2021/07/24
1767.
「作者、収入が8年前と変わってない」
「サクりんウケる! ドンマイ!」
「何を言ってるんだ美々香の友だちのお嬢さん。下がらなかっただけマシだと思うべきだろう」
「え・・・親父・・・マジ?」
1768.
ガラララッ。
「いや親父のやつ悲しい一言だけ残して去ってったんだが」
「さすがのアタシも反応に困るっぴ~」
「まぁいい、作者の話に戻ろう」
1769.
「まぁ確かに親父の言う通り、デフレまっしぐらのなか給料を維持できてるだけマシだと思おう」
「じゃあサクりんは8年ずっと横ばいってやつ?」
「いや2017年ぐらいをピークに放物線を描いてる」
「ここ数年で見たら減ってた!」
1770.
「今問われる、働くことへの意義」
「お金だけじゃないよ! きっと!」
「だが、金はモチべ。作者もクズとは言え人間。求められる仕事の質が上がるなか収入が減るという事態には何やってんだろ感を禁じ得ない」
「ほら、仕事の質が上がってるんだよ! やりがいだよ! ね!?」
1771.
「フッやりがいとはよく言ったもんだぜ。担当者を絞ることで替えが効かない状態にしてるだけだろ?」
「ああ! サクりんが黒くなってるがためにミミりんまで! ・・・ってミミりんも元々か」
「あ?」
「ん? どったのミミりん?」
1772.
「で、サクりんの給料ピークからどんだけ減ったの?」
「そうだな・・・月平均でざっと5万だ」
「わお!」
「そしてついに、8年前の水準まで戻った。本人が一番驚愕してるぞ」
1773.
「なんでそんな減っちゃったの!?」
「一番は残業が減ったことだ。規制、マジで激しくなったから」
「ああアレね! サビ残が増えただけっていうやつ! でも何年も前から言われてたことを何で今更?」
「知るか。どうせ今日のネタが思いつかなかったとかだろう」
1774.
「フッまぁ所詮は残業代に頼ってるクソザコ労働者だったってこったな」
「バイトの時給とかより高いんでしょ~? いいなぁ~~」
「ついにお上どもが余計な出費だと気付いて削りにかかったんだろう。法律が整備されれば企業としての対応を迫られる。自然な流れでコストカットだ!」
「残業できる時間が減っても仕事が減らないのは不自然だよ~~!」
1775.
「おいおい、不自然なことがあるかよ。1日に労働できる時間が2割減ったとしよう。だったら全身の細胞を漏れなく2割増しのスピードで動かせばいい。これはな、ダラダラせずに効率よく働けというメッセージなのさ」
「で、求人票での口説き文句は?」
「和気あいあいとした雰囲気! テレワークで快適! 自分のペースで働こう!」
「うん不自然だね!」
1776.
「しかし、作者のように意地でもサビ残をしない奴が現れ始めた」
ガラララッ。
「お、親父・・・!?」
「あいつもそこまで堕ちたか。この国で、社会の意向に背こうものなら人生が追い詰められていくだけだと言うのに」
1777.
ガラララッ。
「またどっか行っちゃったねミミりんパパ」
「あいつドアの向こうで私らの話聞いてたのかよ」
「で、何だっけ! サクりんサビ残やめたんだっけ!」
1778.
「奴は気付いた。サビ残してまで進めても、撤収時間を決めて打ち切っても、大して成果が変わらないことに」
「でもお客さんに出す資料とかどうすんの!?」
「あのコミュ障が客の前に出る訳がないだろう! 奴は身内への資料しか作らない! それもせいぜい部長止まり! ベストを尽くしてもやり直しは来る! だったら手抜きで出す! やり直し用の材料も残しておいてな! そして2回目は何だかんだでアッサリ通る! 以上!!」
「サクりん・・・てめぇ・・・!!」
1779.
「奴は開き直り、今の自分の状況に甘えることにした。危機感を持っていようとも捨てようとも、仕事がなくなる時はなくなる。会社が潰れない限り、仕事なんて部長が持って来る。与えられたことだけやってればいいじゃないか。それで定年までもつ可能性だってある」
「なんかアタシ、サクりんにはドン底に落ちて欲しくなっちゃったかも」
「ほんとナメてるぜ。私なんて単純作業オバチャンになるのが目に見えてんのに。あーもうオツボネになってピチピチの新人男子君を下僕にしたいなー!」
「雷太・・・職場選びはしっかりとね・・・」
1780.
ガラララッ。
「あっ親父。今度は何だよ」
「美々香・・・引っ越すぞ」
「あ?」
1781.
「そういやアパート壊れてからずっと社宅に居座ってたな。そろそろ出てけって言われたのか?」
「まあ、そんなところだ。俺たちはもう、ここには居られない・・・」
「何だよ社宅追い出される程度で大げさな」
「早期退職の勧告が出た。社宅だけじゃなくて、会社から追い出される」
1782.
「オイオイいくら私らがこんな話をしてたからってそんな・・・え・・・マジ・・・?」
「え・・・もしかしてアタシやばいの聞いちゃった?」
「気にすることはないよ。よくある話さ。せめて、君のお父さんがこうならないことを祈るよ・・・」
「パパりん・・・パパりーーーーん!!」
1783.
「でも安心して欲しい。次の仕事が見つかるまで給料は出る。次の仕事を見つけるのが、今の私の仕事さ・・・はは・・・・・・」
「切ねぇ・・・」
「見つかるよ・・・きっと見つかるよ・・・!」
「慰めは無用さ純。見ろよ。親父のヤツのあの笑顔・・・今までこんな清々しそうな顔、娘の私でさえ見たことないぞ。クビになったとは言え解放された気分なんだろう。きっと今が、一番幸せな時なのさ」