第95話
訓練場に出た俺は樹海に向かった。
さて、四体のレベル上げしますか。
「コガ――」
「ちょっとあんた!」
呼び出そうとしたらこの前、街で無駄に体を寄せてきた女性のプレイヤーが凄い形相で寄ってくる。その後ろからぞろぞろと男性プレイヤーがついてくる。
「なにか用ですか?」
「いくら探してもどこにもいないじゃないの!」
俺は軽く溜息をつく。
「あの言ったと思うんですけど、ランダムで出現するんですよ? 一日で見つけられると思っていたんですか? 甘く見過ぎでは? 頑張って探してください」
「生意気なことを!」
怒声を上げるプレイヤーに俺は睨む。
「これ以上、しつこいならGMに報告しますんで」
GMの名前を出すとほとんどのプレイヤーがビクッとなる。
「それじゃ、俺はこれで、頑張ってみつけてくださいね~」
手を振って俺はクモガネのスキル【凍てつく鱗粉】と気配遮断を使いこいつらの前から姿を消した。
「消えただと!?」
「探せ!」
「やめなさい!」
女性プレイヤーが大声を上げて制止した。
「行くわよ」
そう言うと女性プレイヤーとその取り巻きたちが街に移動していく。
全員が去ったのを確認してから俺はスキルを解いて、一息つける。
面倒くさいプレイヤーたちだったな~
レベル上げしようと思ったけど、なんか気がそがれたな……久しぶりに船に乗るか。
俺は街に引き返し、転移門を潜り、海原エリアに到着。
道なり進んで行き桟橋に着いた俺はインベントリから船を取り出し海面に浮かべる。
船の乗り込んだ俺は操縦席に入り、船のエンジンを入れ動かす。
船の貸出期限は残り三日なんだ。賞金も手に入ったし、あとで組合所に行くか。
水門を潜り自動操縦にして俺は四体を呼び出した。
呼び出した四体は辺りをきょろきょろして、コガネとシロガネはソファーに乗っかり、クモガネは俺の左腕に掴まる。
「キシャ!」
クロガネの顎が光出し、俺は慌てて抱き上げる。
「床に穴を開けようとすんなよな」
「キシャ!」
クロガネは抜け出そうと踠いて、抜け出した。
そして、また顎が光り出して床を壊そうとしたけど、床はびくともしなかった。
クロガネは何度も繰り返すが、床に穴が開くことはなく、やがてクロガネは諦めなぜか俺の足をガシガシと噛む。痛くないからいいけど、早めに陸地を探さないとだな。
インベントリから食べ物を並べるとコガネとシロガネは早速飛びつき、クロガネも俺の足を噛むのを止めて食べ始めた。
「食べないのか?」
「……」
聞いてもクモガネは動こうとはしなかった。
「コガネ、シロガネ、クロガネ」
三体を俺をちらっと見るも食事を止めない。
「操縦席にいるからなー……って聞いてないか」
俺は操縦席に行きレーダを使い陸地を探す。しばらくすると、レーダに反応が出てそちらに向かうことにした。
目的地に到着してみると簡単に船でぐるっと回れるぐらいの小さな島に、その中心にヤシの木が生え、ボロボロの家がポツンと置いてあった。
船を近くに止めて船先のデッキに出る。
「なんだろうな、あの島」
「キュゥ?」
クモガネに聞くと頭を傾げた。
「シュ!」
コガネが頭に乗ってくる。その後ろからシロガネとクロガネも来ていた。
「島に行ってみる?」
「シュ!」
「ビー!」
「キシャ!」
島を指して聞くとコガネとシロガネとクロガネは鳴く。
「クモガネもそれでいいか?」
「キュゥ」
クモガネが鳴くと背中に移動して俺を持ち上げようとする。
「え、え、ちょまっ! シロガネもお願い!」
「ビー!」
シロガネは慌てて俺の肩を持ち持ち上げた。二体の負担にならないように俺も【飛行】のスキルを使う。ふわっと体が浮いているとコガネは糸を使って俺の体にしがみつき、クロガネはジャンプして足にしがみついた。
そのままの状態で船を飛んでいき、海に入らずに島に降り立つ。
「キシャ!」
早速クロガネは地面を掘り始める。余程掘りたかったんだな。
俺から離れたコガネとクモガネはヤシの木を登っている。自由だな、こいつらは。
俺はクモガネを連れてボロボロの家を確かめにいく。ドアノブを捻っても扉は開かず、押しても引いてもダメ。仕方なく窓から中の様子を見るも暗すぎてなんも見えなかった。
なんだこの家……まぁそのうちわかるでしょう。
俺はマップ機能に座標を記録した。
「シュ!」
コガネの声がして振り返ると、大きな鋏を持った真っ赤な蟹が三体出現していた。
名前はレッドクラブで、どれもレベル25。今のコガネたちには厳しい相手だ。
「みんな集合!」
コガネとシロガネとクロガネを呼び寄せる。
「俺がサポートするから、あいつらを倒すぞ」
四体は俺の言葉に頷く。
さ、頑張りますか。