第86話
「おーい、そこの人助けてくれー」
男性は逆さ吊りの状態で俺に助けを求めてくる。
これ生き残りサバイバル戦なんだけど……どうしようか。
「こっちには助ける理由はないんだけど?」
「そりゃそうだけど……頼む! なんでも言うこと聞くからさ! 見逃してくれ!」
すっげぇ胡散臭い。
「理由次第だ」
「話すから! だから降ろしてくれ!」
「はぁ……コガネ、あいつに【ビリビリの糸】をやってくれ」
「シュ!」
口から電気を帯びている糸を吐き出し男性を動けないようにしてから、吊っている糸を切ると砂の上に落下した。
「受け止めてくれよ……」
「重いから嫌だ。それで理由を話してくれるんだろう? 話さないなら倒すだけだけど」
そう言いながら回転刃を展開する。
「わ、わかった」
男性はゆっくりと話し始めた。
「お前も知っていると思うけど、次のイベントはクラン対抗戦だろう? このイベントで生き残れたらクランに入れてもらえるんだ」
知っている前提で話されたけど、初めて聞く情報だな。あとでログアウトしてから調べよう。
「そこに入るために生き残りたいと……どうしてもそこに入りたいのか?」
「そんなことはないけど、なんか有名な人がクランリーダーをするんだよ」
「有名な人?」
「ゼネスって言う人で、ソロでレベルをカンストしているモンスターを余裕で倒せる人なんだ」
「へぇー、そんな人が居るんだ。自分で作ろうって思わないの?」
そう尋ねると男性は頬をボリボリと掻く。
「ほとんどソロでやってたもんだから親しいプレイヤーはいないんだ」
「そうなんだ」
「俺の話は以上なんだけど……見逃してくれるか?」
「なんでも言うこと聞くって言ってたよな?」
男性の言葉を思い出して確かめる。
「俺が可能な範囲でなら」
「それじゃイベント終わったら要求するから、とりあえずプレイヤーカードを交換しよう」
「わかったけど……解いてくんないと操作出来ないんだけど……」
「はいはい」
俺は回転刃で糸を切り、プレイヤーカードを交換した。
「カイトはレベル20なんだ。始めたばっかりの方?」
「一応は。そういうハルナはレベル34なんだな、それに盾士……盾士なの?」
「まぁちょっと変わった盾なだけ」
「ふーん、あとさ今更なんだけど、あのモンスターってなんなの?」
カイトは戯れているコガネたちのことを指さす。
俺は満点の笑顔を向ける。
「え、あ……なんでもないです……」
おかげでカイトは聞くのを諦めてくれた。
「みんなそろそろ行くぞー」
コガネたちを呼ぶと四体が俺の周りに集めりだし、順番に戻していく。
カイトから凄い視線が向けられたけど全て無視する。
「カイトはどうすんのこれから」
「俺もそろそろ行くとするよ」
俺とカイトは遺跡を後にし別方向に進んで行く。
カイトと別れてからしばらく歩くと上空からアナウンスが聞こえてくる。
「まもなく二時間が経過されます! プレイヤーの数は大分減りましけど、まだまだ時間はあります! 頑張ってくださいプレイヤーの皆様! それと最初に出現したモンスターは現在雪原エリアを抜け火山エリアに進出中! そして二体目のモンスターの出現地は……」
また上空にルーレットが現れ回りだす。次第に勢いがなくなり止まる。
「今度は沼地エリアに出現します! ではではまた一時間後にお会いしましょう!」
一方的にアナウンスが終わる。
二体目のモンスターはどうやら沼地エリアに出現したみたいだけど、一体目のモンスターは火山エリアに移動したのか。そのうち砂漠エリアに来る可能性がある。
イベントは夜の六時までだから最大で五体追加される。だれも倒さないとずっと居続けられると厳しいな。倒せる状況なら倒して、無理ならやり過ごせばいいか。
砂を踏みしめる音が聞こえ振り向くと、橙色のチャイナ服と緑色のチャイナ服を着たスキンヘッドで顔が似ている二人組がいた。
「悪く思うな少年よ、これも戦いだ」
「お命頂戴つかまつる」
「二対一って卑怯じゃないんですか~」
「戯けたことを」
二人は構え始め突撃してくる。それに合わせて俺は【プロテクト】を使って受け止めようとしたけど、衝撃に耐えれず後ろに吹き飛ぶも体勢を整えて着地した。
「固いな」
「そうだな兄者」
二人はまた構え始める。一人じゃキツイか。
あっちが二人組ならこっちも複数だ。
二人はまた突撃してくる。今度は連携しながら攻撃してきてなかなか隙が出来ずコガネたちを呼び出せない。
捌き切れなくなり二人組の攻撃をもろに食らい大ダメージを受け俺は吹き飛んだ。
追撃してくる二人が見え俺は咄嗟に【ラウンドシールド】を展開した。
「弟よ行くぞ!」
「おう!」
二人はタイミングを合わせて展開した【ラウンドシールド】殴り、割るもそこに俺の姿がなくて二人は困惑する。
俺は直ぐに地中からワイヤーを伸ばし攻撃をすると二人は距離を取るために離れた。
砂を掻き分けて俺は姿を見せる。
「砂の中にいたのか……それにその武器……何をした……?」
橙色のチャイナ服を着た男性が俺の武器が変わったことに気付く。
「言う訳ないじゃん。ただ、言えるのはこっからが本番」
「ほう、面白い……!」