第62話
・春名視点
武器が光出して姿が変わっていく。光が収まり武器は俺が想像した杖に変形することなく、金色の線で書かれた六芒星の黒い表紙の本に変形した。想像したのと違う変形で俺は戸惑う。
「春名! まだか!」
颯音の叫び声で我に返る。
「悪い! あと少し耐えてくれ!」
「後でなんかおごれよ!」
そう言いながら颯音はギリギリで避ける。
アイスゴーレムのことは二人に任せよう。その間に変形した武器を確認せねば。
変形した武器の名前は【トランス・カオスグリモワール】。カオスグリモワール……直訳すると混沌の魔導書だったかな。魔導書ってことは魔法職の武器だよな。杖じゃないけど一応は魔法が撃てそうだ。
魔法を使う条件は絵柄を揃えて、その絵柄に対応した魔法が使えるらしい。それに、絵柄を揃える毎に威力は上がると書いてある。よくわからないけど試してみよう。
魔導書を開てみると一つのスロットが浮かび上がり、その下に赤いボタンが現れる。直ぐに空白のスロットが回りだして色がつく。ああ、スロットゲームみたいな感じか。
絵柄は全部で八種類。真っ赤に燃え上がる炎の絵柄は火魔法。青色で水滴の絵柄の水魔法。若草色で草がなびいてるような絵柄の風魔法。茶色の岩の絵柄は土属性魔法。紫色で稲妻のような絵柄が雷魔法。ひし型で水晶みたいな絵柄が氷魔法。黒くて靄が掛かったような絵柄が闇魔法。光が降り注ぐような絵柄が光魔法。
この中で今俺が必要なのは火魔法だ。目押しは苦手なんだけどやってみるか。
俺は赤い色を目印が押してみた。
「クッソ……外した……!」
俺が止めた絵柄は雷魔法の絵柄だった。
少しへこんでいると新しい空白のスロットが浮かび上がる。
一つ決めると新たにスロットが出てくるんだな。火魔法は外したけど同じ絵柄を揃えれれば威力が上がるんだ。
そう意気込んで俺はボタンを押す。
「マジか……目押し下手過ぎない……」
次に出た絵柄は風魔法だった。
これで威力は上がらなくなってしまった。どうすれば……
頭を抱えていると更に空白のスロットが出現する。
「ああ! 俺らしくない! 失敗したら失敗したで何度でもやり直せばいいだけだろう!」
俺は適当にボタンを押した。案の定。出た絵柄は風魔法の絵柄だった。
すると、俺の目の前にウィンドウ画面が現れ、所持金半分を払うことで再挑戦しますかと書かれていた。
「何度でも挑戦してやるよ!」
・颯音視点
「はぁ……はぁ……よっと!」
アイスゴーレムの怒涛の攻撃を躱してられるのもそろそろ限界だ。
春名早くしてくれ……!
「! しまっ――」
石に躓いた俺はアイスゴーレムの拳を躱し切れず直撃してしまい吹き飛び、何度も雪の上を転がり木にぶつかってようやく止まった。
体力はかなり減った。くそ……やらかした……
「ハヤト、危ない!」
ルーシャさんの叫び声で土の塊が飛んでくるのが視界に入る。やばい……避けないと……
体を動かそうとしたけど足が動かない。このままじゃ食らう!
俺は腕を十字に構え衝撃に備えたらワイヤーが体に絡まり、俺の体は引っ張られた。
「すまん、遅くなった」
「……遅いよ春名……死ぬかと思った……」
「シロガネ、回復を頼む」
「ビー!」
春名のコートに隠れていたシロガネが顔を出して俺のコートに入ってくる。
シロガネから甘い香りがすると思っていたら体力がみるみるうちに回復していく。
「颯音、あとは俺がやるから休んでてくれ」
春名は俺が見たことない武器というより本を構えた。
「ルーシャさん! 離れてください!」
春名が大声で叫び、聞こえたルーシャさんは一気にアイスゴーレムから離れた。
ルーシャさんが離れたのを確認してから春名が呪文を唱え始める。
アイスゴーレムの上空に魔法陣が浮かび上がり広がっていく。アイスゴーレムは春名に向かって土の塊を飛ばしてくる。俺は立ち上がり、飛んでくる土の塊に向かって跳躍する。
「【爆破の拳】!」
土の塊に思いっきり殴りつけると土の塊は爆散した。
「助かったぜ颯音!」
「ぶちかませ春名!」
「おう! 【エクスプロージョン】!!」
詠唱が終わるとアイスゴーレムの上空に赤く煌めく火球が落下していき、アイスゴーレムに到着した瞬間激しい爆発が起こり、爆風が吹き荒れる。俺と春名は体を伏せて耐えしのぐ。
爆風が収まり、舞い上がっていた雪煙が晴れると、アイスゴーレムの体力は削れていてボロボロと体が崩れていき消滅した。
「「おわった……」」
俺と春名は大の字で雪の上に倒れ雪原エリアで初めて見る青空を眺めた。