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2021/09/11

2022.


「ようサバ令嬢。元気してるか? 熱中症は治ったか?」


「熱中症になんてなってませんわよ。失礼ですわね」


「そっか、なる前に逃げ出したんだもんな。無理ですわーーーー」


「やめなさい! そのおめでたい頭をみりん干しにしますわよ!」



2023.


「いや普通に怖ぇこと言うなよ」


「ふん。当家にはそれをするだけの力があることをお忘れなきよう。ジョンとベンジャミンも黙ってませんことよ」


「あいつらセクハラでしか動かないんじゃないのか?」


「そんなことありませんわよ。第一、この学校にはそんな品のない真似をするのはあなたしかいないでしょう」



2024.


「おい人をセクハラ魔みたいに言うなよ。これでも実行したことは無いんだぞ」


「考えたことなら山ほどあるみたいな言い方ですわね」


「ンなもんあるに決まってんだろ」


「堂々と言わないでくださいまし!」



2025.


「でも安心ばっかしない方がいいぜ? この学校にはオネェバーに入り浸ってる女教師、女子を集めてアイドル部を作った男教師、夏祭りでパトロールしながらウワァオなシャッターチャンスを狙う生活指導教員がいるんだからな」


「なんで教師陣ばっかりなんですの・・・」


「思い当たったのを並べたら偶然そうなっただけだ。改めて考えてみると酷い惨状だな」


「不安になってきましたわね・・・」



2026.


「まあ心配するほどのことでもないさ。基本的には無害な連中が多いからな」


「一番に害のある人が言うと違いますわね」


「あ? ケンカ売ってんのか?」


「やると言うんですの? 世界のサバが相手ですわよ?」



2027.


「ま、ジョンとベンジャミンがいるなら多少のことは平気だな。とりあえずどっかの部のマネージャーになってみろよ」


「そうですわね。部活と言えば、庶民の暮らしの集大成ですものね」


「集大成・・・? まぁいいか」


「何をしていますの。早く行きますわよ」



2028.


「先に言っておくが、野球部とバレー部はやめておけ。そこがさっき言ったアイドルと夏祭りカメラ野郎が顧問だ」


「いきなりメジャーな競技が2つも潰されましたわね・・・」


「とりあえずサッカーにするか」


「いいですわね。行ってみましょう」



2029.


「よぅ。元気かサッカー部ぅ?」


「うおっ満月! と、サバの転校生! なんだ? 学校案内か?」


「ま、そんなところだ。ご令嬢ともなればサッカーのサの字も知らないから見せてやれよ」


「ちょっと待ってくださいまし。サバのサの字なら知ってますわよ?」



2030.


「えっと・・・と、とりあえず、ボール蹴ってあの網に入れればポイントが入る競技で、俺らでやるんで応援お願いします」


「まあ♪ いいですわね。ところで皆さんは、どこの企業がスポンサーに付いておりますの?」


「え、スポ・・・スポンサー?」


「マジかこのサバ令嬢・・・」



2031.


「おいおい、これだから箱入り娘は。赤チームは三十菱(みそびし)重工、青チームは大江戸ガスに決まってるだろ?」


「おい満月、何を勝手に…」


「まあ! そうでしたのね! 一流企業同士の意地と意地のぶつかり合い、とても楽しみですわ!」


「ちょっ、待っ・・・こ、こうなったら意地でやったらぁぁぁぁ!!」



2032.


「おぉぉらぁぁぁぁ!!」


「ハイヤーーーーーーー!!」


「す、凄いですわ! とても白熱しておりますわ!」


「なんだかんだであいつら、金髪美女転校生を前に張り切ってんな」



2033.


「みなさま、お疲れさまでした。とても見応えのあるものでしたわ! わたくし、ガラにもなく興奮してしまったんですの! それにしても、三十菱グループや大江戸ガスの方々もご学友にいらっしゃるなんて知りませんでしたわ。今後とも、世界サバ・フィル・ハーモニーをよろしくお願いいたししますわ」


「あ、あぁ・・・ども」


「プッ、クックククククク・・・」


「満月、てめぇ・・・」



2034.


「じゃあ次はバスケ部に行くぞ~」


「バスケットボール部の方々はどこの企業に所属しておりますの?」


「いやーそれが私もバスケには詳しくなくてな、よく分かんねーんだよ」


「どこの企業か分からない方々と共に勉学やスポーツに励むのも、それはそれで趣きがありますわね」



2035.


「よぅバスケ部。邪魔するぜ」


「え、ホントに邪魔なん・・・あれ? 転校生?」


「ああ。てなワケでちょっと見学させろや」


「構わないけど・・・なんでいつにも増してガラ悪いのよあんた」



2036.


「「「オー、ファイオー、ファイオー・・・!」」」


「みなさん活き活きしてて良いですわね。青春ですわね」


「ちなみに後ろで体操してるのがバレー部だ」


「何であんなギスギスしてますのあっちは・・・」



2037.


「転校生さんもバスケやってみる? 見てるだけじゃ退屈でしょう?」


「いいんですの?」


「もちろんよ。大して難しくもないから」


「分かりましたわ! せっかくですから、世界サバ・フィル・ハーモニーの力を見せて差し上げましょう!」



2038.


「行きますわよ。それーーー!」


「ちょっ、ストップストップ! 持ったまま動けるのは2歩までよ! ドリブルしなきゃドリブル!」


「ドリブル? あ、さっき見ましたわ! こうですわね!」


「違う違う! バスケじゃボールは蹴らないから!」



2039.


「ふぅ~~っ。スポーツってやっぱり難しいんですのね」


「それよりもご令嬢にスポーツ教える方が難しそうだな・・・バスケ部連中ヘバってんじゃん・・・」


「ではみなさま、わたくしはこれで失礼しますわね。それぞれの企業ブランドを懸けて頑張ってくださいまし」


「え、ブラン・・・あ、うん」



2040.


「今度は剣道だ。球技とはまた違ったフンイキだな」


「この残暑の中あの道着を着て・・・カッコいいですわね」


「お前はやめとけよ? 暑さに弱いんだから」


「なっ・・・も、もうあんな無様はさらさなくってよ!」



2041.


「ヤァ~~~~ッ・・・メーーーーーン!!」


パチーーーン!


「決まりましたわ! イッポンですわ!」


「これぞ、ザ・ジャパニーズ・イッポンってやつだな」



2042.


「やってみます? 素振りだけなら体操服のままでいいんで」


「良かったな。一般生徒に無様をさらさずに済んで」


「フン。何の話ですことやら」


「今さら強がんなよ・・・」



2043.


「にじゅはち・・・にじゅきゅ・・・さんじゅう! やりましたわ! わたくしは今、武道を極めましたわ! これであなたのような品の無い人には負けませんわ!」


「あ? 何だとコラ?」


「違いますよ、ご令嬢さん。武道を極めし者は、あのような輩とは関わらないんですよ」


「あ!? テメェも何だコラ!?」



2044.


「次は体操部だ」


「まぁ! 機材も揃ってますのね! それに、凄い跳躍と回転ですわ! ウチのサバたちにも引けを取りませんわ!」


「は? サバ?」


「ええ、そうですわよ? 我がハーモニーに所属するサバたちも、日々訓練に励んで、お客さまに最高のパフォーマンスを見せられるようにしておりますから」



2045.


「いや待てよ。サバがショーでもやんのかよ」


「当然ですわ。イルカやシャチもやるんですから負けてられませんわよ。サバのチアリーディングにサバのイリュージョン、ミュージカルに航空ショー、それから・・・」


「おいおいおいおい待て待て待て待て。色々とおかしい単語が聞こえたんだが?」


「どれもおかしい事なんてありませんわよ。サバの可能性は無限大。食べられるだけがサバにあらず。人にできることは、いえ、人にできないことさえもサバにはできましてよ?」



2046.


「うん、わりぃ。私、サバをナメてたわ」


「分かってくれればよろしいですわ。さあ、体操に挑戦しましょう?」


「じゃあよろしく頼むぜ? 体操部さんよぉ」


「はい。ではまず、床運動からやってみましょう」



2047.


ゴロン。


「あいたたた・・・普通のでんぐり返しもこんなに大変でしたのね・・・いつもはサバにさせてばっかりでしたから・・・」


「え・・・サバ?」


「おいちょっとサバの話はやめようか令嬢。混乱しか招かねえ」



2048.


「では鉄棒をやってみましょう。女子の種目ではないですけど」


「構いませんことよ? どのみち、高さの違う2本の棒の間を飛び移るなんてサバでもなければできないでしょうから」


「だから黙れ? あと一応それできる人間もいるからな?」


「えっと・・・と、とにかく始めます」



2049.


「わぁぁっ。やっぱり足が付かないんですのね」


「落ちて私の頭を足蹴にすんなよ?」


「ものすごく手を離したくなってきましたわね」


「満月さん、とにかくそこから離れてください」



2050.


「まあちょっと待てよ。ふむふむ・・・77、55、77か」


「訳の分からないことを言ってないで競技者から離れてください」


「訳の分からないとはなんだ。せっかく人が転校生のスリーサイズを測ってやったっていうのに」


「何を勝手に測ってますのよ!」



2051.


「と言うか、下から見ただけで何が分かるって言うんですのよ」


「ところがどっこい。私ぐらいにもなればわざわざ触らなくても分かるのさ。実際図星なんだろ?」


「ズッズッズズッズッズッズズッズッズッズッズズッズッ・・・ズン!!」


「図星だったみたいだな」



2052.


「うるさいですわね! 本当に手を離しますわよ!」


「へいへい。どけりゃ良いんだろ。ヘソも見させてもらって満足だわ」


「ジョン。ベンジャミン」


「いやぁマジ今の冗談ッスよ? だってすんでの所で見えなかったッスもん。お2人さんも試してみれば分か・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」



2053.


「凄い回転でしたわね。うちのサバでもあそこまで回るのは中々おりませんことよ」


「ジョンとベンジャミンに投げてもらえば誰だって回れるぞ・・・てかお前は回転どころか1回の懸垂もできずに終了かよ」


「くっ、痛いところを・・・わたくしだって、自分があんなに弱っちいなんて思ってませんでしたわよ。悔しいですわ」


「じゃあもう筋トレするしかねーな」



2054.


「今日は中々に有意義な1日でしたわ」


「気に入ったのがあれば実際に入部してもいいんだぜ?」


「わたくし、決めましたわ。・・・この学校に、サバ部を作りますわよ!」


「・・・は?」

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