第53話
全方位からのゴーストの攻撃に俺は【バリア】のスキルを使い魔法防御力をあげてから【ラウンドシールド】で自分中心に範囲系の盾スキルを使ってゴーストたちの攻撃を防ぐ。
ゴーストたちの魔法攻撃は低いようだけど量が多いし、長期戦だと厳しい。
「シュ!」
コガネが俺の頭の上から電気を帯びた糸をゴーストに向けて放つも糸はゴーストを透過していく。
「シュ!?」
糸が当たらなかったことにコガネはショックを受けている。
糸も当たらないならコガネの攻撃は全て通じないってことになる。後で励ましておこう。
「颯音!」
「おう!」
拳に炎を纏わせて颯音は駆け出しゴーストの攻撃を掻い潜り、ジャンプすると何もない空中で着地して一気に一体のゴーストに近づいて顔面と思われるところを思いっきりぶん殴ってぶっ飛ばした。
直ぐに地面に着地した颯音はゴーストたちの攻撃を避けて、壁を蹴ってまた空中に居るゴーストを殴っていく。ダメージは食らっているようだし颯音に頑張ってもらおう。
「シロガネ、指示を出したら颯音の回復を頼んだよ」
「ビー!」
シロガネはやる気満々に頷く。
「シュ……」
すっかりやる気を失ったコガネは俺の傍らで溜息をついていた。
見てられなくなった俺はコガネを戻すことにした。あとで呼び出そう。
俺が守り、颯音が蹴散らして時間を稼いでいるとモレルさんが口を開く。
「いつでも撃てるよハルナ君!」
「了解! 颯音ー!」
俺が颯音の名前を叫ぶと、颯音はゴーストたちの攻撃を避けながら距離を取る。
颯音が十分離れたのを確認してからモレルさんに合図をだす。
「モレルさん!」
「【高圧荷電粒子砲】発射!」
モレルさんの武器から眩い光線が放たれてゴーストたちを包み込んだ。
耳を両手で塞ぎ伏せていた俺は、音が静かになって辺りを見渡す。
「モレルさん……威力上がってません?」
モレルさんの砲撃で辺り一面が吹き飛んで建物は半壊状態。ダンジョンを一緒に攻略したときと同じ威力だと思っていたけど予想外だ。
「初期スキルを[40]まで上げてるからね。凄いでしょ?」
「驚きました」
「春名! モレルさん!」
避難していた颯音が駆け寄ってくる。
「モレルさん、砲撃かっこよかったです!」
「ありがとう。ハヤト君も縦横無尽にゴーストを殴ってるの凄かったよ!」
「ありがとうございます!」
モレルさんに褒められて颯音は嬉しそうだ。
俺はその間に辺りを確認したけど、ゴーストは一匹もいなくなっていた。
どうやらモレルさんの砲撃で全滅したようだな。
「ビー!」
シロガネから甘い匂いが漂ってくる。シロガネはスキル【癒しの風】を使ったようだ。
減っていた体力が回復していく。本当に回復技は助かるな。
体力が回復してから俺たちはそこら辺に散乱している素材を回収してから、無事な部分を散策することに。建物内を進んで行くと書斎みたいな部屋を見つけて調べることにした。
「ハルナ君、なにかあった?」
「こっちは全然。颯音は?」
「んーなんもない」
「次の部屋へだな」
モレルさんと颯音が先に部屋を出ていき、俺も出ようとしたらシロガネが肩に止まる。
「ビー!」
「どうしたシロガネ?」
シロガネは体を光の粒子に変え、武器と一体になり特殊革手袋に変わる。
『ハルナ、コガネのこと忘れてる!』
「あ、忘れてた」
俺はコガネを急いで呼び出す。
「シュ?」
俺はコガネの頭をなでる。
「今回は相手が悪かっただけだから、あんま気にすんなよ?」
「……」
コガネは俺の手を払いのける。慰めは要らなかったみたいだな。
「あ、いた。春名、モレルさんが地下に行く階段を見つけたから早く来て」
「おう」
俺はコガネを抱き上げて、颯音と共にモレルさんのところに急いだ。
「お待たせしましたモレルさん」
「待ってたよハルナ君」
「それが地下に行く階段ですね」
モレルさんの目の前には地下に続く石で出来た階段があった。
「この先も見るんでしょう?」
「勿論。先に俺が偵察してくるんで。問題なければメッセージを飛ばします」
「気を付けて」
「春名、やばかったら戻ってこいよ」
「コガネとシロガネがいるんだ。大丈夫だよ。そんじゃ行ってくる」