2022/12/31
4264.
「おや、遠藤先生ではないですか」
「あら谷崎先生、ごきげんよう。牛丼ですか?」
「ええ。陸に戻って来てからは初めてなので、久しぶりです。そういう遠藤先生は・・・ん・・・!? それはまさか・・・」
「サバ牛丼です」
4265.
「1年近くサバ漁船に乗っていてご存知なかったのですか? あの世界サバ・フィル・ハーモニーと牛野屋が提携したんですよ」
「漁船に乗っていたからこそ気付かなかったのですよ。まさか、そんなことになっていたなんて」
「ついでに言うと、この店舗であの満月さんがアルバイトをしています」
「なん、ですと・・・!」
4266.
「すまないそこの店員、今日は、満月というアルバイトは来ていないのか?」
「なに店員に話し掛けてるんですか谷崎先生」
「お客様、大変申し訳ありませんが出勤表は業務情報に該当するため開示することはできません」
「なん、だと・・・!」
4267.
「いや“なんだと”ではないでしょう谷崎先生。満月さんはあれでも女子高校生。中年男性が出勤情報を聞いたら怪しまれるのは当然です」
「それもそうですね。失礼しました。 店員さんも済まない。私はこういう者で、つまり、満月の通う学校で生活指導を担当しいる。満月の素行を確認させてもらってもいいか?」
「お客様、従業員の勤務態度も業務情報に該当します。また、社外での従業員の活動に干渉することもできませんので、申し訳ありませんが控えさせて頂きます」
「というかなに名刺なんて見せてるんですか谷崎先生?」
4268.
「それじゃあこうしよう。共通の知人を持つ者同士、個人的に話しがしたい。これでどうか?」
「いや谷崎先生それナンパですからね。どう見てもこの店員さん女子大学生じゃないですか」
「でもぶっちゃけあの子の話はしたいんで良いですよ。そっちの女の先生となら」
「あなたとは話が合いそうですね。という訳で谷崎先生はご帰宅ください」
4269.
「ちょっと待ってください遠藤先生。その話には生活指導の私も加わるべき・・・」
「ではないです。もうお店から追い出されても仕方ないことしてますからね谷崎先生」
「私が何をしたというんですか・・・!」
「女子高校生従業員の勤務情報を聞いたことで1回目、女子大学生従業員を個人的に誘ったことで2回目のイエローカードです。谷崎先生、退場!!」
4270.
「ようやく落ち着いて話ができますね。満月さんのクラスの担任をしている遠藤です。わざわざ呼び出してしまってすみません」
「いえいえ、こちらこそ。バイト終わりまで待ってもらってすみません。バイトリーダーの吉野です。よろしくお願いしゃっす♪」
「では早速本題ですが、満月さんはどうですか? 真面目に働いていますか?」
「それだけで学校での様子が丸わかりですね・・・でもバイト自体は最低限はやってますよ。お金が原動力みたいですけど」
4271.
「そうですか・・・意外ですね。あの満月さんが・・・お肉をつまみ食いしたりレジから小銭取り出したりしてませんか?」
「ホントに学校じゃどんなことしてるんですかあの子・・・」
「授業中の居眠りは当たり前。掃除中にキャッチボールを始めたり、借りたお金を返さず他の生徒とトラブルになることも多々あります」
「あーなんかそれはわかります」
4272.
「というかさっきの先生ホントに生活指導なんですか? というかそもそも先生なんですか?」
「残念ながら本当です。ただちょっと、1年前にあろうことか世界サバ・フィル・ハーモニーご令嬢のローアングルショットを狙ったがためにサバ漁船送りになったので少し常識からズレてしまったみたいで」
「ええー! そんなことやらかしたんですか!? よく生きて帰って来れましたね!?」
4273.
「本当に命知らずな人ですよ。ただでさえ、女子高校生のローアングルを狙うだけでもかなりのリスクだというのに」
「常識からズレてるのは元からだったみたいですね・・・」
「言われてみればそうですね。1年も漁船にいて改善されなかったことが残念です」
「人生の全てを悟ったような顔つきになってましたけどね」




