第8話
「お腹すいたな……」
ベッドから下りた俺はキッチンに向かい、冷蔵庫から昨日の残り物を皿に盛り電子レンジで温める。
その間に干していた洋服を取り込み畳む。
自分の洋服を部屋に置いてから兄ちゃんの分を部屋に届け行く。まだ兄ちゃん寝てるかな。
ゆっくりと扉を開け中の様子を窺う。部屋は暗く、兄ちゃんの寝息が聞こえる。
起こさないように洗濯物を置いてそっと兄ちゃんの部屋を出た。
少しだけ冷めた昼飯を自室に持っていき、テイムの事を調べながら食べ始める。
「うーん、やっぱ全然情報無いや。手探り状態でやるしかないかな」
空になった食器を洗ってからログインした。
「そう言えば、レベル上がってたっけ」
ロングエイプを倒してレベル4になったことを思い出し近くのベンチに座った。
SPは今回も[2]手に入った。どうやらレベルが上がった時に貰えるSPは固定のようだ。
今回はどうしよう。【トランス】に振るのもありだけど、コガネが仲間になったし【プロテクト】と【バリア】に振ろう。どっちにも[1]ずつ振り分けた。
これで、【トランス】が[3]、【プロテクト】と【バリア】が[2]になった。
ちなみに【トランス・スピンエッジ】にはSPを振ることが出来ない。
SP振りも終わったし、ついでにコガネのステータスも確認しておくか。
コガネのレベルは5。俺よりも少しだけ高いのか……直ぐに追い付かなきゃな。
コガネが使えるスキルは四つ。
【ねばねばの糸】粘着力が高く相手の動きを阻害してくれるスキル。
【毒の牙】低確率で噛みついた相手を毒状態にするスキル。
【吸血】噛みついている間、相手の体力を吸収するスキル。
そして、【共鳴】というスキルなんだけど。詳細が書かれていなくてどういうスキルなのか分かんない。実際に使ってみないとな。
「ここら辺でいいかな。コガネ」
街を出て人気が少ない草原に来た俺はコガネを呼び出した。
「シュ」
呼び出されたコガネは辺りをキョロキョロ見渡してから俺の頭に乗っかる。もうこいつの行動にはなにも言わない。
「コガネ、【共鳴】ってスキル使ってみて欲しんだけど」
「シュ?」
コガネはなにそれと言いたげな瞳をして首を傾げた。
「お前のスキルなんだけど……」
「シュ!」
コガネはぷいとそっぽを向いた。
本当に知らないようだな、自分のスキルなのに……
俺は軽く溜息をつく。
「それじゃさ他のスキルを使ってみてもらっていい?」
「シュ」
コガネは近くにいるスライムにスキルを使いながら襲い掛かっていく。おかげで、コガネのスキルを把握できた。
戻ってきたコガネはお腹をさすり始めた。
「お腹空いたの?」
「シュ……」
「了解。昨日の串焼きでいい?」
「シュ!」
街に戻った俺は昨日立ち寄った店に向かったけどまだ準備中のようだ。困ったな……
「コガネ、後で買うから今は果物で我慢してくれる?」
「シュ……」
仕方ないなと言いたげな表情するコガネに俺は苦笑いした。
とりあえず果物を所持金ギリギリまで買い、少し道から外れコガネにあげた。
美味しそうに食べるなこいつは。まぁそれよりもお金どうしよ……モンスターから手に入れた素材を売れるところあればいいんだけど……店主に聞いてみるか。
「すいません。モンスターの素材の買取してる場所って知ってますか?」
「ん? ああ、買取ね。組合所って所で買取しているよ。この通りを真っ直ぐ進めばあるよ」
「ありがとうございます。また来ますね!」
「いつでもこいよ!」
お店を後にして店主が教えてくれた道を進んでいくと二階建ての建物が見えてくる。
沢山のプレイヤー達が出入りしているからあそこみたいだな。
一旦路地裏に向かう。
「コガネ、悪いけど一旦戻すね」
「シュ」
「またあとで呼ぶね。戻れコガネ」
光の粒子になったコガネは武器に吸い込まれていく。
コガネを戻した理由はただ単に面倒事に巻き込まれないようにだ。
よし、入ろうっと。