第89話
「ん? シロガネ……なんか大きくなってない?」
「さっき進化したんだよ」
「あ、やっぱり? てことは、ここじゃレベルは上げられないし、シロガネはレベル1ってことでしょ?」
「そうだけど……」
颯音に進化したらレベルがリセットされるって話したっけなぁ?
「手加減はしないからな!」
「お前はいつも全力だろう、勉強以外は! 【氷柱落とし】!」
クモガネのスキル【氷柱落とし】を使い颯音の頭上に数個氷柱をつくり落とす。
「おわっ!?」
不意打ちで使ったけど、颯音は簡単に躱してしまう。
「あっぶねーな! てか、ズルいだろう! 勉強のことを持ち出すのは!」
「事実じゃん……クモガネ、俺の背中から離れるなよ」
「キュゥ!」
クモガネはガッツリ背中に掴まる。
「コガネ、シロガネ」
二体を呼ぶと俺に視線を向け、二体同時に体を光の粒子になって武器と一体になる。
『ハルナ、喧嘩でもしたの?』
『なになに? 喧嘩したの? あんな仲がよかったのに?』
「違うから、それよりも力を貸してくれよコガネ、シロガネ」
『任せて! コガネ、あれやるよ!』
『あれね! やっちゃおう!』
コガネとシロガネが言っているあれってなんだろうと考えていると、勝手に両手が動きだし手を合わせる。そして、二体の声が頭の中で重なる。
『【共鳴技・ブレードワイヤーボム】』
合わせた手を離すと、手のひらの上に銀色のひし形の物体を持っていた。
『ハルナ、それ投げたらバーストって言うんだよ!』
『また作る時は手を合わせてね!』
「お、おう……説明それだけ!?」
『『うん!』』
色々と言いたいことはあるけど、今は後回しだ。
「もういいか? 春名」
「おう、待たせた。てか、待ってなくてよかったんだけど」
「なんとなく? そんじゃ行くよ! 【烈火の拳】!」
拳を炎を纏わせて颯音が駆け出してくる。
颯音で近接で勝てる気がしない。
俺は後ろに飛び手のひらにある銀色のひし形の物体を投げて叫んだ。
「バースト!」
ひし形の物体は俺の言葉に反応して光出すと、物体から沢山のワイヤーがあっちこっちに展開していく。
「やばっ!!」
突撃してきた颯音は急停止して回避する。
ワイヤーは周囲の木々をなぎ倒しながらどんどんと展開していく。
俺は落ちてくる枝を避けるために離れた。
やっとワイヤーの展開が止まると、展開したワイヤーは全て消えていく。どうやら使い捨てようだな。
あとでコガネとシロガネには絶対に問い詰めよう。
「なかなかやるな春名!」
煙が立ち込める中、少し木くずを被った颯音が出てくる。
「ま、まぁな! あれを避けたのは颯音が初めてだよ!」
使ったのも初めてだけどね!と俺は内心呟いた。
「【雷鳴の拳】を使ってなかったら危なかったよ。じゃ俺もとっておきを披露するよ」
そう言って颯音はいつの間にか首に掛けていたネックレスに触れる。
「ヒスイ! ギン!」
ネックレスが光ると颯音の右側に薄緑色の狼と、左側に白銀色の狼が姿を現す。その光景を見て俺は顔を引きつる。
「右がヒスイで左がギン。これが俺のとっておきだよ」
「いつのまに……あ、アイストレントの時だな」
「あはは……バレてたか」
颯音は二体の頭を撫でると、狼たちは尻尾を振る。
「あの日、フローズンベリーを探していたら傷ついているこいつらを見つけてね、最初は警戒されたけど、根気よく回復薬をあげたら懐いてくれて、あとは春名に教えて貰ったやり方でテイムしたんだ」
「別々で行動したいって言ったのも、そいつらのレベル上げが目的もあったんだな」
「そそ、おかげで一回進化させて今レベル10だよ」
「そうなんだ……てことは【共鳴】が使えると」
そう聞くと颯音は口角を上げる。
「ヒスイ、ギン、【共鳴】!」
「「ウォーーン!!」」
二体が同時に遠吠えをすると体を光の粒子になって颯音の拳に宿ると、狼の顔を模した手甲になった。
「さ、第二ラウンドやろうか春名!」