第65話
ヴェルガの家を後にした俺は転移門に向かう前に串焼き屋に立ち寄る。
「おじさん!」
「お、あんたか! 久しぶりだな! ちっこいのも元気にしてっか?」
「ちょっと他のエリアに行ってたもんで。コガネも元気でやってますよ」
「そうか。それで注文するんだろう?」
「いつも通りの三袋お願いします」
「はいよ!」
おじさんにお代を渡し、熱々の出来立て串焼きの三袋分を受け取った。
「また来いよ!」
おじさんに軽く会釈して串焼き屋を離れる。
久しぶりにおじさんにも会えて串焼きも補充できたしそろそろ転移門に向かおう。
しばらく歩き転移門に着き列に並ぶ朝方だからか新エリアが開放されたからか列はそこまで長くなかった。これなら直ぐに行けるな。
「ん?」
並んでいると肩をツンツンされて振り向くとクイーンアントの洞窟でパーティーを組んだエレナさんが笑顔で手を振っている。その後ろにグレンさん、ベオルさん、ユリーナさんもいる。
「エレナさん! グレンさん! ユリーナさん! ベオルさん!」
「ハルナ、元気にしてた?」
グレンさんが聞いてくる。
「はい。皆さんもお元気そうで何よりです」
「それよりも聞いたよ! 私たちがいない時にベオルとパーティーを組んだの!」
「前も言ったがあれは偶然会っただけだぞ」
エレナさんは凄い形相でベオルさんを睨んでいると、後ろからグレンさんがエレナさんの頭を軽くチョップをする。
「なにすんのよベオル……」
「いい加減にしろエレナ。子供か!」
「子供だもん! 心は!」
「お、お前……! 実年齢を考え――」
「リアルの話は禁止!!」
エレナさんは慌ててグレンさんの口を塞ぐ。
「皆さん、他の人に迷惑掛かってますよ?」
周りを見ると早く進めよと言いたげな視線が向けられていた。
「皆さん、ちょっと列から離れましょう」
俺は四人を連れて列から離れた。
「ごめんなさいハルナ君。何処かに行く予定だったんでしょう?」
「ええ、まぁ……大丈夫なんで気にしないでください」
俺はこっそり颯音に遅れるとメッセージを送る。
「どこに行くところだったんだ?」
ベオルさんが尋ねてくる。
「海原エリアにある知り合いのお店に行くところです」
「海原エリアって洋菓子店が沢山ある所だったはず! もしかして、知り合いの店って洋菓子店?」
「そうですけど……」
凄くキラキラした目でエレナさんは顔を近づけてくる。
すると、グレンさんは俺からエレナさんを引き剥がす。
「近すぎだ」
「なによ!」
プンプンするエレナさん。
「よかったら来ますか?」
「俺たちは構わないけど、ついて行って大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うけど、一応聞いてみます」
俺はルーシャさんにメッセージを送りると、直ぐに返ってきて了承を得た。
「オッケーみたいです。試作品もあるから味見をお願いしたいそうです」
「やった! 良かったねユリーナ!」
「ええ! 楽しみです」
嬉しそうに答えるユリーナさん。
ユリーナさんは甘いのが好きなのかな。
「それじゃ海原エリアに行きましょうか」
俺たちは再び列に並び海原エリアを選択して転移門を潜る。
海原エリアの街に着いて四人をルーシャさんのお店に案内する。
お店について中に入る。レジでは何故だかウェイターの格好をした颯音が接客していた。
お客さんがいなくなってから俺は颯音に話しかける。
「何してんの?」
「春名がこないからルーシャさんの手伝いをしてたの。奥の部屋でルーシャさん待ってるよ」
「わかった」
「あ、ベオルさんだ! おはようございます!」
「お、ハヤトか。一瞬誰だか分からなかった。その格好似合っているぞ」
「え、あ、ありがとうございます!」
ベオルさんに褒められて颯音は照れる。
「この子がハヤト? ベオルから話は聞いているよ! エレナだよ!」
「ユリーナと申します」
「グレンだ」
「この三人はベオルさんのパーティー仲間の人たち」
「そうなんだ。ハヤトって言います」
軽く自己紹介を済ましてグレンさん、ベオルさん、エレナさん、ユリーナさんの四人を連れて、ルーシャさんが待っている奥の部屋に向かった。
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