第93話
ログインをして直ぐにグレンさんにメッセージを送る。
「グレンさん、もう打ち上げパーティーは始まってます?」
『お前ら待ちだ。早く来いよ』
「分かりました、急いで行きます」
メッセージを終えて、颯音に伝えて転移門の列に並ぶ。
「ねぇ君」
並んでいると知らない女性のプレイヤーに話し掛けられる。
「ムービー見たわよ。凄かったわ!」
「どうも」
「隣の君との闘いも凄かったけど、あの特殊個体のモンスターとの共闘は特に凄かったわ!」
「そうですか」
「それで~なんだけど~」
女性は体をくっつけて耳打ちをする。
「GMが言ってたスキルの入手方法を、お姉さんに教えてくれない?」
「いいですよ」
「本当に!? ありがとう!」
女性のプレイヤーは無駄に胸を押し付けてくる。
「教えても取れるかどうかはお姉さん次第です」
「そうなの?」
「取得方法は樹海のかなり奥の方にいる女性に認められるだけです」
「へぇー、場所は教えてくれないの?」
「ランダムで出現するんで場所はわかりません」
「そう……分かったわ行ってみる。教えてくれてありがとう」
女性は頬にキスをしていき外門に向かっていく。その後ろを結構な人数のプレイヤーがついて行く。
気になっている人が結構いるんだな。まぁ無理だと思うけどね。
「教えてよかったのか?」
「問題ないよ。あの人たちじゃ無理だから」
俺はキスされた頬を拭う。
「うわ……キスを拭ったよ」
「ああいう系は無理。それよりも早く行こうぜ」
「お、おう」
転移門を潜り海原エリアに到着。俺と颯音はルーシャさんのプレイヤーカードを選択して転移をした。
ルーシャさんのお店の前に転移した俺たちはお店に入り、バイトのNPCの人に案内され奥の部屋に向かう。
「お、ようやく来たな」
「すいません、遅くなりました」
ドアを開けるとグレンさん、ベオルさん、エレナさん、ユリーナさんの四人は席についていて、モレルさんとルーシャさんはエプロン姿で料理を運んでいた。
グラスを置いたエレナさんが満面の笑みで近づいてくる。俺は目を逸らした。
「いたっ! なにすんのよグレン……」
「いい加減にしろ、お前がやられたのモンスターのせいなんだから、八つ当たりしない」
「エレナさんやられたんですか……?」
ギロっとエレナさんは視線を向けてくる。
「そうよ! あの後モンスターが沸いてやられたのよ!」
「それは……なんていうか……ドンマイです」
「ふんだ!」
少し不機嫌なエレナさんにルーシャさんが洋菓子を渡す。
「機嫌、直して?」
「ありがとうルーシャ! 大好き!」
洋菓子を一口食べるエレナさんの機嫌は一瞬で直った。
「はい、ハルナ君、ハヤト君」
モレルさんから飲み物を渡され受け取った。
すると、ベオルさんが立ち上がる。
「全員揃ったことだし、パーティーを始めるぞ。みんなグラスを持ったか?」
全員を見渡すベオルさん。
「カンパイ!」
「「「カンパイ!!」」」
俺は渡された飲み物を一口飲んでから料理を楽しんだ。
「ハヤト、狼みたい」
向かい側に座っていたルーシャさんが颯音の隣に来て尋ねる。
颯音は頷いて立ち上がり二体の狼を呼び出す。
「ヒスイ、ギン」
呼び出された狼はお座りした状態で尻尾を振っていた。
「「わああ可愛い!」」
ユリーナさんとモレルさんが二体の狼に凄い勢いで近づいてきたせいで、怖がった狼たちは颯音の後ろに隠れた。
「怖がってるから二人とも落ち着いて!」
「あ、ごめん……」
「すみません……」
謝りながらユリーナさんとモレルさんは少し距離を取るも、狼たちは警戒して颯音の後ろから出てこなかった。
警戒を解かせるために颯音は狼たちに料理を上げた。
「触りたい……」
「もふもふしたい……」
ユリーナさんとモレルさんの欲望の声が聞こえてきて俺は苦笑いした。
隣にいたエレナさんが口を開く。
「ハヤトの狼にも驚いたけど、ハルナが特殊個体のモンスターの背に乗ったのも驚いたわ。チート使ってないんでしょうね?」
「チートっぽいスキルですけど、あいつにしか効かないスキルですよ。スキルの効果は言わないですけど」
「虫系のモンスターは操れる的な?」
鋭いところをついてくるグレンさん。
「半分正解、半分不正解です」
「スキルの効果を言ってもいいじゃん!」
「無理に聞いちゃだめよエレナ。マナー違反よ?」
「うぅ……わかったわよ、もう聞かない」
渋々諦めたエレナさんはまた洋菓子を頬張った。すいませんと内心俺は謝っておく。
パーティーは零時まで続き、後片付けを済ましてから解散となった。
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