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第6話

「お前……あの時のスパイダーなのか?」


 スパイダーは俺の目を覗き込むと勝手に頭に乗ってくる。こいつは絶対あの時のスパイダーだな。


「で、この状況どうすんだ――え?」


 目を赤くさせ絶賛お怒りモードで木を登ってくるロングエイプたちを見下ろしながら聞くと、俺はスパイダーに体当たりされ木から落とされた。


「ウキキ!」


 俺が落下して行くのを見たロングエイプたちが俺に追い付こうと木から飛んで来るのが視界に入った。

 マジであの蜘蛛! 死んだら一生恨んでやる!

 空中で態勢を無理矢理整え地面に着地。そのまま体を一回転させ衝撃を和らげる。

 そして、一体のロングエイプに向けて回転刃を投げた。


「空中じゃ避けられ……は? そんなのありかよ!」


 ロングエイプたちは互いに手を伸ばし、他のロングエイプに引っ張られ空中で避けてしまった。

 武器も飛ばしてしまい防ぐ手段を失った俺は背を向けて走り出そうとすると上の方でロングエイプの悲鳴が上がった。

 振り向くと俺が投げた回転刃を糸を使い巧みに操りロングエイプたちが次々に倒されていく。俺はその光景を呆然と眺めていた。

 地面にロングエイプのドロップアイテムが散乱している中、スパイダーは俺の回転刃を持って戻ってきた。

 俺が武器を回収して、どこかへ行こうとしたスパイダーを持ち上げるとじたばたした。


「待って、お礼言わせて」


 ゆっくりとスパイダーを地面に降ろし、優しく頭を撫でながら言う。


「さっきはありがとな。お前が来てくれて助かったよ」


 スパイダーは六つの瞳を細め気持ちよさそうな表情になる。可愛いらしいその姿に俺も頬を緩めた。


「それじゃ、俺は行くよ」


 時間を見るとそろそろ昼時になる。そろそろ休憩のために街に戻ってログアウトしたい。


「シュ!」


 手を振って立ち去ろうとしたらスパイダーが頭に乗っかってきた。


「お前……そこ好きだよな」


「シュ!」


「まぁいいけどさ。これから街に戻るんだけど、お前も来るか?」


「シュ!」


 そう聞くとスパイダーは頷いた。


「そんじゃ行きますか」


 森を出て街に続く道を進む。街の手前に着くと朝よりも人が多い気がした。


「なぁあれモンスターなんじゃ……」


「は? そんなわけないだろう。街にはモンスターが入れないんだぞ? それにあいつもプレイヤーだぞ? あるわけないない」


「確かに」


 俺の事を指している会話が耳に入り、門を潜る手前で俺は道を外れて、外壁に寄りかかり腕を組んで座った。


「さて、どうしようか。そんな仕様あったの知らなかった。……にしても、こいつは吞気に寝てるな」


 悩んでいる俺と違ってスパイダーは吞気に頭の上で寝ている。


「おーい! ハルナー!」


「ん? あ、ヴェルガ!」


 遠くから俺を呼ぶヴェルガに手を振った。

 俺が立ち上がるとその振動でスパイダーが目を覚ました。

 近づいてくるヴェルガに気づいたスパイダーは俺の後ろに隠れる。人見知りなのかこいつ。

 息を整えるヴェルガに俺は尋ねた。


「レベル上げ終わったの?」


「まぁね。そんなことよりここで何してるの?」


「あ……それがさ」


 俺は背中に隠れているスパイダーをヴェルガに見せ事情を説明した。


「心配ないよハルナ。そのモンスターの名前とか決めているの?」


「名前? 決めてないけど……」


「決めるといいよ。そうすれば問題解決するから」


「そうなんだ」


 ヴェルガにそう言われ名前を考えるけど、ネーミングセンスないからな……


「うーん、コガネなんて……どうかな?」


「いいんじゃないかな?」


 スパイダーに視線を向けるとただ俺を見ていた。反応に困るんだけど!


「名前が決まったらそのモンスターの額に手を置いて名前を呟くんだ」


「わかった」


 スパイダーを一旦地面に降ろし、片膝をついてヴェルガの言われた通りに額に手を置いて呟く。すると、俺の右手にある紋章が光り、スパイダーが光の粒子になって紋章に吸い込まれていった。

 何が起きたのか分からなくて戸惑っているとヴェルガが俺の肩に手を置く。


「大丈夫。今度は名前を呼んでみて」


「う、うん。コガネ!」


 名前を呼ぶと目の前にスパイダーのコガネが現れた。

 その様子を見てヴェルガが言う。


「テイムが成功したようだね。おめでと」


「テイム?」


「モンスターを仲間にしたってこと。詳しいことは街で教えるよ」


「う、うん」


 コガネを抱きかかえヴェルガの後を追って難無く街に入れた。 




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