第79話
「シュ!」
樹海を散策しているとコガネがあっちに行くように足で指す。
「ビー」
「キュゥ」
コガネの後を追うようにシロガネとクモガネも飛んでいく。
俺も三体を追い駆けついて行くと沢山の虫系モンスターが現れ、一心不乱に同じ方向へ進んでいる。
この先になにがあるのか大体予想外ついて苦笑い。居るんだろうなぁ~俺に装備をくれたボスモンスターが。
しばらく進むとど真ん中にデッカイ蕾がある透き通った水の池に着く。沢山の虫系モンスターは池を囲むように並んでいた。
すると、蕾は少しずつ開いていき中からあの日丘でみた容姿端麗の女性の見た目をしたボスモンスターが姿を見せる。
『良ク来た、我ガ同胞タチヨ』
ボスモンスターから優しそうな光が放たれモンスターたちは喜んでいる。
光が収まるとモンスターたちは徐々に立ち去っていく。
遠くからボスモンスターを確認したけどやっぱり名前が表記なくボスモンスターとレベルしか表記はない。
「コガネ、シロガネ、クモガネ。俺たちもこの流れに紛れて行くぞ」
『何処ヘ行クノダ人ノ子ヨ』
小声で三体に指示を出していると後ろから威圧感のある声を掛けられビクッとなる。
『ン? オ主ハ……』
ボスモンスターは俺の顔をじろじろみる。
「シュ!」
コガネが俺の頭の上に乗っかり足を上げる。
シロガネとクモガネは俺の周りを庇うよに飛び回る。
『イエロースパイダー? ソノ気配、スパイダー ノ コガネカ! なら、コノ人ノ子はハルナカ!』
俺とコガネのことを覚えていてことに俺は驚く。
「忘れているものだと……」
『我ガ認メタ人ノ子ヲ忘レル筈ガナイ。ソレニ新タナ仲間ガ出来タヨウダナ』
「はい、俺の大切な仲間です」
『ソウカ……』
ボスモンスターは俺の頭に手を置くと優しい光に包まれる。
『オ主ニ加護ヲ与エタ』
「え?」
俺の目の前に半透明なウインドウ画面が現れ、そこには女皇蟲の加護と書かれていた。
『去ラバダ人ノ子ヨ』
突然風が吹抜け俺は大量の葉っぱが舞い上がり、気が付くとボスモンスターは姿を消していた。
「キュゥ?」
呆けているとクモガネが声をかける。コガネとシロガネも俺の顔を見ていた。
「……帰ろっか」
俺は三体を連れてもと来た道を引き返す。樹海を抜ける手前で三体を戻してから街道に出て街に戻り、行きつけの串焼きに向かう。
「おじさん」
「お前さんか、いらっしゃい。いつものか?」
「お願いします」
三袋分の串焼きの代金を払い、受け取った俺は人が多い通りにあるベンチに座り串焼きを食べる。
「女皇蟲の加護か……」
女皇蟲の加護の効果は俺が攻撃しない限りフィールドに居る虫系のモンスターに敵対されないというとんでも効果だ。
ボスモンスターに加護を貰うって理解が追いつかないんだけど……そういうのありなのか? 実際に貰っちゃたしありなんだろうけど……ああ、訳わかんない。今度カルタにボスモンスターのことを聞こう。それか明日実装される樹海エリアの案内役にだな。
やることがなくなった俺はログアウトする。
ヘッドギアを外し背伸びをしてスマホの画面を見ると夜中の三時だった。
「三時……颯音も来るしもう寝るか」
再び横になり瞼を閉じる。
「ん…………なんで部屋に颯音がいんだよ……」
何かのゲーム音楽が聞こえて目を開けるとなぜか部屋に颯音が居た。
「冬真兄にいれてもらった」
「今何時……?」
「昼の十二時手前。相変わらず酷い寝ぐせ」
「うっせぇ……は~……眠い。てか、来るの早くない?」
「一時間前に来たけど?」
「え、一時間前から俺の部屋に居たの? ちょっと引くんだけど……」
「春名の部屋に入ったのはさっきだから! それまで冬真兄の手伝いしてたの!」
「はいはい」
俺は起き上がり部屋を出る。
「どこに行くの?」
「シャワー浴びてくる」
風呂場に行って軽くシャワーを浴び部屋に戻ると颯音の姿がなかった。
リビングに行くと颯音はテレビを見ていた。
小腹が空き冷蔵庫から適当に夕飯の残りを皿に盛り昼飯を食べる。
「そう言えば兄ちゃんは?」
「出掛けてるよ。夜には帰るって」
「そっか」
リビングの時計を見ると十二時を回っている。もうメンテナンスの時間か。
「メンテ終わるまでなにする?」
「課題をやる!」
「頑張れよー」
「春名はしないの?」
「大体終わったから今日はやんない。手伝わないからな?」
「ええ!?」
「頑張れー」
昼飯を食べ終わり部屋に戻って颯音が課題をやっている横で俺は漫画を読んでメンテが終わるまで時間を潰した。
次の更新は10/26に予定しております。