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2022/12/18

4229.


「作者、地域のクラシックコンサートに行くも途中休憩で帰ってしまう」


「マジかよ。ついにそこまで来たかー。無駄に律儀っていうのがあいつの最後の砦だったのに」


「砦って何だよ、取り柄の間違・・・いでもないか。いずれにせよヤツの取り柄はついに“働いてる”ってだけになった」


「マジでそれが最後の砦だな・・・」



4230.


「と、いうワケでヤツがコンサートの途中休憩で帰ったことについて説明しよう!」


「いや別に説明いらないだろ」


「説明する! ヤツが途中で帰った理由はただひとつ、思っていたほど楽しめなかった、というか普通にしんどかったからだ」


「マジでもうどうしようもない理由だったな」



4231.


「もはや何でコンサートなんか行ったんだって話なんだが」


「音楽でも聴いてリラックスしようと思ったんだろ。だがそこは、とてもリラックスできるような空間ではなかった。まず、身動きを取れないのがしんどい」


「まぁ映画とか舞台とは違って耳がメインのものだからな。ちょっとの物音でも目立ちそうだ」


「そう。マジで動けない。大して柔らかくもない椅子にじっと座って演奏に耳を傾け続けなければならないのだ」



4232.


「しかも作者のヤツは、首を回すと骨がポキポキ鳴ってしまう。クラシックの曲は長い。常に肩が凝ってる作者にとって、20分以上演奏が続く中で首を回せないというのは相当しんどかった」


「だから何でマジでコンサートなんか行ったんだよ」


「想像以上にしんどかった。それが全てだった」


「あまりにもクソすぎる・・・」



4233.


「なお曲のラインナップは、20分、35分、50分の3つだ。35分と50分のやつの間に休憩があって、作者はここで帰った。とてもではないが50分ぶっ続けには耐えられないと判断したからだ」


「確かに50分動けないのはしんどいかもな」


「席はそれなりに埋まっていて、左隣こそ空いていたが右・前・後ろは塞がっていた。後ろに他人がいるってのがキツいよな。席の間隔は映画館とどっこいだからマジで動けない。たまに楽章の移り変わりで拍手が起きた時がヤツにとってのオアシスだった」


「音楽止まった時が癒しって何しにコンサート行ったんだよ・・・」



4234.


「次にキツかったのが、マスクだ」


「あぁぁ~~・・・・・・」


「マジで酸欠なる。もうこれは修行か何かなんじゃないかと作者は思ったそうだ」


「コンサート恐るべし・・・」



4235.


「で、肝心の曲はどうだったんだよ」


「ぶっちゃけ知名度は低い。音楽ファンでもなければ知らないような曲しかなかった。曲目は事前に分かっていたが、まぁ聴きに行けばほどよく休憩できるだろうと思ったんだろ。ネタバレを嫌って一度も調べずに行ったら、案の定だった」


「知らない曲で、大してノることもできなかったと」


「ああ。1曲目の最初の数分で“あ、これやばい”って思ったそうだ」



4236.


「ともなると最終手段は寝ることなんだが、それもできなかった。何故なら、曲がやかましかったからだ」


「終わった・・・」


「静かな時は静かなんだが、演奏にメリハリを付けるグループなんだろう。強く弾くところはマジで強い。しかも結構な頻度で強いシーンと弱いシーンが切り替わるから眠るどころの騒ぎじゃなかった」


「コンサートの演奏を“騒ぎ”とか言っちまったよ・・・」



4237.


「開き直った作者は、音楽を聴くことに集中することにした」


「言っとくけどそれが本来の姿だからな・・・」


「だが、それもできなかった。1分に一度は誰かが咳払いするからだ」


「クッソ・・・ハハッ(笑)、マジウケる・・・!」



4238.


「まぁ何百人も集まればそういうことにもなるさ。作者が骨鳴らさずに耐えているところに、“ん゛ん゛っ゛”だからな。怒りさえ覚えたそうだ」


「もう“何をしに行ったんだ”という感想しか出ないんだが」


「本人でさえそう思ってるぞ。だからこそ帰ったんだ」


「だからって帰っていい理由にはならないけどな」



4239.


「一応フォローしとくと、帰ったのは作者だけじゃない。ざっと20人は居た。だからこそ便乗して帰ったんだけどな」


「クソすぎる。クソすぎて言葉も出ねえ」


「そうクソクソ言ってやんなよ。もし無理して最後の50分の曲まで残って、首ポキポキ鳴らしたりしたら迷惑だろう? そうならないようにするために帰ったんだよ」


「やっぱ“クソ”って感想しか出ねえよもう」



4240.


「というかあいつクラシックコンサート行くの初めてじゃないだろ? 何回か行ってるはずだぞ」


「ああ、そうだ。会社に派遣で来てた人が、大学サークルOB? か何かの定期演奏会に職場の人誘ってたから。当然、独り身の作者は行くしかなかった。

 でもこの頃はマスク不要。しかもホールが1000席はあってガラガラだったから首どころか肩も回せたから、楽だった。サークルメンバーの関係者しか客いないのに知らない曲ばっかだったのは腹立ったそうだがな」


「無駄に律儀な性格がそこでも災いしてたか・・・」


「まぁその派遣の人もいなくなったから晴れて自由の身だ。自分の意志で行ったコンサートでこの有り様だったがな。結局、知ってる曲のゆったりしたピアノとかオルゴールを自分の家で聴くのが一番だったってオチだな」



4241.


「とは言えど、途中休憩での帰宅はいただけない。そこで、作者には反省文を用意してもらった。読み上げるぞ」


「もうこれまでで散々言い訳が語られてきてるんだが・・・」


「“この度は、途中休憩の際に帰宅してしまい申し訳ありませんでした。理由としましては、終了時刻が想定より遅くなることが見込まれたためです。前半終了の段階で15分延びており、そこには予期せぬアンコールが含まれていました。後半の最後にもアンコールが入る可能性、その後のトーク等により終了が後ろ倒しになる可能性を考慮し、帰宅する判断と致しました。大変申し訳ございません。以後、このようなことがないように致します”」


「建前だけはしっかり並べやがって・・・」



4242.


「言うまでもなく、このあと特に用事もないのに文字通り“帰宅”した」


「もう“クソ”を言う気すら起きない。てかアンコールなんてあったんだな」


「ああ、あったぞ。2曲目が終わった後、やたら拍手が長く続いて作者も合わせてたんだが、どうやら“拍手を長く続ける”がアンコールのサインだったみたいで、“アンコールにお応えして”なんて口上ののちに5分ほどの演奏が入った。この5分の長さが、お前には分かるか?」


「知るかよ。音楽聴きに行っといてアンコールを嫌がるなよ」



4243.


「あいつは予定が狂うのを嫌うからな。それにクラシックの曲は、終わりそうな感じになってからも長い。ようやく終わったと思ったら休憩に入らずプラス1曲。5分とはいえ作者のストレスはマッハだった」


「そこで音速の言葉を使うのは何のジョークだ?」


「他意はない。まぁ、そんなこんなで作者は帰った。それこそマッハでな」


「他に帰ろうとしてる奴探しながらだからマッハじゃないだろ?」



4244.


「実際客層も大したことなかったけどな。咳払いがいたのもそうだが、35分の曲では終わるなり間髪入れずに“ブラボーー!”の声が飛んだ。作者的にはここに、ちょっとした“間”が欲しかった。これ、すごく大事」


「そんなの好みによるだろ」


「そうでもないさ。配られたパンフにも書いてある、“演奏後はひと呼吸おいてから拍手を。余韻も楽しみましょう”ってな」


「わざわざ書いてあるってのも萎えるけどな」



4245.


「実際すごいパフォーマンスを目の当たりにしたら、終わってから体が動くまでに自然とひと呼吸あくけどな。間髪入れずに“ブラボー!”なんて、狙ってなきゃできないぞ。

つまり、それが狙えるほど演奏に惹き込まれることは無かったってことだな。そいつは、奏者たちを讃えたつもりが却って“惹き込まれるほどの演奏じゃなかった”ってのを示してちまったんだ。皮肉な話だよな」


「でもパンフに書いてあることを無視したってことはサクラじゃないだろうから、それだけは救いだな」


「マスク必須と同じ理由で“歓声”が禁止だからダメなんだけどな」


「もう色々と終わってんだろそのコンサート。奏者の人たちが気の毒でしかない」



4246.


「無駄に律儀な作者。いつもは途中で帰るような連中を横目に見ていたが、今回はついに自分がそっち側になった」


「はっ。今さら罪悪感が出てきたとかか?」


「いや、せいせいしたそうだ。“そうか。これ、やってもいいんだ”って」


「最後の最後までクソのまま終わりやがって!」

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