第48話
次の日、学校が終わった俺は寄り道せずに帰宅。
夕飯の準備が終わって皿に盛っているとスマホが鳴った。
「兄ちゃんからだ。えっと……急な飲み会で夕飯はいらないと。もう少し早く連絡ほしかったなぁ~」
文句を言いながらも了解っと返信してから兄ちゃんの分を冷蔵庫に仕舞って一人で夕飯を済ました。
風呂も終わらせてから俺はログインした。
「さて、何しますか……」
ソファーに座って俺は考えた。
今回颯音は用事でログインできない。モレルさんは……ログインしていないようだな。
久しぶりに一人か……今日はコガネとシロガネと遊ぶかな。
早速俺はコガネとシロガネに呼び出した。
「シュ?」
「ビー?」
初めて見る場所でコガネとシロガネはキョロキョロと見渡す。
俺は床に居るコガネを持ち上げる。
「ここは船の中だよ。面白いの見せてあげるよ」
後部デッキに歩き始めるとシロガネは肩に止まる。相変わらず軽いなシロガネは。進化したらシロガネも重くなるんだろうか……もし、クイーンビーに進化するなら乗せてもらおう。
そんなことを考えていると後部デッキに着いた俺は落下防止も兼ねている手すり付近にコガネを下ろす。
「シュ!!」
「ビー!!」
コガネとシロガネは目の前に広がる太陽の光を反射してキラキラ光る海に興奮しているようだ。
シロガネは海面に飛んで近づき足を付けて楽しんでいる。
コガネは足を突っ込もうとするもすぐに引っ込めるを繰り返している。意外とビビりなのかな? 意外な一面を見れたな。
近くにあるバケツで海水を掬ってコガネの前に置いた。
「大丈夫だから触ってみたら?」
コガネは俺の顔を見てから海水が入っているバケツを見てから足を恐る恐る突っ込んだ。
「シュ~」
丁度いい冷たさなのかコガネは目が細くなる。気持ちよさそうだな。
ここはゲームの世界だけど海はしょっぱいのかな?
俺は指をバケツの中に入っている海水に浸けて舐めてみる。
「しょっぱ!? ……すっげぇ再現度だな。お前たちも口には――」
「シュ!?」
「ビー!?」
「あ……遅かったか」
俺の真似をしたのかコガネとシロガネも海水を舐めてしまって苦い顔をしている。
俺は急いで水を持ってきて飲ませた。
「大丈夫か? 海水はしょっぱいからもう舐めるなよ~」
コガネとシロガネの背中をさすって注意した。
「シュ……」
「ビー……」
あんなに楽しそうにしていたのにコガネとシロガネはげんなりしてしまった。
うーん、なんか機嫌を直せるものは……あ、いいのがあったな。
俺はインベントリからケーキを取り出して目の前に並べる。
「お口直しに食べてみるか?」
ケーキをじーっとみるコガネとシロガネだったが甘い匂いに釣られて二体は一口食べた。
「シュ!」
「ビー!」
余程気に入ったのか次々にケーキを食べていく。機嫌が直ってよかったと思うけど、これは買い溜めしないとまずいな。今そんな金はないし、レベル上げついでに素材集めないと。
「シュ?」
「ビー?」
ケーキを食べていたコガネとシロガネの動きが止まり後部デッキに歩き始めた。
俺は二体の後をついて行くとコガネは器用に壁を伝って、シロガネは飛んで船先のデッキに向かった。なにかあるのか?
俺は落ちないように手すりに掴まりながら船先のデッキに向かうと。水色っぽい体色に体は長くて黒い足が沢山ついているムカデのようなモンスターが船先で横になっていた。モンスターの周りは濡れているってことはついさっき船先に登ったのか? コガネとシロガネはこいつに気づいたんだな。
船のステルス機能は発動中。モンスターには気付かれないと思うんだけど、どうやって上がったんだこいつは……
俺は警戒しつつモンスターの名前を確認した。
モンスターの名前はシーセンチピード。センチピードは確かムカデって意味だった気がする。てことは海ムカデってことだな。まんまだな。
レベルも20とコガネとシロガネよりかは高いけど俺よりも低い。それにシーセンチピードの体力はなぜか減っていた。弱っているなら俺一人でも対処できるな。
「シャ……シャ!?」
目覚めたシーセンチピードはコガネとシロガネを見て後退り海に飛び込んで行く。俺は船から見下ろすもシーセンチピードの姿はなかった。
「逃げた……みたいだな。船内に戻るよコガネ、シロガネ」
一緒に見下ろしているコガネとシロガネを連れて船内に戻ることにした。