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2023/07/23

4678.


「それでは美々香さん、よろしくお願いしますわ」


「しょうがねぇなぁ・・・もうすぐホームルーム始まっちまうから手短にな」


「ええ」


「了解だ」



4679.


「コイントスの結果、サバ令嬢が先攻! 辻が後攻! 両者構え!」


「いきますわよ」


「こい」


「・・・ファイッ!!」



4680.


「わたくしのターン、ドロー。召喚、サバ太郎。更にフィールド魔法使用、大海原。その効果により、海洋カテゴリモンスターの攻防力300アップ。そしてトラップカードを1枚セット。ターンエンドですわ」


「俺のターンだな。ドロー。召喚、孤独な剣士。自陣モンスターが孤独な剣士のみなので、特殊効果により攻防力300アップ。更に魔法カード、総督の激励。ソルジャーカテゴリのモンスターの攻防力300アップ。トラップカードをセットして、孤独な剣士でサバ太郎に攻撃!」


「トラップカード発動ですわ。“主人公補正”。自陣モンスターが倒された時、そのモンスターは進化して復活。おいでなさい、“サバリーダー”!」


「えぇっ・・・!?」



4681.


「な、なんでそんな強いカードを・・・!」


「わたくしを誰だとお思いで? これくらい当然ですわよ」


「ちっ、くそっ! ターンエンド!」


「ふふん♪」



4682.


「なるほど・・・サバ令嬢さんが自身のダメージを500に抑えた上で進化モンスターありなんて、さすがね」


「おぅ来たかみずき。見ての通りだ」


「この調子でいきますわよ。わたくしのターン。ドロー! 召喚、見習い人魚。海洋カテゴリを持つため“大海原”のフィールド効果で攻防力300アップ。更に魔法カード使用、エボリューション!」


「どえぇぇっ!!?」



4683.


「もう1体も進化・・・! これでサバ令嬢さんは攻防力1500が2体よ!? 相手が可哀想ね」


「これで終わりだとお思いですか? 魔法カード使用、デスティニードロー! 山札の上から5枚を捨て、残りの山札から1枚、好きなものを選択。これにしますわ。”ネクスト・エボリューション“! サバリーダーを究極進化!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」


「おいおい・・・もう辻ってやつ無理だろこれ」



4684.


「召喚。空飛ぶ無敵艦隊、ザ・サバ・サウザンド・ストリーーーム!!」


「出たわね、サバ令嬢さんの切り札・・・! 2ターン目先攻でこれを出されて勝てた人は、私や美々香を含めてもいない・・・!」


「さぁ辻さん、覚悟はよろしくて?」


「くっ、くっ・・・!」



4685.


「ザ・サバ・サウザンド・ストリームの特殊効果発動、“千のサバの大航海”。海洋カテゴリのモンスターの攻防力1.2倍。更に、“大海原”のフィールド魔法効果中であれば、海洋カテゴリの自陣モンスターはこのターンで破壊されない」


「な゛、あ゛・・・!」


「涙のセイレーンも海洋カテゴリだから、“大海原”の300アップに加えて1.2倍で攻防力1800、ザ・サバ・サウザンド・ストリームに至っては驚異の3360!」


「それが最終値だと誰が言いましたか? 魔法カード使用、“ビーストモード”。動物カテゴリのモンスターは攻防力300アップ。“千のサバの大航海”の1.2倍は魔法カード効果にも乗るため360アップ」



4686.


「ちょっ、ちょちょちょっ、待って!」


「どうして待たなければならないのですか。これはデュエルですわよ?」


「セイレーンは動物カテゴリじゃないから1800のままだけど、ザ・サバ・サウザンド・ストリームは3720・・・ほぼ即死よ・・・?」


「まずは厄介そうなトラップカードを消化して頂きましょう。涙のセイレーンで孤独な剣士を攻撃」



4687.


「ぐは・・・っ!」


「ダメージは500。トラップカードを使う様子はない・・・?」


「当てが外れましたわね。ダイレクトアタックが条件でしょうか。ではお望み通り、ザ・サバ・サウザンド・ストリームで辻さんにダイレクトアタック!」


「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ・・・!!!」



4688.


「辻ーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「ごめんなさい西村君。ご学友を・・・ですが、これがデュエルですから」


「ついにトラップカードを使わなかったわね・・・何だったのかしら」


「さぁな・・・一応確認するか」



4689.


「こっ、これは・・・!」


「何だったの?」


「“勝利の予感”だ・・・! 致命傷のダメージを受けた場合にライフを1残して耐えるカード、つまり、辻の奴はまだ終わりじゃない!!」


「だけど、一気に3720のダメージを受けて立ち上がれるの・・・?」



4690.


「しょうがない。ルールに則って進めるか。相手がデュエル続行不可能な状態が5分以上続いた場合、ライフが残っていても敗北とする。5分待つしかないだろう。そんな早く起きるとは思えないが」


「その必要はありませんわよ」


「何だと?」


「召喚、高貴な使い魔。高貴な使い魔で辻さんにダイレクトアタック」



4691.


「がは・・・ぁ゛っ!!」


「なんて奴だ、大ダメージで気絶してる奴にトドメを刺すなんて」


「だけどこれで、5分待つまでもなく決着ね。3700超のダメージと同時にライフがゼロにならなかったのは救いかしら」


「いずれにせよ勝負あり! 勝者、サバ令嬢!!」



4692.


「ふぅ、当然の結果ですわね」


「お嬢様さん、どうして・・・」


「そうですね、不覚にも庶民に過ぎない西村君をかばってしまいました。ですがこれも、高貴な者の気まぐれということで受け取ってくださいませんか? 好きでやったことですから」


「え?」



4693.


「あぁっ、いえっ、好きと言ったのは“かばった”行動のことでして西村君のことがどうとかいう訳ではありませんからね!? 勘違いしてはいけませんわよ!!?」


「あ、あぁ良かった。ビックリしちゃったよ」


「お分かり頂けたのならよろしいのです」


(むぅ・・・ですが“良かった”って何ですの? まるでわたくしから好意があったら嫌みたいに・・・って別によいではないですかそれで! 庶民なんかに勘違いされてはいけませんからね! えぇ、全くもって!)



4694.


「で、辻の奴どうするよ?」


「どうするもこうするも、保健室に運ぶしかないでしょう。美々香さん、手伝ってくださいまし」


「なんで私が・・・ってこれも審判の務めか」


「そういうことですわ」



4695.


「あぁっ、またデュエルしたわねあなたたち!?」


「橋口・・・!」


「あら委員長さん、おはようございます」


「“あら委員長さん”、じゃないですよ。教室でデュエルしないでって言ってますよね? 動けなくなる人が出るんですから」



4696.


「それは後始末は大変ですけど、これも含めてデュエルですし」


「だからデュエルをやめてくださいって言ってるんです! しかも朝からなんて!」


「委員長さん。お言葉ですが、人は時として、どうしてもその場で決着を着けなけれならないこともあるのです。そのためには、デュエルするしかないのです」


「どうして!? もっと他にあるでしょう!? せめて決着を後回しにして!?」



4697.


「ですが、後回しにすると冷めてしまうこともありますし」


「後で冷める程度なら決着つけなくてもいいですよね!?」


「すみません、ちょっと仰ってる意味が分かりません」


「こっちも分からないんですけど!?」



4698.


「諦めろよ委員長。非デュエリストのお前には理解できないことなんだよ。そんなに私たちを咎めたきゃ、デュエルで勝ってからにしろよ」


「そのためにデュエルしたら意味ないでしょ!? “デュエルしないで”ってお願いなのに」


「じゃあ諦めろよ。それ以外に、私たちデュエリストを止める手立てはないぜ」


「ほんとに、なんで・・・」



4699.


「ふいぃ~~っ。今日は疲れたな~。あっという間に放課後になっちまったぜ」


「そうね。サバ部に入っていて良かったわ。家に帰らなくても学校に休憩所があるみたいで」


「・・・・・・ぽー・・・」


「サバ令嬢さんも、疲れ切ってるみたいね」



4700.


「しょうがないさ、朝イチからデュエルだったしな。それもかなり強いカード使ってたし」


「本当に珍しく、授業中もずっと上の空だったわよね」


「・・・・・・ぽー・・・」


「ま、こういう日もあるさ」



4701.


「・・・で、30分経ちましたと」


「こりゃ重症だな。まぁ今まで何時間もこの状態だったんだ。今更ちょっとの休憩で戻るワケないか」


「おーいサバ令嬢~~~」


ぺち、ぺち。



4702.


「あいたっ。あ、美々香さん。何ですの? いきなり人の頬を叩いたりして。庶民がわたくしの顔に触れるなんて重罪ですわよ?」


「あ、戻った」


「何の話ですの?」


「いやお前今日ずっと上の空だったじゃん」



4703.


「誰が上の空なものですか。決して西村君のことを考えていた訳ではありませんからね?」


「西村? あぁ、西岡のことそう呼んでんだっけか。てか珍しいな。男子と2人で登校だけじゃなくて、部活サボリをかばうとか」


「べっ、別に珍しくありませんわよ。たまたま登校中にぶつかって、それでせっかくなので同行頂いただけです」


「えぇ~~っ? ぶつかった相手と同行? お前がぁ? なんだ? よそ見でもしててケガでもさせたのか?」



4704.


「別にケガなんてさせてませんわよ」


「じゃあなんで一緒に来たんだよ。“庶民なんかと肩を並べて歩くなんて有り得ませんわ”って言いそうじゃんお前」


「わたくしだってそう思ってましたわよ。それなのに・・・」


「それなのに?」



4705.


「なっ、何でもありませんわよ! ささっ、部活にしますわよ」


「なぁんか怪しいなぁ。もしかしてあれか? ハンカチ拾ってもらったってのはマジで、あいつに惚れちまったとかか?」


「はぁぁぁぁぁぁぁ!? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!? 何を言ってますのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!? わっ、わたくしが庶民にそんなっ、ほっ、惚れっ、だなんて、天地が地天にひっくり返っても有り得ませんわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!??」


「え・・・・・・まじ?」



4706.


「なっ、まっ、マジなんかじゃありませんわよ!? なぁにを仰っているのですか、全く。あんな、品位の欠片もない、ズケズケと人を褒めてくるし、無邪気な笑顔を向けてきますし、そんなザ・庶民を地で行くようなお方になんて・・・!」


「なんでお前も褒めてんだよ」


「美々香・・・これ、マジみたいね・・・」


「まじか・・・」



4707.


「はっは~ん。ついにサバ令嬢にも春が来ちまったか。なんだ、お前、庶民が気安く顔に触れるなとか言いつつ、西岡に触られたら嬉しいんじゃないのか?」


「はぁぁぁぁ!? はぁぁぁぁぁぁぁっ!!? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!?? 何を言ってますのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!?? 西村君がっ、このわたくしの頬にっ、そんなことっ、有り得なっ、・・・はわーーーーーーーーーん!!!」


「おい・・・重症だぞこれ」


「とんでもないことになってしまったわね・・・」



4708.


「う、うぅぅぅぅ・・・まさかこのわたくしが庶民の殿方のことが頭から離れなくなった上に、よりにもよって美々香さんなんかに看破されてしまうなんて・・・」


「いやお前がそんな慌てたりしなけりゃ3秒で片付いた話だぞ? 私らだって“まさか”だと思ってるんだから」


「ど、どうしたらいいんですのわたくし・・・こんな気持ち初めてなんですけれど」


「知るかよ」



4709.


「ひ、ひどいですわ! 人がこんなに悩んでいるというのに!」


「いや私とみずきに大したアドバイスができると思うのか?」


「そ、それは、そうですけど・・・」


「即答でそう言われてしまうのもなんか複雑ね・・・」



4710.


「とりあえず放課後デートに誘うとこからだな。あいつ嘘つくの苦手そうだしサバ令嬢のこと可愛いと思ってるのはマジだろ。部活終わりに誘えば来てくれるって」


「なっななっ、何を言っておりますのぉ!? まっ、まだ心の準備が!」


「何の準備がいるんだよ。アイス買って公園のベンチで食うだけじゃねぇか」


「そそっ、そんなことできる訳ないじゃないですか!」



4711.


「こっ、このっ、このわたくしから庶民を誘うなんて、何を考えているのですか!」


「ンなこと言ってもなぁ、庶民の方から高貴な者を誘うなんてもっと無理だぜ? 少なくとも、西岡の方からお前をデートに誘うことはない。常に教室にいるジョンとベンジャミンの威圧感を考えてみろ?」


「む、むぅ・・・ではどうすれば西村君とお出掛けを・・・」


「だからお前が誘えっつってんだよ。心配すんなよ、あいつバカだからお前に好かれてるかもなんて考えねーよ。“いいとこのお嬢様とデートできてラッキー”ぐらいにしか思わねーって」



4712.


「そ、それも何だか複雑ですわね・・・」


「だから意識してもらえるようにアプローチを掛けるんだろ? 今日はアイス一緒に食うぐらいでいいが、そのうち水着の試着とか見せて悩殺しろよ」


「なっ、何を言ってるんですか! 庶民の、それも殿方に肌を晒すなんて!」


「なんだよ、西岡に見て欲しくないのか? 魅力ないやつって思われてもいいのか?」



4713.


「そ、それは、ちょっとぐらいは興味を持って、欲しい、ですわよ・・・」


「んじゃ決まりだな。もちろん試着だけじゃなくてプールか海にも行けよ? プライベートビーチぐらい持ってるだろ?」


「ふっ、2人っきりで過ごせというんですか! 心臓が止まってしまいわすわ!?」


「じゃあジョンかベンジャミン連れて行けよ。そしたら襲われることもないだろ」



4714.


「おっ、襲われっ、て何を考えているのですか!」


「でも恋愛の行き着く先ってそこだからなぁ。襲うのは論外にしても、いつかはそれを意識することになるんだ」


「そっ、それはそうかも知れないですけどっ、まだわたくしたちには早いですわよ・・・」


「まっ、今日のところはアイスでいいさ。まずはテニス部の様子を見に行くぞ。私たちの戦いはこれからだ!」



4715.


「・・・と、いう訳で以上だ。文句は受け付けないぞ?」


「いや、いい。中々に良かったぞ崇! あのサバ令嬢がここまで化けるとはな!」


「お、お嬢様、お嬢様・・・水着を着て、勇気を振り絞って・・・ぶフォォッ・・・!」


「服部には刺激が強すぎたようだな」



4716.


「何はともあれ、ボーイズトークの到達点としては十分すぎるだろう。暑いしアイスでも食って帰るか」


「今の流れで男だけでアイス食うなんて嫌なんだが? 冷やし中華にしようぜ。」


「確かにな。今日のお前は冴えてるじゃないか。 おい服部、起きろ」


「・・・随分と、盛り上がってるようですわね?」



4717.


「なっ、ぶっ、部長!」


「んっふふふ♪ 本当に、素敵なお話しでしたわよ?」


「そ、そうか。じゃあ・・・!」


「このうだるような暑い時期に朗報です。1日の半分を冷凍室で過ごす素敵なお仕事が、崇さんを待っていますわよ?」

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