2020/05/09
254.
「兄さん」
「どうした、みずき」
「料理が下手な女って、どう思う?」
「マジでどうしたいきなり」
255.
「いやさ、美々香が壊滅的で」
「あ、そうなんだ。意外でも何でもないけど」
「で、どうなの? 料理が下手なのって」
「このご時世にその質問に答えるのはなぁ・・・」
256.
「いいじゃない別に。何だかんだ言っても男の人の意見は気になるものよ」
「手近でサンプリングしようとするな」
「それに兄さんは美々香のお兄さんとも仲がいいし」
「だから手近な人間を利用するな」
257.
「まあ、できるに越したことはないよな。料理に限らず特技は多い方がいいだろ」
「やっぱりそうよね」
「でもあいつ嫁より家政婦が欲しいって言ってたぞ」
「え」
258.
「待って。それじゃ駄目なの」
「なんだよやっぱり嫁がいいのか? お前の兄に俺がいる限り無理だぞ。幸いにもあいつに嫁なんて無理だから家政婦で妥協したらどうだ。一緒に住めるぞ」
「それじゃ駄目なの。美々香の義姉にならなきゃ意味がないの」
「お前のその執着なんなの?」
259.
「第一あの家の家政婦になったら美々香にもこき使われるじゃない。破滅だわ」
「お前美々香ちゃんのこと何だと思ってんだよ」
「あ、そうだわ。美々香をうちの家政婦にすればいいのよ。兄さん、あいつも男に飢えてるから適当に籠絡して」
「お前実は美々香ちゃんのこと好きだろ?」
260.
「冗談は私の兄である悲しい現実だけにして」
「今のは結構傷ついたぞ?」
「まずはやっぱり、お金が必要よね。路頭に迷うであろう美々香を家政婦として拾うために」
「美々香ちゃん料理壊滅的なんじゃなかったのかよ」
261.
「この際そこはいいわ。掃除でも洗濯でも適当にさせれば」
「でも美々香ちゃんってドジ多そうだよな。大丈夫か?」
「そこよね・・・あのポンコツ。あ、むしろ家事でミスされた方がマウント取りやすいんじゃないかしら」
「お前の方が結婚できなさそうで心配になってきたぞ・・・」
262.
「でも気を付けろよ? ああいう子が意外とホイッと結婚したりすんだぞ?」
「えぇ? じゃあ兄さん的に美々香はアリな訳?」
「美々香ちゃんがどんなに料理上手くてもナイ。あいつの妹である限り」
「でしょ?」
263.
「だいたい、マウント取るだけなら料理上手いだけで行けるだろ」
「そんな小手先じゃ駄目よ。あいつ運動はできるけど鼻にかけたりしないし」
「だが料理できると結婚できやすくなるのは事実だ。女ってのはな、先に結婚するだけでマウント取れるんだよ」
「それもイイわね」
264.
「つまり、私がいち早く美々香のお兄さんと結婚して、」
「そこは変わんねぇのかよ」
「いつまでも家に居座る美々香を見下せばいいのね」
「お前美々香ちゃん絡むと時々おかしくなるよな?」
265.
「ありがとう、兄さん。参考になったわ」
「俺は不安が増えたけどな」
「料理は人並みにできるからいいとして、美々香のお兄さんがヒモ志望なのも考慮して、やっぱり収入のいいトコ狙うしかないわね」
「お前がたくましく生きて行けそうで安心したよ」
266.
「・・・何だよ美々香、気持ち悪く笑ったりして」
「クッククク・・・みずきの奴は今! 私の料理が壊滅的だと思い込んでいる!」
「お前ホントそういうの好きだよな」
「素晴らしいゴールデンウィークだった!!」