第74話
様子見でワイヤーを伸ばし攻撃してみると、アイストレントは枝をしならせ応戦してくる。
アイストレントの枝は意外と硬くて俺のワイヤーじゃ切り落とせない。
「コガネ、【共鳴】を解いて」
『分かった!』
【共鳴】を解いてもらって弓に変形させ、アイストレントの不気味な顔に向けて数発放つ。
アイストレントは放たれた矢を防ぐも一発だけ防ぎきれずに顔に当たると悲鳴を上げる。
アイストレントの体力もかなり減ったし予想通り顔が弱点だな。
「グオオオオン!」
雄叫びを上げるアイストレントは足の部分を地面に刺すと、俺の足元が揺らいで急いで離れる。
すると、俺がいたところに先が鋭い凍り付いた木が地面から突き出てくる。
「こいつ遠距離攻撃もあんのかよ! コガネ!」
「シュ!」
次々に地面から生えてきて、コガネに【共鳴】を使ってもすぐに特殊な革手袋にして躱し続ける。
このままじゃ防戦一方だな。
適当な木にワイヤーを括りつけ無理やり方向を変えて攻めに転じる。
「【共鳴技・スパイダースネットスパーク】!!」
電気を帯びたワイヤーがアイストレントを縛りあげる。
アイストレントは顔の部分を腕部分でガードをしたせいか、そんなにダメージを与えることはできなかった。
なら、このまま締め上げて動きを止めつつ継続的にダメージを与えるだけだ。
『ハルナ後ろ!』
コガネに言われ後ろを振り向くと、木の杭が飛んできていた。
俺はしゃがんで木の杭を躱す。
木の杭が飛んでくる方を見るともう一体のアイストレントがいた。
「二体目かよ……!」
一体ならまだしも二体目は無理だ。颯音がいれば話しは別だけど……
「春名ごめん! 遅くなっ……たけど……どういう状況?」
俺の目の前に颯音が転移してくる。
「ナイスタイミングだ颯音! あっちのアイストレントを頼む、弱点は顔面だ!」
「お、おう!」
颯音は拳に炎を纏わせて駆け出した。
よし、これであいつに専念できるぜ。
「ビー!」
「えっ?」
コガネが離れてシロガネが【共鳴】を使い別の特殊な革手袋に変わる。
「何してんのシロガネ!」
『私も使って! コガネだけずるい!』
「え……こんな時に言わなくても……」
「シュ!」
今度はコガネが武器と一体になる。
「ビー!」
今度はシロガネが。なんなのこいつら……
頭を抱えているとアイストレントが木の杭を飛ばしてくる。
俺は横に飛び躱す。
「クモガネ大丈夫か?」
「キュゥ!」
目を回したか心配で声をかけてけど平気そうだな。
それよりも、俺のコートの中で言い合っているコガネとシロガネが五月蠅いんだけど。
「ああもう! いい加減にしろ! 二体同時にやって勝った方を使うからさっさとして!」
俺が言うとコガネはとシロガネは同時に【共鳴】を使い武器に吸い込まれて行く。
そして、結果は驚くことになった。
なんと右手はコガネの特殊な革手袋で、左手はシロガネの特殊な革手袋になったのだ。
「こんなのありなのか……」
予想外なことは起きたけどいいこと知った。これなら戦い方が増えるな。
「クモガネ、しっかり掴まってろよ!」
俺が駆け出すとアイストレントは地面から鋭い先端の木を突き出す。
俺は近くの木にワイヤーを括り付け躱して近づく。
アイストレントは頭を振って鞭のようにしならせた枝で攻撃してくる。
「【共鳴技・ハニーボム】!」
俺は止まってから後方に飛び左手から黒い球体をばら撒き爆発させる。
アイストレントの枝は蜂蜜の粘着力により体にべったりとくっついて動きが大分制限させることができた。
ワイヤーをアイストレントの体に括りつけ一気に近づく。
「二体とも解除してくれ」
俺の言葉でコガネとシロガネが【共鳴】を解除する。
そのまま武器を回転刃に変形させ、アイストレントの不気味な顔を削り落とした。
アイストレントはぐでっとして動かなくない素材を落として消滅した。
「ふー……どうにか倒したな。颯音の方は……」
振り向くとアイストレントは黒い炎に包まれて消滅した。
颯音の方も終わったようだな。
「春名、回復頼む」
コート内にいるシロガネを颯音に渡し、体力を回復させる。
「戻ったら戦闘って驚いたよ」
「あはは、すまんすまん」
「そろそろ時間だし、街に戻ろう春名」
「はいよ」
シロガネを受け取ってコート内に入れる。
街に向かって歩いていると、隣の颯音から鼻歌が聞こえてくる。
「颯音、なんかいいことあったの?」
「え? な、なんで?」
「え、いや……お前が鼻歌するときはいいことがあった時だからさ」
「と、特にないよ?」
「ふーん、まぁいいけど」
街に戻った俺たちは直ぐにログアウトした。
追記
諸事情により10/16分の更新は休みにします。
次の更新は10/19に予定しております。