2021/02/14
1185.
「兄よ!」
「妹よ!」
「・・・せーのっ」
「「サラリーマン!」」
1186.
「サラリーマンって言うじゃん?」
「ああ」
「そもそも“サラリー”って何なんだ?」
「調べてみるか」
1187.
「サラリー。それは、端的に言うと給料だ」
「端的以外の言い方あるのかよ」
「労働に対する対価、とか?」
「確かにちょっとまどろっこしいな」
1188.
「いずれにせよ、給料さえもらってれば誰でもサラリーマンなワケだ」
「そうなるな」
「そして私も、いつかサラリーマンになる!」
「就職できればの話だがな」
1189.
「でぇじょうぶだ、最悪はハローワークが何とかしてくれる!」
「いつから自分がハロワなら就職できる水準にあると錯覚していた?」
「だって、働けなくて生活ヤバい人を助けるのがお役所の仕事だろ?」
「美々香みたいな奴でも助けなきゃいけないなんて、お役所は大変だな」
1190.
「それが公務員なのだ! 私たちは税金を払っている! だから奴らには私を助ける義務がある!」
「まあそうなんだが、公務員だって人間だ。助ける相手を選びたくもなる」
「だったら公務員になるな!! 自己を捨て、国のため、国民のため、その身の全てを捧げる! これが公務員のあるべき姿だ!」
「ほぼ軍隊じゃねえかそこまでいったら」
1191.
「は? それが公務員ってやつだろ? 何の覚悟もなしにその門を叩く方がおかしいだろ?」
「確かに公務員には俺たちのために働く義務がある。だが俺たちも、助けてくれる公務員に敬意は示そうぜ?」
「公務員が自分たちの給料を減らすならな!」
「お前みたいな奴も助けなきゃいけないから給料高いんだよ公務員は」
1192.
「てかさ、公務員のことも“サラリーマン”って言うんかね」
「給料もらってる以上はサラリーマンじゃね? だいたい、その辺でスーツ着て通勤してる人が公務員か普通の会社員かなんて分からんし」
「それもそうか、見た目がサラリーマンならサラリーマンでいっか」
「時々、大学生が新人サラリーマンに見えることもあるけどな」
1193.
「ちょうど4月だっけ? 大学生の就活の時期って」
「面接が多い時期だとは聞くな」
「桜舞い、春風の温かな季節に、若き者たちがブラック企業へと足を踏み入れる!」
「ブラック企業って決め付けんなよ」
1194.
「いやーでも、初任給って憧れるね。自分で好きなように使えるお金だよ?」
「いつから自分は働けば給料がもらえると錯覚していた?」
「いや給料はもらえるだろ。安いかもしれないけど」
「税金、年金、保険料、寮費で相殺されてゼロかもよ?」
1195.
「待てよ! 給料もらえなきゃ“サラリーマン”じゃないじゃないか! 夢のサラリーマンにならせてくれよ!」
「将来の夢つまんなさすぎるだろ。それでも女子高生かよ」
「どれほど難しいと思ってるんだ! 私のようなヤツがサラリーマンになることが!」
「それに納得してしまったことが兄としてショックだよ」