2021/11/27
2384.
「よぅ川田に弁財寺ぃ。無人島修行はどうだったか?」
「「・・・・・・」」
「無駄ですわよ美々香さん。彼らは身体を鍛え、精神を鍛え、余計なことには関わらないようになったのです」
「ほぅ。ちょっとはやるようになったじゃないかジョンにベンジャミン」
2385.
「でもどうすんだよ。教室入ったら普通の男子生徒として過ごすんだろ?」
「もちろんお友達が来れば様変わりしますわよ。こんな風に」
「おっす慈恩に亜民。ずっと休んでたみたいだけど治ったのか?」
「お陰さまで絶好調よぅ!」
2386.
「マジでガラリと変わったな・・・玄関入る前からご苦労なこった」
「これが彼らの役目ですから。一般人として過ごし、いざという時は美々香さんの魔の手からわたくしを守る」
「何で悪役が私前提なんだよ」
「胸に手を当てて考えてくださいまし」
2387.
「どれどれ、試してみるか。お前の胸に手を当ててな! サバ令嬢ちゃんだぁ~いすき~」
ザッ。ドゴッ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「学ばない人ですのね」
2388.
「く、お・・・おのれ、ジョン。目にも留まらぬ早業。喋ってる男子生徒はジョンが一瞬離れて私を殴ったことに気付いてさえいない」
「わかりましたでしょう? もう、以前の彼らとは違うのですわ」
「では、これならどうかな? おーい! 谷崎~! 私いま、そこの男子に殴られました~~!」
「それがどうした。どうせ自業自得だろう」
2389.
「おい! それでも生活指導教員か! 女子が男子に殴られたんたぞ!」
「無駄ですわよ美々香さん。わたくしの防衛を目的とした暴力行為は黙認されるよう統制が取れておりますから」
「何だと・・・!? くそっ、これだから公務員は!」
「私立学校に来てても同じことですわ」
2390.
「くそ・・・何がお金の力だ。何が、お金の・・・あぁ~~! カネが欲し~~~い!!」
「いきなり何ですのよ」
「お前にはわからないだろうさ。持たざる者の苦悩が」
「ええ、わかりませんわ。ですからこうして庶民の暮らしに下りて来ているのです」
2391.
「フッじゃあ見せてやるよ。お前らの言いなりになってるはずの庶民が裏でどんなことをやってるかをな! 答えは、谷崎の車の中にある!」
「!! おい満月! 何をしている! 人の車を覗くなどプライバシーの・・・!」
「ジョン。ベンジャミン」
「うわっ、お前らは・・・待て、満月を止めるんだ!」
2392.
「おっと凄い慌てようだな谷崎ぃ? サバ令嬢の防衛権を酷使して、車の中を調べさせてもらおう」
シュッ。チャッ。
「ナイスベンジャミン。こいつが鍵だな。いざ、オーープン!」
「待て! 返せ! 開ぁけるんじゃなぁぁぁい!!」
2393.
「あの教師の反応には不審な点が見られます。美々香さん、お調べなさい」
「アイアイサー!」
「待て! 俺の車はご令嬢の防衛と関係ないはずだ!」
「その令嬢が調べろと言ってるんだ。大人なら分かってるだろう? 権力者の意向に反しちゃいけないのさ。学生の本分は勉強。実地で学ばせてもらおうじゃないか」
2394.
「フッ。危機管理の甘い奴め。お前が車の中で気持ち悪いニヤけ方して何かを眺めている姿は何度も見ている。どうせ、この辺にフワァ~オな本でも入ってるんだろう!」
ガラッ!
「やぁめろぉぉぉぉぉ!!」
「いかがわしい本の1つや2つにしては、過剰な反応ですわね」
2395.
「フワァ~~~オ♡」
「何があったんですの?」
「見ろよ。見事なパンチラ・・・じゃないな、見えそうで見えない絶妙なアングルになってやがる。しかも女子高生ばっかり・・・制服的にウチだな。生足しかないのは趣味か?」
「庶民の趣味、大変よい勉強になりますことね」
2396.
「ち、違うんだ! それは生徒から没収したもので・・・!」
「一眼レフなんて持っといてよく言うぜ。男子生徒にはこういう“生活指導”もしてるのか? ぜひ私もご教授願いたいもんだね」
「こんなことに人生を棒に振るリスクを負ってまで情熱を捧げるなんて、奇特な方もいらっしゃいますのね」
「そりゃ谷崎を見くびり過ぎじゃないかサバ令嬢? きっとあいつは人生を懸けて、自分と同じ過ちをしちゃいけないと男子生徒に教えてるんだよ。“生活指導”なんだから」
2397.
「あ、あぁ。なんということだ・・・」
「ジョン、ベンジャミン。もう離しておやりなさい」
「そうも行かないみたいだぜサバ令嬢。この膝裏に2つホクロがあるやつ、お前だろ? 5枚に1枚はお前の足だぞ」
「・・・ジョン、ベンジャミン。連れて行きなさい」
2398.
「ふぁ~~あ。昨日は楽しかったぜ~。まさかあんな写真持ってたとはな~」
「えー、ホームルームを始めます。まず、連絡事項ですが、谷崎先生はしばらくお休みすることになり、1年生の生活指導担当は私に変わりました。よろしくお願いします」
「おいサバ令嬢、谷崎のやつどこに送ったんだよ」
「あの教師なら今頃インド洋でサバ漁をしていますわ」