第47話
受付嬢の後をついて行くと組合所の外に出る。そのまましばらく進んで行くと船が並んでいるところに着いた。
「こちらがハルナ様方の船になります」
受付嬢が紹介してくれた船はそこそこ大きいクルーザーだった。
船は全て颯音に任せていたから俺は口を開けて驚いた。
「春名、驚いた?」
「驚くに決まってんじゃん! 普通に漁船をイメージしてたわ!」
「えへへ、びっくりさせたぜ。船内も驚くから入ってみようぜ」
「では、こちらへ」
受付嬢の後に続いてクルーザーの中に入っていく。
クルーザーの中はそこそこ広くゆったり座れるソファーに綺麗なキッチンなどの設備が充実していた。道理でレンタル料が高いわけだ。
「ハルナ様、ハヤト様。こちらに」
内装を見回っていると俺と颯音は受付嬢に呼ばれた。
俺と颯音は受付嬢のところに行くと、受付嬢が壁に手を触れるとぱかっと開き淡い水色のクリスタルが出てくる。なんだろあれは?
「こちらは転移結晶と言いまして、こちらに触れていただくとフィールドに出ても船内でログアウトが出来たり、街と船の行き来が出来るようになります」
「へぇーそんな機能があるんですね」
俺と颯音は転移結晶に触れると淡い光が俺と颯音を包み込んで、目の前に登録完了とウインドウ画面が出現した。
「ご登録お疲れ様でした。あとの細かいマニュアルはこちらになります」
受付嬢から小冊子を受け取ると、小冊子は消えメニュー画面に船の項目が追加された。ここから見る感じだな。
「それでは私はこれで。何かありましたら組合所までお越しくださいませ」
「あ、わかりました。ありがとうございました……えっと……」
「私はカスティと申します」
「カスティさん、今日はありがとうございました」
受付嬢のカスティさんはお辞儀してから船内を出ていき船を降りていく。
「なかなか凄いクルーザーだね。海には出ないの?」
「そうですね。船内でもログアウトできるなら少しは出てみてもいいかなと思ってますけど……」
「はいはい! 少しだけでいいから海に出たいです!」
凄い勢いで手をあげて提案する颯音。
「わかったよ。少し出てみるか」
「俺が操縦していい?」
「できるのか?」
「さっき操縦方法みたから出来ると思う!」
「その自信はどこからくるんだか……まぁ任せるよ」
「やった!」
そう言って颯音は別の場所にある操縦席に向かった。
「あ、そうだ。モレルさんも転移結晶に触れます?」
「え、出来るの?」
「俺とプレイヤーカードを交換した人は出来るみたいです。ただ、俺か颯音が船に乗っていないと船内でログアウトした場合は街に戻されるそうです」
「そうなんだ。それでもいいかな~じゃあ触るね?」
モレルさんは転移結晶に触れると淡い光に包まれた。登録が出来たみたいだな。
『えー二人とも聞こえている?』
船内あるスピーカーから颯音の声が聞こえてくる。
「聞こえてるよ」
俺はスピーカー近くにあるボタンを押して返事した。
『それじゃ出発するよー!』
颯音の掛け声ともにエンジンが掛かり動きだした。
ゆっくりと船は動きだして街の外に出る水門に到着した。
しばらくすると門がゆっくりと開いていきまた船が動き出した。
『船の速度を上げるよー』
スピーカーから颯音の声がするとゆっくりと動いていた船は段々とスピードを上げ景色が流れていく。
俺とモレルさんは後部デッキに出て景色を楽しんだ。まだそんな遠くには行ってないからかモンスターの姿はなかった。
やがて船は止まり颯音が操縦席から戻ってくる。
「お帰り。操縦はもう余裕だな」
「まぁな。今度の土日でもっと遠くへ行ってみたい」
「明日返ってくるテストの結果次第じゃね?」
「そうだった!」
そんな会話をしているとくすくすとモレルさんが笑う。
「高校生って感じがして懐かしいなぁ~」
俺はモレルさんに尋ねる。
「モレルさんはどんな高校生だったんですか?」
「私? うーん……内緒!」
笑って誤魔化すモレルさん。これ以上は聞かない方がいいかな。
「あ、私そろそろログアウトするね」
「それじゃ俺たちもログアウトするか」
「そうだね。あ、ステルス機能を発動しなきゃ!」
颯音は指を動かして何かを操作する。
ステルス機能は船を透明化をさせる機能だ。フィールドでいる状態で船内からログアウトした場合この機能を発動させないとそこら辺に居るモンスターに船を壊される恐れがあるからだ。
もし壊された場合は高額な罰金を支払わないといけないのだ。これも全てマニュアルに書いてある。
「それと使用時間も停止したから二十秒以内にログアウトしないと」
「そうだな。それじゃモレルさん、今度船で旅する時は誘いますね」
「うん! 楽しみにしているね!」