第51話
潮風にあたりながら海を眺めていると島が段々と近づいてくる。あれが目的の島なのかな? 意外に大きい島だな。
次第に船は減速していき島の浜辺付近に止まった。浜辺を超えると鬱蒼とした森が広がっている。
「そんなところで何してんの春名?」
操縦席から船先のデッキに来た颯音が尋ねてくる。
「潮風にあたってただけだよ。ここが目的の島なのか?」
「うん、ここが目的の島。なんかさ、海賊の財宝とか眠ってそうじゃない?」
「あー確かに」
「早く散策したいな。モレルさんはまだ来れなさそう?」
「島に到着した時にメッセージが来てあと十分ぐらいで行けるって」
「了解。じゃあ俺は船内で色々しているよ」
「はいよ。そんじゃ俺はそこら辺を歩いているよ」
「分かった」
船内に戻っていく颯音を見届けてから俺は船から降りる。
「うげ……装備濡れる仕様かよ……」
装備を付けたまま海に入ったら膝から下が濡れてしまった。
テンションが下ったまま俺は浜辺に上陸する。
「あ、海から出ると乾くのか」
ずっと濡れていたら面倒くさかったけどそういう仕様なら問題ない。
上陸した俺はコガネとシロガネを呼び出す。
呼び出した二体は周囲をキョロキョロと見渡してからコガネは近くにあるヤシの木の頂上まで登った。
シロガネは飛んでコガネのあとを追いかける。ヤシの木の上で楽しそうにしてんな。
「ハルナ君ーー!」
モレルさんの声が聞こえて船の方を見ると、モレルさんが手を振っていた。
モレルさんと颯音は船から降りた途端不快そうな表情する。やっぱりか。
「二人とも~海から上がれば乾くから早くこっちへ~」
俺がそう言うと二人の表情は少し和らいでこっちに向かってくる。
「お待たせハルナ君」
「いえいえ。コガネ! シロガネ! そろそろ散策行くから降りてきてー!」
二人が揃ったことで俺はヤシの木の上に居るコガネとシロガネを呼ぶと、コガネは俺の頭に乗っかってきて、シロガネは左肩に乗る。
「この蜂のモンスター可愛い! ハルナ君の新しいお仲間さん? それにこっちの蜘蛛はコガネちゃんだよね? なんか大きくなってない?」
「ハニービーのシロガネって言います。コガネが大きくなったのは進化したからですモレルさん」
「へぇーそうなんだ。よろしくねシロガネちゃん!」
「ビー!」
シロガネは行儀良く返事をした。
「ハルナ君を見てると私もモンスターを仲間にしたいな~羨ましいなぁ~」
「俺も同感です」
うんうんと颯音は同意する。
「まぁこればっかりは運次第かと。それよりも、早く散策しません?」
「そうだね。行こう!」
「おう!」
俺たちは鬱蒼とした森に足を踏み入れる。
この島内ではマップが機能しないようで木に糸を括り付け目印として進んで行くことにした。
まぁ迷ったら俺が木の上まで登って道案内するけどね。
隊列は俺が先頭、颯音は真ん中で、モレルさんが最後。コガネは木を伝って移動して、シロガネはそんなコガネの後をついて行っている。
しばらく進んで行くと開けたところに出ると、そこには巨体でゆっくり歩く、もこもこしたの毛玉の塊が沢山歩いていた。
「あれモンスターなのか?」
気になった俺は調べるとシルクシープというモンスターだった。レベルはどのモンスターも30と高い。一体ならまだしも沢山いると相手するのがキツイな。
「春名、一旦引いた方がいいと思う」
「俺も同意見だ。モレルさんもそれでいいですよね」
「うん。それがいいと思う」
俺たちは音を立てないように後退する。
その時、足元でペキっと枝が折れる音がした。
一気に緊張が走り、俺はシルクシープを見ると全員が俺たちを見ていた。
俺たちは武器を構えいつでも戦えるようにしたけど、シルクシープたちは俺たちに興味がないのか草をもしゃもしゃと食べ始める。
「襲ってこない……?」
「みたい、だな……」
安堵した俺たちはその場にへたり込んだ。
「シルクシープが敵対しないモンスターでよかった……春名のせいで寿命が縮んだよ……」
「申し訳ない。モレルさんもすいません俺のせいで……」
「ううん。大丈夫だからそんな謝らないでねハルナ君。それよりも……」
俺はモレルさんが指をさした方を見るとコガネとシロガネが一体のシルクシープの背中に乗っていた。
「あいつら!」
俺は慌てて立ち上がり二体のもとに走った。
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