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第61話

 ぱらぱらと雪が降る白銀の世界を進んで行くと、不自然に置かれている沢山の大岩を見つける。

 いかにも怪しいけどモンスターの名前は出ないからオブジェクトかな?


「春名、このまま通り抜ける?」


「それでもいいけど、ルーシャさんもそれでいいですか?」


「大丈夫」


 俺たちは警戒しながら進んで行くとルーシャさんが話しかけてくる。


「モレルから聞いた虫たち、出さないの?」


「え、あー……」


「私、虫平気。みたい!」


「見せてあげればいいじゃん春名」


「別にいいんだけど……このゲーム、リアルの要素多いじゃないですか。こんな寒いところでコガネとシロガネを出しても大丈夫かなって思って……」


「「あ!」」


 思ってもいなかったような表情をする二人。


「試しに呼び出してみますけど、二体が無理そうなら直ぐに戻します」


「う、うん。ごめんね……」


「謝んないでくださいルーシャさん。それじゃ呼びますよ。コガネ! シロガネ!」


「シュ……!?」


「ビー……!?」


 呼び出したコガネとシロガネは身を震わせて体を寄せ合っている。やっぱり寒かったか。

 俺はコガネとシロガネを抱き上げてコートに入れる。


「中は暖かいけど、大丈夫か? コガネ、シロガネ」


 そうと尋ねるとコートの中でもぞもぞ動く。大丈夫そうだけどくすぐったい。


「ルーシャさん、二体を戻しますね」


「うん。今度見せて、ね?」


「わかりました。コガネ、シロガネ戻って――」


 コガネとシロガネを戻そうとしたら颯音が俺とルーシャさんの腕を掴んで駆け出す。

 すると、俺らがいた場所に大岩が落ちてきて雪が舞い上がった。


「二人とも! まだ来るよ!」


 直ぐに上空から沢山の大岩が落ちてくる。

 俺たちは全力で走った。

 どうにか俺たちは攻撃を食らうこともなく駆け抜けることが出来た。


「どうにか切り抜けれたかな。颯音が先に気付いてよかったよ」


「この前取ったスキルのおかげだよ。それよりも」


 颯音が指さすを方を見ると三、四メートルほどの大きさの岩の巨人が佇んでいた。


「アイスゴーレム」


 岩の巨人の正体はレベル30のアイスゴーレムだった。

 辺りを見渡してもアイスゴーレムは一体しかいない。


「逃げるか戦うか」


「戦うに一票!」


「私も!」


「じゃあ戦うで。俺が敵視を集めるから二人は両サイドから」


 二人は頷き、颯音は右に、ルーシャさんは左に駆け出す。

 アイスゴーレムは颯音を見るけど、俺は【挑発】してこっちに向かせる。

 アイスゴーレムは重たい音を立てながら歩いてくる。


「コガネ、シロガネ。一旦戻すよ」


 俺がそう言うとコートの隙間から顔を覗かせ顔を横に振る。


「……邪魔だと思ったら直ぐに戻すからな?」


 コガネとシロガネは頷いてコートの中に戻って、俺の体にがしっと掴んでくる。少しくすぐったいけどこれなら大丈夫か。

 段々と近づいてくるアイスゴーレムは急に止まり地面を抉り飛ばしてきた。


「聞いてないんですけど!? コガネ、【共鳴】!」


「シュ!」 


 コートの中からコガネは返事して武器に光の粒子が吸い込まれ特殊な革手袋に直ぐに変形して、俺はワイヤーを伸ばして氷漬けの木に括り付け、飛んでくる地面の塊を避ける。

 咄嗟のことに武器を変形させてしまったから【挑発】の効果は切れてしまったけど、二人はなんとかアイスゴーレムの近くまで行ってるな。

 【挑発】の効果が切れてアイスゴーレムの視線は颯音に向かい殴ろうとしている。颯音は振り下ろされた腕を跳躍で躱し、腕に着地して駆け上がっていく。


「うおおおおりゃあ!」


 炎を纏った拳で顔面アイスゴーレムの顔面らしい部分を殴りつける。だが、アイスゴーレムの体力は少ししか削れていなかった。


「硬っ……!」


 殴った手を摩る颯音にもう片方の腕が伸びて、颯音は攻撃を避け地面に降り距離を取り俺の近くまで戻ってくる。

 颯音がアイスゴーレムから離れたタイミングで、ルーシャさんはアイスゴーレムの右足を怒涛の勢いで斬りつけるも颯音が与えたダメージとほぼ一緒だった。

 すかさず、ルーシャさんも距離を取り、アイスゴーレムの攻撃を躱しながら後退する。


「春名! あいつ硬すぎなんだけど!」


「物理耐性が高いのかもしれない! 颯音の【烈火の拳】ならダメージを与えられると思うけど、俺とルーシャさんは厳しい!」


「マジかよ! なんか良い手はないのかよ!」


「考えるから時間を稼いでくれ!」


「わかった! 俺からルーシャさんに伝えておく!」


 そう言って颯音はアイスゴーレムに向かって駆け出した。

 二人が時間を稼いでいる間になんか考えないと。

 俺、颯音、ルーシャさんは完全物理メインだ。弓は魔法攻撃だからダメージを与えられると思うけど、クラーケンの触手戦で大分溜まっているとはいえ削りきれるか怪しい。エレナさんみたいな魔法特化職がいれば……


『ハルナ! まだトランス残ってるでしょ? 魔法を撃てるようにしよう!』  


 頭に直接コガネが語り掛けてくる。


「残っているけど出来るかわかんないし……」


『そんな悠長にしてられないよ!』


 少し怒ったようにコガネが言う。

 アイスゴーレムの方では激しい戦闘音が聞こえてくる。 


「……わかった、やってみる」


 武器からコガネが離れ元の姿に戻り、俺は杖を掲げてエレナさんが魔法を放つ姿を想像しながら小声で【トランス】と唱えた。



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