第66話
「ハルナ遅い」
奥の部屋のドアを開けると少し不機嫌なルーシャさんが立っていた。
その前にあるテーブルには種類豊富の洋菓子が並べられていた。すっげぇ作ってるな。
「すいません遅くなりました」
「そちら、ハルナの知り合い?」
後ろにいるグレンさんたちに気付いたルーシャさんが尋ねてくる。
「左からグレンさん、ベオルさん、エレナさん、ユリーナさんです」
「このお店の店長、ルーシャです。試作品沢山あるから感想聞かせてほしい」
「うん! 任せて!」
「ええ!」
ルーシャさんからフォークを受け取ったエレナさんとユリーナさんは早速近くにある洋菓子を手に取り頬張る。
「美味しい! 何このケーキ! 周りは甘いの中に入っている果物?みたいなのが酸っぱく美味しい! これ、なにを使ってるの?」
「雪原エリアで取れるフローズンベリー使った。他もあるから食べてみて」
「やった!」
エレナさんは直ぐに食べ終え他の洋菓子にも手を伸ばす。
「エレナ太るぞー」
「ゲーム内ではカロリーないからいいんですぅ~」
そう言ってエレナさんはどんどん食べていく。
因みにユリーナさんはさっきから黙々と食べていた。ユリーナさんの近くには早くも五枚お皿が積み重なっている。
「俺たちも食べましょうか」
俺はグレンさんとベオルさんにフォークを渡す。
「そうだな」
「頂こうか」
二人は別々のお皿を取り洋菓子を食べ始める。
「疲れた~……」
俺が一皿目を食べ終わるころにドアが開き颯音が入ってくる。
そんな颯音に俺は洋菓子が乗ったお皿を渡す。
「お疲れ颯音」
「サンキュー。はむ……疲れた体に染み渡る~」
「誰かと交代したの?」
「なんかバイトのNPCの人が来てね」
「ふーん」
二皿目を取り一口食べる。うん、これ結構好きかも。
そうだ。コガネとシロガネにも食べさせよう。
「ルーシャさん、コガネとシロガネにも食べさせたいので呼び出してもいいですか?」
「うん、構わない」
ルーシャさんから許可を取って俺は二体を呼び出す。
「コガネ、シロガネ。ケーキいっぱいあるから好きなの食べていいよ」
「シュ!」
「ビー!」
二体はテーブルの上に行きそれぞれ別の洋菓子を美味しそうに食べる。
「クモガネ出さないの?」
「出すけど、ルーシャさんがいないところでかな」
「あ、苦手だったな。どっか部屋貸して貰えばいいんじゃね?」
「クモガネって?」
俺と颯音が話しているとグレンさんが会話に入ってくる。
「こいつが新しくテイムしたモンスターなんですよ。また虫だけど」
俺の代わりに颯音が答える。
「いいだろう別に虫でも……てか、お前が答えるなよ」
「あはは、つい」
「お前ら仲いいな」
颯音と視線が合う。
「ただの腐れ縁ですよ」
「そうですよ」
「そうか。学生時代の友人は一生モンだから大事にしろよな。それよりも、クモガネ?だっけ。見せてくれないか?」
俺はちらっとルーシャさんを見ると、エレナさんとルーシャさんとのガールズトークで盛り上がっている。こっちのこと見てないようだな。
俺はクモガネと呟き呼び出す。
「ムキュ?」
クモガネは周りを見渡すと直ぐにぐでっとする。
クモガネを呼び出してらなんか部屋の気温が下がった気がする。
「おお、白いな! って冷た! こいつ冷たすぎて触れないぞ!」
グレンさんがクモガネを持ち上げようと触れたら冷たすぎて思わず手を離す。そんな冷たかったっけ?
俺が持ち上げるとひんやりしてて丁度いい冷たさだ。
「そんな冷たくないんですけど……」
「ハルナにしか触れさせる気がないじゃないのか?」
試しにベオルさんと颯音にも触ってもらったけど、グレンさんと同じ反応をする。
ベオルさんの言った通りかもな。なんか嬉しいな。
「ムキュ」
クモガネは口をパクパクさせる。お腹空いたのかな?
近くにある椅子に座り膝の上にクモガネを置いて、インベントリにあるフローズンベリーをあげる。
クモガネが食べているのを見守っていると洋菓子に夢中だったコガネとシロガネが戻ってきて、右肩にコガネが、左肩にはシロガネが止まる。
「シュ!」
「ビー!」
「ムキュ」
なんか会話し始めたけど何言っているのかさっぱりだけど、仲良くやってるようで一安心。
俺はその間にクモガネのステータスを確認する。
シロガネの時のようにクモガネのステータスにも満足度のゲージが表示されていた。
ゲージは70/100まで上がっていた。さっきから結構食べてるからな。この調子なら進化するのも早いかも。
そして、みんなと雑談しながらもクモガネはご飯をねだってきてフローズンベリーをあげていると、満足度のゲージは最大まで溜まった。