第5話
俺とヴェルガはとりあえず一緒に森を目指すことにした。
草原では俺のような初期装備のプレイヤーたちが動きが遅いスライムと戦っていた。
ヴェルガがいうにはスライムで戦い方を慣らしてから森に入るそうだ。
森でのことを話すとヴェルガは考えだす。
「どうかしたの?」
「……ううん、なんでもないよ。それよりも、ハルナは盾士なんだよね? 攻撃手段とかどうしてるの?」
そう言われ少しだけヴェルガから離れ、【トランス・スピンエッジ】と呟き、盾が変形したのを見せる。
「へぇ~、かっこいいね、その盾。盾で合ってるよね?」
俺が頷くとまじまじと俺の武器を観察するヴェルガ。
「それって飛ばせるの?」
「うーん、どうだろう。やってみるよ」
丁度近くに居たスライムを目掛けて「飛べ」と念じてもただ俺の手元で回転するだけだった。
「投げるイメージでしてみたら?」
ヴェルガの提案に俺はフリスビーを投げる感じで、投げて見ると回転刃は真っ直ぐスライムに飛んでいき一瞬でスライムの体力を削り切った。
「おお! 今のみた!? ビューンって飛んでいったよ!」
「ふふ、見てたよ。スライムの弱点のコアに命中させるなんてね。これで更に攻撃方法が増えたね」
「うん! あ、でも……自動で戻ってこないみたい」
未だに地面に突き刺さっている武器をみて俺はそう呟くとヴェルガは俺の肩に手を置いて言う。
「きっとスキルとかで戻ってくるようになると思うからそう気を落とさないで」
「そう、だね」
「今動きが遅い敵に当てられたんだから、練習して素早い敵にも当てられるようになろう」
「うん、頑張ってみる」
武器を回収して俺とヴェルガは森に向けて足を進めた。
しばらく歩くと森の入り口に辿り着いた。
すると、ぎゃぎゃと奇声を発しながらゴブリンが一体突っ込んでくる。
俺はゴブリンの攻撃を受け止め、隙だらけの背後からヴェルガが斬りつけて倒した。
「いきなりモンスターが襲ってくるなんて……まぁレベル的には問題ないけど」
ゴブリンのレベルは3だった。ヴェルガには余裕なんだろうな。
ヴェルガが止めを刺したけど俺にも経験値が入っていた。戦いに参加しただけでも入るようだ。
あれ? ゴブリンマジシャンの経験値が入っていないてことは、生きているってことだよな。
あのスパイダー無事かな……
そんなことを考えているとヴェルガが話しかけてくる。
「ハルナ、ここら辺だとレベル5まであれば大体大丈夫だから、それまでパーティーを組んでレベル上げする?」
「嬉しい提案だけど、ヴェルガには全然経験値入らないんでしょう? 俺の事は気にしなくいいからさ、奥に行ってきなよ。心配し過ぎ」
「……わかった。レベル上げには気を付けて」
「ヴェルガこそ!」
森の奥に向かうヴェルガを見送り、俺は茂みに隠れながら森を歩き出す。
「お、いたいた」
木の棒で地面を突っついている腕が長い猿のモンスター、ロングエイプを見つける。レベルは3。まだこちらに気づいていない。盾を回転刃に変形させて、ロングエイプに投擲した。
「ウキ?」
気づくのが遅かったロングエイプに運よく回転刃が頭部に刺さり、体力があっという間に減っていった。
ロングエイプを倒したことでレベルが上がり、SPを[2]を獲得。
ひと通りスキルツリーを確認したけど、目ぼしいスキルはなかったから全てのポイントを【トランス】につぎ込んだ。これで、【トランス】の合計ポイントは[3]になった。
あと何ポイント必要なんだろうな。
「ウキキっ!!」
「やば……囲まれちゃったな……」
スキル振りに気を取られていつの間にかロングエイプ三体に取り囲まれていた。
ロングエイプたちは牙を剝き出しにして威嚇してくる。仲間をやられて怒っている様子。これはヤバい……
盾を構えて睨み合っていると、突然体に白い紐のようなモノが巻き付き、一気に木の上まで引き上げられた。
「シュ」
「あ、お前!」
俺を引き上げてくれたのは蜘蛛のモンスターのスパイダーだった。