第78話
「えー明日から夏休みになるが羽目を外さないように満喫しろよ。あと、補習の奴は夏休みに忘れずに登校すること。HRは以上だ」
担任が教室を出るとクラスメイトたちが騒ぎ出す。明日から夏休みだし仕方ない。
「春名帰ろう」
「おう」
颯音と教室を出て駐輪場に向かい、自転車を押して歩いて学校を出る。
「颯音、レベル上げは順調か?」
「ん? うん、今32。春名は?」
「俺も32。追いつかれたなぁ」
「……俺のこと気にしてレベル上げしてないの?」
睨んでくる颯音。
「違う、勘違いすんな。すでに配られた課題をやってただけだ」
「課題って夏休みの? だから昨日はログインしてなかったんだ」
「おう。来年は受験で満喫できないし、さっさと終わらせようかなって」
「受験って単語出さないで!」
頭を抱える颯音。
「出さないでって、来年三年生だぞー」
「うぅ……そうだけど……」
「颯音もさっさと終わらせなよ? いつも最後にやるんだからさ」
「……春名、明日泊まりに行ってもいい?」
「構わないけど、最近泊まる頻度多いよな~お前の母さんはなんも言わないのか?」
「全然。勉強で泊まるって言ったら平気だよ」
「そうなんだ、兄ちゃんに言っとく」
颯音を見送ってから帰宅。
夕飯を済ました俺は部屋に戻って課題をやる。
「うーん、今日はこんなもんでいいか。よしゲームやろう」
ヘッドギアを装着してベットに横たわり遅めにログインした。
「さて、颯音に追いつかれちゃったしレベル上げしに行くか」
樹海エリアの街を出て樹海に入る。
「久しぶりの樹海エリアか~」
樹海エリアを見渡していると腕の長い猿モンスターのロングエイプが三体襲ってくる。
レベル低いし、クモガネのスキルを使ってみるか。
「【凍てつく体】」
俺の周りの気温が急激に下がり始める。
「ウ、キ……」
範囲に入った途端に三体のロングエイプは動きが遅くなり動かなくなった。
凍ったロングエイプの体に罅が入り、音を立てて崩れていく。
スキルを解くと周囲の気温が戻っていく。
凍結状態にするのは低確率ってあったけど意外となるのかもな。まぁロングエイプのレベルが低いってのもあったから高レベル体のモンスターにも試してみよう。俺はさらに奥に進むことにした。
しばらく進むと開けた空間に出て中央には見覚えのある巨木がある。
ブーンと羽音が聞こえ周りを見てみると蜂のモンスターのハニービーが飛んでいた。
「ここってクイーンビーが住んでいる巨木か」
マップを開いて確認したら、クイーンビーの巨木があったところと場所はほぼ一緒だった。
適当に進んできたからここまでの道順を覚えていつでも行けるようにしてこっと。
「さて、クイーンビーに会い行きますか。その前に、シロガネ」
俺はシロガネを呼び出す。
「ビー?」
「クイーンビーのところに行くよ」
シロガネは巨木をしばらくみていると、巨木に背を向けて飛んでいく。
「え、行かなくていいのか?」
「ビー」
シロガネは頷き返す。
「え……シロガネ待って!」
俺はシロガネの後を追いかけ、追いつくとシロガネは光の粒子になって武器と一体になる。
「会いに行かなくてよかったのか?」
『まだ会いたくないからいい』
「シロガネがそれでいいならいいけど……会いに行きたくなったら俺に言ってくれよ?」
『うん……』
解く気がないのかシロガネはずっと【共鳴】を使う。俺は気にせずに樹海の中を散策しているとシロガネが語り掛けてくる。
『ハルナ』
「ん?」
『聞かないの?』
「会いたくない理由か? シロガネが言いたくないなら聞かないけど」
『ううん、聞いてほしい』
俺はシロガネの話しを聞くために近くにある座りやすい石に腰を下ろす。
『私ね、かっこよくて綺麗で強いお母さんみたいになりたいの……だから、それまでは会いたくないの』
「そうなんだ」
『だから、もうちょっと進化は待ってね』
「了解。話してくれてありがとなシロガネ」
そう言うとシロガネは武器から離れ俺の頭に乗る。
「それじゃレベル上げしていきますか。コガネ、クモガネ」
残りの二体も呼び出して樹海エリアの奥に進みモンスターを連携して倒していく。