第88話
カイトとパーティーを組み砂漠を進んで行くと前にいるカイトから手で止まるよう合図がくる。
カイトは小声で俺に言う。
「十キロ先に二人のプレイヤーが戦っているのを発見。まだこっちには気付いてないし、倒しておくか?」
そう言われてカイトの視線の先を見ても何も見えなかった。
「素で見えるのかこの距離を……」
「そんな訳あるか、俺の使っているスキルだ」
「遠くが見えるスキルか、便利そうだな」
「ハルナじゃ取得できねーよ」
そう言いながらカイトは右手を翳すと火の玉が出現して、みるみるうちに弓の形に姿を変えていく。
狙撃手だから銃かと思ったけど弓だったのか。
カイトが弦を引くと炎で出来た矢が生成された。
「【アストラルファイアー】」
放たれた矢は凄い速さで落ちることなく真っ直ぐ飛んでいく。
しばらくすると、俺の目の前にウィンドウ画面が現れ倒した数が増えていた。パーティーを組んだ場合だと俺が倒してなくてもカウントされようだな。
それにしても、この距離でも当てれるのか、普通に凄いな。
カイトは直ぐに二つ目の矢を生成して放ち、直撃したのようで俺のカウント数が増える。
「俺の実力、凄いだろう?」
「凄い腕だな。その腕なら他のプレイヤーから勧誘くるだろうに……実際に俺も勧誘したんだけど」
「へへ、サンキューな。そん時はハルナのところに入れてもらうわ」
俺とカイトは再び歩き出した。
数回他のプレイヤーと遭遇するも、こっちが先に気が付いた場合は見つかる前にカイトの射撃により倒して、見つかった場合や距離を詰められた場合は俺が対処して倒していく。
疲れた俺たちは休めるところを探し影が出来ているところを見つけ腰を下ろした。
クモガネを呼び出すと俺の顔にすりすりすり寄ってくる。可愛いし、気持ちいな。
「な、なぁ……そいつひんやりするんだろう? 少しでいいから貸しくれないか?」
俺はクモガネに視線を送るも、クモガネは俺から離れようとしない。
「無理みたい」
「そんな……」
しゅんとするカイトに見かねて俺は【凍てつく体】を使い俺の周りの温度を下げてあげた。
すると、カイトはクモガネを押し退け抱きついてくる。
「うわぁ~めっちゃ気持ちい~」
「キモイからくっつくな!」
「少しくらいいいじゃんかよ!」
「キュゥ……」
普段よりも低めのクモガネの声が聞こえ、クモガネの方を見ると沢山の氷柱を生成していた。
「いい加減に離れるよカイト!」
「もう少しだけいいじゃん!」
「ああ、もう! 上をみろ上を!」
「ん?」
見上げたカイト一瞬で顔を青ざめ離れてくれた。
カイトが離れるとクモガネも氷柱を解いてくれて、俺に飛びついてくる。
「そいつ、よっぽどお前のことが好きなようだな」
「そうみたい」
俺は子供をあやすようにクモガネの背中を撫でてあげた。
「そろそろ行くか」
俺たちが立ち上がるとGMからアナウンスが入る。
「まもなく三時間を経過されます! プレイヤーも半分まで脱落して、残り時間もあと三時間です!」
そして、とアナウンスは続く。
「三体目のモンスターの出現場所は……樹海エリアになります! モンスターに挑んだプレイヤーもいるみたいですが全員返り討ちにあってますね」
そこでアナウンスが終わった。
最後の情報いらなくね? やる気が削がれるな……
「樹海エリアか、砂漠じゃなくてよかったな」
「そうだな」
歩き出そうとしたらまたアナウンスが聞こえてきた。
「あー言い忘れていました。プレイヤーが半分減ったためにフィールドを縮小します! それに伴い生き残っているプレイヤーを全員を転移させます!」
そう言った瞬間俺とカイトの体が光出し、気が付いたときには俺は樹海エリアにいた。
「カイト、今どこいるんだ?」
『ハルナか、俺は沼地エリアに飛ばされたみたいだ。ハルナは?』
「俺は樹海エリアだ」
『マジか……お互いにモンスターがいるエリアにいるのなか……』
「合流しようか、その方がいいだろうし」
『そうだな……あれ、転移機能が使えないぞ?』
「え」
俺もカイトのプレイヤーカードを選択して転移を試みたけど出来なかった。さっきまで出来たのに……
「ダメみたい」
『仕方ない、別々に行くしかないか』
「了解、生き残れよ」
『お前こそ』
カイトとのやり取りを終え俺はモンスターに遭遇しないように慎重に進むことにした。
少し歩くと開けた場所に出る。ガサゴソと前方から草木を掻き分けてくる音が聞こえ、俺は盾を構えていると、音の正体は颯音だった。
今一番会いたくない人に出くわすとは運が悪い。
「なんか久しぶりだね春名」
「そうだな」
「約束通り、全力で行くよ!」
構える颯音を見て俺は溜息をつく。
「わかった。なら、俺も全力で挑んでやるよ! コガネ! シロガネ! クモガネ!」
俺は三体を呼び出した。
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