「はぁ?」
300.
「感じるだろう?」
「ごめんわからない。何が?」
「300話だぞ」
「急に話変えないで? ただでさえ意味不明なんだから」
301.
「黄緑は、そうさな・・・草原だ。そのカラーボックスを中心に、草原が広がるんだ」
「そんなイメージ無理でしょ。何で草原のド真ん中にカラーボックスなのよ」
「それを無理矢理イメージするのが、イメージさ」
「自分で“無理矢理”とか言ってんじゃないわよ」
302.
「おいおい、そんなことを言っていいのか? 私の兄の教えだぞ?」
「え・・・そうなの?」
「そうさ。私の兄は、全てのものをイメージできる感受性の持ち主がいいらしい」
「待って、イメージね。わかったわ」
303.
「見えたわ。草原よ。私には、黄緑のカラーボックスが、私の全てを受け止めてくれる温かな草原のように感じるわ」
「フフフフ・・・それでいい。いいぞ・・・いいイメージだ!」
「これで私も、ちょっとは認めてもらえるかしら」
「無論だ! イメージは私たちを裏切らない!」
304.
「ただいまー」
「おぉみずき、帰ったか」
「どうしたの? 今笑ってたでしょ」
「ああ、ちょっと学校でのこと思い出してな」
305.
「涼太の奴が美々香ちゃんにカラーボックスの話をしたらしくてな。世界の中心だとか母だとか適当に言ったら真に受けちゃったみたいで、そん時の美々香ちゃんのモノマネがめっちゃウケたんだよ」
「っ・・・!」
「ん? どうした?」
「美ぃ々香ぁぁぁぁぁ~~~~!!」