2020/04/05
160.
「そういえばあんたさ、最近あれやってないよね。モンスター狩るやつ」
「ああ、あれか。最近スランプになってしまってな」
「なに玄人ぶってんのよ。どうせ自分に限界感じただけでしょ?」
「ああ、そうだな・・・。戦う理由が、なくなってしまったんだ・・・」
161.
「いやなに悟り開いてんのよ。単に飽きたんでしょソレ」
「お前には分からないのさ、戦う理由の大切さが」
「たかがゲームで1つの哲学おこさないでよ」
「“たかがゲーム”だと!? 甘く見るな! ここにはなぁ! 1つの“生きる意味”ってやつが詰まってんだよ!」
162.
「アクションゲームなんだから単純に戦うの楽しめばいいジャン。相手がモンスターってだけで格ゲーと同じっしょ」
「ひとくくりにするでない! 狩りをして素材を集めてはまた強い敵に挑む! ここにロマンがあるんだよ!」
「飽きたクセして何言ってんの?」
「お前もやってみろ!」
163.
「・・・え、“薬草取って来い”って何? モンスター狩らないの?」
「最初はそんなもんだ。でも薬草取りに行くとモンスター出るからそれで練習な」
「うわっ! ちょっ! コイツ何!? ウザッ! こっち来んな!」
「フッフッフ・・・その意気だ」
164.
「マジこいつウザい! ウザい!! 戦う理由なんてこれだけで十分でしょ! うりゃーー!」
「俺はお前が羨ましいよ」
「また出やがった! コイツら殺されるだけのクセしてウジャウジャと・・・薬草採取の邪魔すんな!」
「聞いてねぇし」
165.
「ドス・・・って何? あのウザい奴の進化版?」
「まあそうだな。ボス猿みたいなもんだ。今度はそいつぶっ殺すのがミッションだ」
「うっしゃあ! 覚悟しやがれウザい奴のボス!」
「お前・・・ほんと凄ぇよ・・・」
166.
「ああー! いってぇ! コイツ攻撃力つぇー!」
「ボス猿だからな」
「ちょっ、このザコ・・・邪魔すんな! 私はこのデカい奴と戦ってるんだ! 私たちの戦いを邪魔するな! ここは2人だけの世界なんだ!!」
「お前も哲学入っちゃってんじゃねぇか」
167.
「はぁ、はぁ。手こずらせやがって・・・」
「次はコイツだな。巨大な鳥みたいなもんだ。でもその前に装備強くしたらどうだ」
「そうだな。次はもっと強い奴が来るんだもんな・・・こっちも強くなっとくか。鉄鉱石とあのザコの皮増えて来たし」
(完全にハマっちゃったよ、こいつ)
168.
「そういや、奥にある小屋は何なんだ?」
「そっちにも基本はミッションがある。だがレベルが高くて、オンラインで4人まで同時プレイできるぞ」
「よし。じゃあ、みずきの出番だな」
「崇の妹がするとは思えんが」
169.
「みずきー! 遊びに来たぞー!」
「ちょっと何? そんな小学生みたいなノリで来ないでよ」
「一緒に狩り行くぞ!」
「・・・は?」
170.
「いや私そのゲーム持ってないけど」
「兄が持ってるだろう! 借りて来い!」
「だったら兄さんとすればい・・・それ、あなたのお兄さんも持ってるの?」
「当然だ! だから私を練習台にしてもいいぞ!」
171.
「いいわ。やってあげる。上達したらあなたのお兄さんと共同作業とかもできそうだし」
(兄の奴は戦う理由がなくなったとか言ってたから速攻で倦怠期突入だが、まあいいや)
「お待たせ」
「よし、狩るぞ!」
172.
「よし! 四の五の言わずに奥の小屋に来い!」
「そうなの? まあ、いいけど」
「じゃあまずはこの、ウザい奴のボス猿だ!」
「“ウザい奴”って何なのよ・・・」
173.
「あ、みずきの兄ちゃん。お邪魔してます!」
「こんにちは美々香ちゃん。にしても、みずきがゲームやるなんて珍しいな」
「これやれば美々香のお兄さんとも共通の趣味ができると思って」
「あいつそれ最近やってないぞ? 戦う理由がなくなったとかで」
174.
「美々香・・・!」
「ん? 何だい? ほら、狩りに行こ? モンスターだよ? 凶暴だよ? ウザいよ?」
「私も今、戦う理由がなくなったんだけど」
「私にはある! だから共に戦おう! ・・・ほら、友を救うために、ね?」