第81話
スマホのアラームが鳴らり、手を伸ばしてアラームを止める。
もう時間か……
大欠伸をしてから床で布団を敷いている颯音を踏まないように部屋をそっとでる。
軽くシャワーを浴びて早めの朝飯を食べる。
「おはよう春名……頭痛ぇ……」
頭を押さえて少しふらふらの兄ちゃんがリビングにやってくる。
俺は食事を止めて兄ちゃんに肩を貸して椅子に座らせてから二日酔いの薬を取りに行く。
「はい、薬」
「ありがとう……なんか変なこと言ってた?」
「変なこと? 兄ちゃん、ユファンさんにデコピンを食らって目を回してたから何も言ってないよ。あ、ユファンさんが体調が戻ったら車を取り来いって」
「メール見たから知ってる。てか、起きるの早くないか?」
「あー……目が覚めちゃっただけだよ。兄ちゃん、朝飯を食べる?」
「いらない。今日は寝てる……」
兄ちゃんは立ち上がり部屋に戻ろうとするけど、まだふらふらする兄ちゃんに俺は付き添った。
「兄ちゃん、おやすみ」
「おう……」
兄ちゃんの部屋を出て、リビングに戻った俺は急いで朝飯を食べ俺り、自室に戻ってログインした。
「走れば間に合うかな」
イベント当日だからなのかいつもりより人が多い街中を走りヴェルガの家に向かった。
ヴェルガの家の前についてドアを叩くと、ドアが開き中からヴェルガが出てくる。
「待ってたよハルナ、中に来て」
ヴェルガに案内され地下に行く階段を下りる。
「地下なんてあるんだ」
「普段は物置なんだけどね、こっちだよ」
少し奥に進むと綺麗に片付けられている空間の中心に機械が置かれていた。
「ハルナ、クイーンアントの卵を貸して」
「うん」
インベントリからクイーンアントの卵を取りだしてヴェルガに渡す。
ヴェルガはクイーンアントの卵を機械の中に入れ透明な蓋みたいので閉めると、ヴェルガは機械の電源を入れた。
「ハルナ、ここに手を翳してくれるかい?」
ヴェルガに言われるまま指示されたところに手を翳すと機械が動き出した。
「もう手を離しても大丈夫だよ」
「うん、これで孵化するの?」
ヴェルガは頷く。
「基本的にモンスターは条件さえ整えれば孵化するんだけど、プレイヤーがインベントリに入れるとこの機械を使わないと孵化しないんだよ」
「へぇーそうなんだ、ヴェルガって物知りだよな」
「そんなことないさ。一時間ぐらいすれば孵化するよ」
「一時間後か……イベントには間に合いそうだけど、孵化しても幼虫だよな~」
幼虫なら満足度のゲージを最大にすれば進化するけどレベル1だし、どんなスキルを持ってるのかも分からないから戦力としては考えないでおこう。
「ヴェルガ、孵化するまでここで待っててもいい?」
「構わないよ、なんかお菓子でも……」
「あ、それならあるから一緒に食べない?」
「いただくよ」
俺とヴェルガは適当に座り、インベントリから洋菓子を取り出してヴェルガに渡す。
お互いの近況報告を話していると時間はあっという間に過ぎて機械の中が光り出す。
「ハルナ、もう直ぐ孵るけど名前とか決めてるの?」
「うん、決めてる」
光は段々と強くなり卵にピキッと罅が入る。
そして、光が収まると卵から幼虫が姿を見せる。
俺が近づくと幼虫は俺を見上げる。
蓋を開け手を伸ばすと俺の指をはみはみする。少しくすぐったいな。
「クロガネ」
俺は幼虫に名前を付けると、幼虫は光の粒子になり右手の甲にある紋章に吸い込まれた。
テイム完了だな。
早速、俺はクロガネを呼び出した。
「キキ?」
見上げるクロガネに蜂蜜をあげると少しずつだけど飲んでくれた。
クロガネの満足度のゲージも上がってる。
「おめでとうハルナ。これで四体目だね、全部虫系のモンスターなのは驚きだけど……盾士って言うよりもは虫使い――インセクトテイマーだね」
「あはは……俺もそう思うよ」
クロガネの満足度が最大になるまでヴェルガの家に留まった。