2021/11/06
2289.
「にゃお~~ん」
「お、クレセントじゃないか。学校まで来るとはどうしたんだ」
「今日はこの子がわたくしのSPですのよ」
「何でだよ・・・」
2290.
「ジョンとベンジャミンは無人島で修行させております。あの程度の悪漢に捕まる体たらくを見せてくれましたから」
「島流しかよ可哀想に。あの男子2人今日休みだと思ったらそんなことになってたんだな」
「そういやあいつら美々香のクラスの男子生徒に紛れてたんだっけか。なんて名前だ?」
「川田慈恩と弁財寺亜民だ」
2291.
「こじつけ感すげぇ名前だな」
「戸籍を作るのもひと苦労でしたわよ」
「平然と“戸籍作る”とか言うなよ・・・」
「制服着てる時の変装っぷりも凄いぞ。まじ日本人にしか見えないから」
2292.
「それはそうですわよ。屈強な外国人が一般生徒になりすますために5年を掛けて訓練させたのですから」
「5年前からサバ令嬢の庶民学校編入計画が始まっていたのか・・・」
「変装の訓練しすぎて戦闘能力の方がイマイチになったんじゃないのか?」
「反省しているところですわ」
2293.
「ま、クレセントがいりゃ問題ないだろ」
「学校にネコ連れて来るのは問題ないのか?」
「お金で黙らせましたから問題ありませんわ」
「そっちの方が大問題だろ・・・」
2294.
「あ、クレセントちゃん! どうしたの? 私に会いたくなったの?」
「にゃおーーん!」
「違いますわ、と言っているようですわ」
「え、今のそんなネガティブな反応だったの・・・」
2295.
「いや違うだろ。サバ令嬢が適当に言っただけだろ」
「適当とは失礼しちゃいますわね。わたくしとクレセントちゃんは以心伝心、相思相愛、一子相伝、人畜無害ですわ」
「どの口が“無害”って言うんだよ」
「今のは絶対適当に四字熟語並べただけでしょ・・・」
2296.
「ったく、クレセントもこんな奴のどこがいいんだか」
「エサと牛乳でしょ」
「そりゃ勝てねぇ・・・」
「住環境も天と地ほどの差ですわよ。あんな空調機の壊れた所にいたら死んでしまいますわ」
2297.
「なんで私よりネコの方がイイ生活してんだよ・・・」
「金持ちに飼われるペットは大体そうでしょ」
「まあ、ネコにもその辺でゴミ漁りして生活してる奴もいるか」
「動物の格差も結構えげつないわね」
2298.
「あ~~私もネコになりて~~」
「裕福そうな人に色目を使って食べ物を恵んでもらう姿が容易に想像できますわね」
「そして、歳を取ると誰にも見向きすらされなくなり、人知れずのたれ死んでいく・・・」
「人として生きててもそうなりそうな気がしてきたぜ」