第56話
ヘッドギアを外して起き上がると窓から差し込む太陽の光に俺は目を細める。
もう朝だったか……このゲームをやり始めてから徹夜が多くなったな。
「春名おはよう。はぁ~……」
大欠伸をする颯音。
「朝飯食うか?」
俺が尋ねると颯音の腹の音が鳴る。俺は思わず笑ってしまう。
「腹の音で返事をすんなよ」
そう言うタイミングで俺の腹の音が鳴る。
「春名もお腹空いてんじゃん!」
「ははは、みたいだな。朝飯作るから手伝えよ」
「おう」
俺たちは部屋を出てリビングに行くとスーツ姿の兄ちゃんが朝飯を食べていた。
「兄ちゃんおはよう」
「あ、冬真兄だ。おはようございます!」
「おはよう。二人とも……徹夜したな?」
「……つい」
「休みならなんも言わないさ。お金は置いとくから無駄遣いをしないように。それじゃ俺は行くよ」
「あ、うん。気を付けて」
「冬真兄いってらっしゃい!」
俺と颯音は兄ちゃんの見送りをしてから簡単に朝飯を作る。
食べ終わった俺は溜まっている洗濯物を洗う。
洗濯機を回してからリビングに戻るとソファーで目を閉じて横になっている颯音を見つける
「颯音、寝るなら部屋いけよー」
「大丈夫~……」
「仕方ねえな」
俺は部屋に戻って毛布と枕を持って颯音に渡した。
「今日も泊まっていくんだろう?」
「うん」
「夕飯買いに行くからな」
「わかっ……た……」
颯音はスヤスヤと寝息たてて寝てしまった。
やっぱり寝たか。さっさと洗濯終わらせて俺も寝よう。
洗濯し終えた物をベランダに干した俺は直ぐに部屋に戻り眠りに就く。
――ピピピピ。
「ん……」
スマホでセットしたアラームが鳴り俺は目を覚ます。
近くで鳴りやまないスマホに手を伸ばしアラームを止める。
「春名起きた?」
部屋のドアが開き颯音が顔を出す。
「まだ眠い……」
「夕飯買いに行くんだろう?」
「……そうだった。ちょっと準備するからリビングで待ってて」
「おう」
急いで身支度を整え、十分後に家を出て近くにある大型スーパーに向かう。
「スーパーに来たけど夕飯どうしよっかな。颯音、なんかリクエストある?」
「肉!」
「肉って……アバウトだな。まぁとりあえず精肉エリアに行くか」
スーパーの中を少し歩くと精肉エリアに到着した。
「春名春名! これがいい!」
颯音が持ってきたのは割かし高い金額の牛肉だった。
「俺も半分出すからこれにしよう!」
「わかったよ。約束だしな、奮発するか!」
「イエーイ!」
残りの必要な材料を籠に入れ買い物を終え俺たちは帰宅する。
颯音に手伝ってもらってかなり豪華な夕飯になった。
「うわあ! めっちゃ美味そう! いただきまーす!」
「いただきます」
「うんっま!」
「静かに食えよな~」
談笑しながら夕飯を済ました俺たちは風呂を順番に入り、今は俺の部屋で課題をしているところだ。
ゲームばっかりしていたら兄ちゃんに怒られちゃうからな。
「頑張れ颯音~それ終わったらゲームだぞ~」
「ああ、もう! 先に終わったからって目の前で漫画読みやがって!」
「今回の範囲だから余裕だろう」
「そりゃそうだけど……」
「まぁ頑張れ~」
「さっさと終わらせてやる!」
やる気になった颯音は数分後に課題を終わらせ燃え尽きて折り畳み式テーブルに突っ伏している。
その間に俺は解答用紙を見ながら答え合わせをする。
「お、全部あってんじゃん」
「へへ……」
「そんじゃゲームやりますか」
「待ってました!」
颯音はテーブルを片付けて布団を敷く。その手際に俺は若干呆れた。
「ちょっとトイレ行ってくるから先にログインしてて」
「おう」
部屋を出て用を足しにトイレに向かう。
部屋に戻るとヘッドギアをつけて横になっている颯音が視界に入る。
踏まないように気を付けてベットに横なって俺もログインした。
「春名遅いよ! 早くこっちに来てくれ!」
状況がわからないまま颯音に手を引かれ後部デッキに連れてかれた。
「なんだよ……こんな、ところに……は……?」
驚愕の光景に俺は言葉を失った。
そこにあるはずの島が跡形もなく消え失せていたのだ。