第98話
ゲームに戻ると船が凄いスピードが出ているのか景色が凄い速さで流れていた。
船の周りで激しい水飛沫が上がる。
「おわっ!?」
船が大きく縦に揺れて尻餅をついてしまう。尻の痛みを我慢して操縦席にいる颯音に連絡する。
「颯音! 何が起きてんだよ!」
『春名ごめん! 髑髏の形した岩に近づいたら海賊船が出現して、今逃げてるところ!』
俺は後部デッキから出ると映画とかに出てきそうな海賊船が一隻追い駆け来ていた。
海賊船から大砲が飛んでくるが颯音の操縦のおかげで躱している。
海賊船を確認してみると体力ゲージがあった。てことは、モンスターなのかあの船。
船のモンスターか……なんでもありだな。
『春名、一応言っておくとあの船にはなんかバリアみたいのが張ってあってこっちの攻撃が通らない仕様だよ』
面倒くさいモンスターだな。何処かにバリアを張っている元があるはずだ。そこを壊さないといけないけど、見た限りだと外観には無さそう。てことは、船の中にあるっぽいな。
どうにか潜入しないとだけど、この状況で潜入するのは無理か。とりあえず振り切らんとな。
俺はクモガネを呼び出し抱きかかえる。
「クモガネ、海に向かって【凍てつく風】」
「キュゥ」
クモガネは翅を動かし凍てつく風を送ると海面が凍り始める。だけど、海賊船は止まることはなかった。
「クモガネ、次は【凍てつく刃】だ」
「キュゥ!」
翅を少し溜めてから翅を羽ばたくと海面を凍らせながら白い刃が船に放たれた。
白い刃は船に当たる寸前で見えない壁みたいなので防がれてしまった。
あれが、颯音が言っていたバリアか。
「キュゥ……」
何故か落ち込むクモガネ。俺はクモガネの頭を撫でる。
「クモガネ、こっからが本番だ」
「キュゥ?」
「【共鳴】だクモガネ」
「キュゥ!」
クモガネの体が光の粒子になっていき武器に吸い込まれていく。
盾は姿を変えていき、右手から離れ背中に移動していく。
「な、なんで背中に?!」
背中に移動した武器はマントと一つとなり薄い円盤の姿になった。
同時にこの武器の使い方が頭に流れてくる。
『ハルナハルナハルナ!』
少し高めな子供っぽい声が頭の中で俺の名前を連呼する。
「少し落ち着けクモガネ」
『ごめんなさい、ハルナと話せたから嬉しくって』
「……」
少し照れた俺は頬をボリボリと掻く。
俺は操縦席にいる颯音に連絡を入れる。
「颯音、時間を稼ぐから全力で逃げろよ」
『え、わ、わかった! 気を付けて!』
「了解」
颯音との会話を終わらせ海に視線を送る。
「クモガネ、行くぞ」
『うん!』
円盤の両腕部分が開くと、白くて透明な翅が展開していく。すると、体は浮き上がっていき俺は船を飛び出して上空に向かう。
『うわああ! ハルナと飛んでる!』
「嬉しそうだなクモガネ。重くないか?」
『平気!』
「よし、じゃあ行くぞ」
海賊船に向かって降下する。
俺に気づいたのか大砲が飛んでくるも躱す。
シロガネとクモガネと俺での【飛行】よりもスムーズに動ける。これならいける。
「【共鳴技・フロストウィング】!!」
翅が発光すると俺の周囲の気温が一気に下がり、体のあちこちが凍り付く。
俺は飛んでくる大砲に氷の刃を飛ばし真っ二つにして爆発させた。
更に大砲が飛んでくるが今度は氷の槍を複数生成して大砲を相殺する。
クモガネとの共鳴技は周囲の水を凍らせて自由自在に操れる効果だ。この海原エリアだとほぼ最強だと思う。
まぁその代償に体力がどんどん減っていくのはしゃーない。
何度も妨害してたおかげで海賊船は俺のことを厄介認定してくれたのか、俺たちの船を追うこと止め俺に攻撃を集中させる。そろそろ頃合いだな。
俺は一気に上昇する。周囲の水を凍らせていき、とてつもなく大きい氷塊を作り海に目掛けて落とした。
氷塊は海に落ちると高い波を作り旋回している海賊船を飲み込んだ。
しばらくすると、海賊船は浮上してくる。体力は削れてないか……本当に厄介だな。
海賊船は俺に攻撃をせずに戻っていく。どうにか諦めてくれたか。
「クモガネ、転移して戻るぞ」
『まだハルナと飛んでいたい!』
「分かったよ」
俺はマップを開いて、船がある方に飛んで向かった。
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