2022/08/07
3434.
「さーて先月も稼いだなー。やっぱカネ入ると違うね。女子高生などというカネ払って勉強させられる職業なんてクソくらえだ」
「バカか美々香。そのクソみたいな生活が将来の収入に大きく影響するんだぞ」
「いやーでも直接カネにならないとモチベ上がんねー。仕事さえ真面目にすりゃイイっしょ。で、そっちはちゃんと働いてんだろうなぁ?」
「お前にだけは言われたくねーよ」
3435.
「そんな兄に朗報だ。なんとウチの職場には女子大生の先輩がいる」
「おいちょっと待てどういうことだ3秒以上かけて説明しろ」
「まず、その人は真面目に進路を考えて女子大に進んだ。そして、男に飢えた結果理由は分からないが“牛野屋”でバイトを始めた。以上だ」
「とりあえず美々香いますぐ俺と変われ」
3436.
「心配すんなよ。お前が中学生お姫様のゲームキャラに愛を叫んでいたことは伝えておいたから」
「おいフザけんな!!」
「これに懲りたらもうゲームキャラに惚れるなんてバカな真似はやめるんだな」
「くっ、くそっ・・・卑怯だぞ・・・!」
3437.
「卑怯も何も2次元オタクにまともな彼女ができると思うなよ。てかお前年上好きの割には年上から好かれる要素皆無だよな」
「ぐは・・・っ。だ、だが、この際恋愛対象として見られなくてもいい! 女子大生と一緒にバイトできるなら!」
「もうそういうレベルにまでなってたか・・・」
「さぁ妹よ! 俺とバイト先を変わるんだ!」
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「いやいやお前、変わったところで牛丼屋だぞ? ロマンスのカケラもねーよ?」
「お前は牛丼をバカにし過ぎだ! 牛丼屋でもロマンスは起こり得る! こっちなんてサバカレーうどん専門店だぞ!」
「そういやお前んトコのうどん屋サバハーモニーに乗っ取られてたな」
「毎日毎日何時間もサバと見つめ合ってみろ! 人間の目を見る気にすらならなくなるぞ!」
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「来る日も来る日もサバ・サバ・サバ! そしてひっきりなしに来る客! こんな状況でどうやって恋にうつつを抜かせと言うんだ!」
「繁盛してるなら良いじゃねーか」
「良くない! お前は何のためにバイトをしてるんだ!」
「生活費に決まってんだろ」
3440.
「じゃあ聞くが兄よ。お前は職場にどんなロマンスを求める? ちなみにこっちの先輩は、“残業で疲れてるところにコン、と缶コーヒーを置いてくれる”シチュだ」
「なん、だと・・・その人は本当に年下好きなのか!?」
「年下好きなんて言った覚えはねーよ」
「俺の理想は、そうだな・・・帰り際に“今日もお疲れっ。暇なら一緒にご飯でもどーぉ?”だな」
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「いやお前先輩の理想に合わせる努力はしろよ」
「だってそれ缶コーヒーこっちの奢りだろ? さすがに年上相手に奢るってのは気が引けるぜ」
「お前実は年上好きの一番の理由それなんじゃないのか?」
「そんなワケあるか。俺は年上のお姉さんからお誘いを受けたいだけだ」
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「あーでも先輩の理想のシチュに、“いつも頑張っているあの人・・・お茶を用意するとどんなに忙しくても笑顔でお礼を言ってくれて、帰りのエレベーターでバッタリ会ったところを食事に誘ってみたり・・・”なんてのもあったな」
「採用だ。さぁ早く俺とバイトを変わるんだ」
「いや“牛野屋”に帰りのエレベーターは無いだろ」
「ぬかったっ!」
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「いやまだだ! この際エレベーターは不要だ。帰りのタイミングさえ同じなら、例えば更衣室で雑談とかあるだろ?」
「お前女子大生と同じ更衣室使えると思ってるのか?」
「くそがっ・・・! しょうがない! ここは俺が“満月美々香”としてそのバイトに行こう! そうすれば女子更衣室にも入れる!」
「犯罪だかんなそれ?」
3444.
「何故だ・・・! 何故俺は男なんだ・・・! 女だったら、女子大生側も気軽にご飯に誘ってくれたりするのに・・・!」
「いやそれ自体が男ならではの願望だろ」
「ほう? じゃあ美々香。お前には女子大生の先輩にご飯連れてってもらいたいという願望はないのか?」
「何言ってんだよ。奢ってもらえるんならアリに決まってるだろ?」