第67話
「満足度のゲージが最大まで溜まったな。これで進化出来る」
後はクモガネのステータスの進化のボタンを押せばいいだけか。
「コガネ、悪いんだけど【共鳴】使ってもらっていい?」
「ビー!」
コガネに対して言ったのに何故かシロガネが答え、光の粒子になり武器に吸い込まれていき特殊な革手袋に姿が変わる。
「シュ!」
『私もしたいの!』
「シュ! シュ!」
『ハルナは私の!』
「お前らなんの話をしてんだよ!」
自分の名前が出てきて突っ込んだ。
「急に声をあげてどうしたの春名?」
俺が急に声をあげたせいでみんなの視線が俺に集中する。
「あ……ちょっと席を外しますね」
俺はコガネとクモガネを連れて部屋を出る。そのまま裏口からお店を出て周りを見渡す。人はいないな。
コガネとクモガネを地面に置く。
「それで、なんの話しをしてたんだよコガネとシロガネは」
「シュ!」
プイっとそっぽを向くコガネ。
『……』
シロガネはだんまりか。
俺がいつもコガネに【共鳴】をよく頼んでいるのをシロガネが羨ましくなって【共鳴】を使った解釈でいいのかな。最後のコガネとシロガネの会話がかなり気になるけども今は聞かないでおこうか。
俺はコガネの頭を撫でる。
「コガネ、今回はシロガネに頼むよ。今度なんかあったらコガネに頼むからそん時は力を貸してくれよな? シロガネ、あんまお前に頼ってなかったなすまん。次からはお前にも頼むからさ、コガネと仲直りしてくんねぇか?」
俺がそう言うと武器からシロガネが離れた。
コガネとシロガネはじっと見つめあったあと足を出して握手みたいなことをする。仲直りしてるんだよな、これ。
「それじゃシロガネ。もう一回【共鳴】お願いしてもいい?」
「ビー!」
シロガネは頷いて武器と一体になる。
「クモガネにさ、進化していいか聞いてくれない?」
『任せて!』
シロガネは再び武器から離れクモガネに話しかける。
頼みたかったのはこれだけだからぶっちゃけどっちでもよかったなんて言わないけど。
話し終わったシロガネは武器と一体になり伝えてくる。
『なんか、どっちでもいいって』
「どっちでもいいのか……」
判断に困る返答だ。まぁどっちでもいいなら、進化した姿みたいし進化させよう。
「クモガネ」
呼ぶとクモガネは俺を見る。
「進化させるよ」
一言いってから俺はクモガネのステータス画面にある進化という文字を押した。
眩い光がクモガネを包んで行くとみるみるうちに姿が変わっていく。
光が収まるとそこには雪のように白い体にエメラルド色の瞳を持って、透明な翅をはためかせて浮いているクモガネがいた。
ステータスをみると名前はフロストモスからフリーズモスに変わっている。
進化したことでクモガネはスキルを覚えた。
飛ぶために必要なスキル【飛行】。自身の体力を減らしながら鱗粉をばら撒くことで相手に幻覚を見せる【凍てつく鱗粉】。冷たい風を起こし低確率で相手を一定時間の間、凍結状態にさせれる【凍てつく風】の三つだ。【共鳴】はなかったけど、シロガネみたいにレベルが上がれば覚えるっしょ。楽しみだ。
使うたびに体力を減らすのはキツイと思うけど、いざという時に使えば強力な【凍てつく鱗粉】に凍結状態に出来る【凍てつく風】。一気に戦力アップだな。今度クモガネのスキルを検証してみないと。まぁそれは置いといて。
「クモガネ、進化おめでとう。これからもよろしくな」
クモガネは俺の周りを飛び回り背中にしがみついてくる。ひんやりしてて気持ちな。
クモガネがいれば火山エリアに行っても大丈夫だな。
「シュ!」
「ビー!」
コガネといつの間にか武器から離れたシロガネは俺の両肩に乗り背中にいるクモガネに話しかける。
「キュゥ……」
なんか面倒くさそうにクモガネは返事をする。
「シュ! シュ!」
「ビー!!」
「キュゥ……」
なんか言い合っているみたいだけど俺の背中でする必要があるんだろうか。降りて言い合ってほしい。
苦笑いをしていると急に裏口の扉が開いて颯音が出てくる。
「こんなところで何してんの春名? って背中の羽なに!?」
「ああ、これ?」
俺はくるっと回り颯音に進化したクモガネを見せる。
「クモガネがさっき進化したんだよ」
「進化したんだ! なんか綺麗な見た目だな! その姿ならルーシャさんも平気でしょ。見せに行こうぜ!」
「そうだな」
颯音の後を追ってみんながいる部屋に戻る。