2021/11/14
2340.
「と、いうワケで親父が母さんにしこたま怒られる姿を見ることに小遣い使っちまったから金貸してくれ」
「え、なんで? 有意義な使い道だったと自分では思ってるんでしょ?」
「確かにそうだ。だが、いま金欠なのは事実だ。そこに免じて貸してくれ」
「免じる余地なんてないわ」
2341.
「だいたい、美々香ってたまに親にケンカさせようとするけど何で?」
「“たまに”ってほどじゃないだろ。年に1回か2回だ」
「一生に一度でも十分多いと言えるパラメータであることは分かってる?」
「そうなのか、知らなかった」
2342.
「呆れた。それで家庭崩壊したらどうするつもりよ」
「その時はみずき兄に養ってもらう」
「そしたら私がその夫婦を崩壊させるわよ?」
「お前も自分の家族崩壊させるつもりじゃねぇかよ」
2343.
「美々香なんかが親族になったら、それこそうちの家系が崩壊しかねないわ」
「それお前が私の兄とくっついても一緒だからな?」
「その時は私が美々香の上に立てるから問題ないわ」
「義理の妹にイビるとかどんだけ暇人なんだよ・・・」
2344.
「いい? よく聞いて美々香。世の中にはね、愛よりも大切なものがあるの。プライドよ」
「それでお前と結婚させられるウチの兄が気の毒だな」
「美々香みたいな妹がいる方がよっぽど気の毒よ」
「お前みたいなのが妹でも一緒だろ?」
2345.
「言ってくれるじゃないの。この際だから、どっちが人の妹として優れているか決着を着けるわよ」
「いや妹としての良し悪しなんてどうやって決めるんだよ」
「お金を借りに来ない妹の方が優秀。はい私の勝ち」
「頼って来る妹の方が可愛い。はい私の勝ち」
2346.
「兄の友達にアタックする妹の方が可愛い。はい私の勝ち」
「友達を自分の兄とくっつけようとする妹の方が優秀。はい私の勝ち」
「当の本人が嫌がっているようで無意味。はい美々香の負け」
「嫌がってる理由が“兄の存在”である時点でみずきの負け。お前はな、妹であることを理由に敬遠されてるんだよ。これ以上“妹失格”な理由があるか?」
2347.
「やめて・・・それ以上言わないで・・・私も何度、兄さんさえいなければと思ったことか」
「ホント妹失格だなお前」
「でも、これだけは言える。美々香にいたのが弟ではなく兄で良かったと」
「やっぱ私の勝ちじゃねぇか。私が誰かの妹で良かったろ?」