第75話
次の日、午前の授業が終わり今は昼休み。
自分の席で弁当を食べていると前の席に居る颯音がスマホを見ながら話しかけてくる。
「春名、アプデの情報はもう見た?」
「昨日なかったけど、今日発表されたのか?」
昨日、ログアウトをした後に少しだけ調べたけどアプデの情報はなかった。
「十二時に発表あったみたい」
「ふーん」
俺は箸を止めスマホを取りだして調べ出すと颯音がウキウキした様子で読み上げる。
「内容はなんと! 初イベントになる対人戦!」
「対人戦か。颯音が好きそうなイベントだな」
そう言いながら俺は公式サイトの内容に目を通す。
アプデは今週の土曜の昼の十二時から夜の六時に行われ、イベント自体は日曜の昼の十二時から夜の六時まで開催される。
ルールはイベント専用エリアで生き残りサバイバル戦。生き残り人数が十人になるか、時間が来るまで続いて残った人たちは賞金とイベント限定アイテムが配られるそうだ。ほとんどプレイヤーが参加するだろうから大変そうだな。
「これってさ颯音と当たる可能性もあるんだよな」
「あー確かに。そん時は全力で相手するよ!」
「颯音とやるのは面倒くさいから逃げる」
「えー! いいじゃん! 俺と一戦やろうよ!」
「手の内がバレてるんだからやりずらいし、いやだ」
俺はスマホを机に置いて弁当の残りを平らげる。
「ちぇー」
「そんなことよりも、早く食わないと昼休み終わるぞ?」
「あ!」
颯音は姿勢を戻して急いで弁当を食べ始めた。
食べ終わった俺は他のアプデの情報も確認した。
樹海エリアにヘルプ機能の追加とモンスターの種類を追加と各エリアの多少拡大だった。
案内役のカルタが言っていた近日実装が思いのほか早くて思わず苦笑いした。
時間は流れ、午後の授業も終わった俺はいつも通りに颯音と一緒に帰宅をする。
隣を歩いている颯音に俺は話す。
「そう言えばさ、今週の日曜日ってグレンさんたちと冒険する予定だったよな」
「グレンさんたちも出ると思うし保留じゃないかな?」
「だよな。今日いたら聞いてみるか」
颯音を駅まで送る帰宅する。
今日帰りが遅くなるって兄ちゃん言ってたしさっさと夕飯済まそう。
ちゃちゃっと夕飯を済ました俺はログインした。
「グレンさんたちはいるかな……」
プレイヤーカードを確認してみるとログインしているのはエレナさんとユリーナさんだけだった。
『ハルナー』
自分からメッセージを送ろうとしたら、エレナさんからメッセージが来る。
『こんばんはエレナさん』
『やっほーい。今どこいんの?』
『今は雪原エリアいますよ』
『ユリーナとそっちに行くね!』
エレナさんからメッセージが終わると、颯音が俺の近くに姿を現す。
「お待たせ」
「そんな待ってない。エレナさんとユリーナさんがこっちくるって」
「え、そうなの?」
颯音と話しているとエレナさんから「早く転移門に迎えに来て!」とメッセージが届いて俺と颯音は慌てて迎えに行く。
「遅い! 寒い!」
転移門に着くなりエレナさんに怒られてしまった。早めに来たんだけど……
「その暖かそうな服装ズルい!」
「あ、案内します……」
エレナさんとユリーナさんをお店に連れていく。
エレナさんは灰色のコート、ユリーナさんは純白のコートを購入して装備投影をした。
お店を出た俺たちはエレナさんとユリーナさんが雪原エリアが初めてだったようで案内を頼まれた。
しばらく街中を散策してから俺はエレナさんに尋ねる。
「エレナさん、何用で来たんですか?」
「あ、忘れてた。普通に楽しんじゃってたな。ハルナとハヤトはもうアプデ見たの?」
「見ました」
颯音は頷く。
「その関係でね、前に言ってたのは一旦保留って伝えにきたの」
「やっぱり。てことは、みんな参加で?」
「勿論よ! 優勝するのは私よ!」
「エレナさんには悪いですけど、優勝するのは俺です!」
颯音とエレナさんの間にバチバチと火花が散る。
そんな光景を見ているとユリーナさんがため息をつく。
「エレナとハヤトくん、今回は生き残りサバイバル戦よ? 優勝なんてないのよ?」
「そうだけど……気分の問題なの!」
「そうですよユリーナさん! 気分の問題です!」
ユリーナさんは深いため息をついた。
俺は話題を変えようと話を振る。
「えっと、これからどうしますか? 二人が良ければレベル上げ行きませんか?」
「二人に手の内を明かしたくないからパス!」
エレナさんは腕でバツを作る。
「ユリーナさんは?」
「すみません、明日早いので私もパスさせて頂きます。また今度誘ってください」
「分かりました」
エレナさんとユリーナさんを見送ってから、俺と颯音は時間ギリギリまでレベル上げをした。