第44話
門を潜ると一瞬で景色が変わり直ぐに潮の香を感じた。
「ここが海原エリア……」
俺は辺りを見渡すと遠くに青い海が見えた。
転移門は街の中心にあるって言うことはここが街の中心。そこから三方向に白い石で作られた道が伸びている。道の両端には白い石の柵のようなものが置かれていた。
俺と颯音は柵に近づいて下を覗くと道があってい沢山の人が往来していた。
「へぇー下にも階層あるんだ」
「上にもあるみたいだよ」
俺が言うと颯音は見上げた。
「凄いなこの街……散策してぇ!」
「散策はまた今度な」
「いいだろう少しぐらい……」
「成績落としても知らねーぞ」
「うっ……わかったよ……」
「じゃそろそろログアウトするぞ」
「はーい」
俺と颯音はログアウトしようとメニュー画面を操作していると空から人の頭ぐらいの大きさの丸くて浮かぶ機械が飛んできた。
「海原エリアにようこそ! 私案内役を務めさせて頂きますカルタと申します。プレイヤーカードのご提示をお願いします」
機械っぽい音声に従ってプレイヤーカードを提示すると、機械の中心から光が発せられ俺と颯音のプレイヤーカードを順番に読み取る。
「ありがとうございます。お二人はこのエリアは初めてなのですね。なにか分からないことがあればメニュー画面にあるヘルプを押して頂ければ飛んできますので」
「飛んでくるのかよ!」
俺が思っていたことを颯音が代わりに口に出した。
「それでは良い旅を!」
そう言ってカルタは飛んでいき別のプレイヤーのところに向かった。
「あんなのも追加されてたんだ」
「このゲームってアップデート内容を全部公開しないよな」
「俺は新発見もあって情報とかあんまり無い方が楽しいけど」
「颯音らしい」
俺と颯音は同時にログアウトした。
翌日、学校の授業が終わり今はHRの時間。
「えー来週から期末テスト期間だ。部活動は一切禁止だから勉強に励めよ」
担任はそれだけ言ってHRは終わって教室を出ていく。
来週から期末かぁ~テスト範囲見直せば大丈夫だろう。
「は、春名……」
俺の前の席に座っている颯音が顔を青ざめて振り向いてくる。
「お、おう。どうした……?」
「せ、せっかく……せっかく新エリアに来たのに……これじゃあ! 全然ゲームができないじゃん!」
「そっちの心配かよ! 少しは勉強の方を心配しろよ! 成績落ちたら没収されるんだろう?」
「そうだった! 春名……!」
「はいはい。勉強しに図書室行くぞ」
「あ、待ってよ!」
鞄を持って図書室に向かう。
図書室は俺たち以外に人の姿はなく静かだった。奥の方のテーブルに座り学校が閉まるギリギリまで颯音の勉強を見た。
放課後は颯音に勉強教えていたため、直ぐに週末を迎える。土日も俺の部屋で颯音と勉強。この間は俺も颯音に合わせてゲームを自重した。
そして、週末が終わりテスト当日。
「颯音、緊張し過ぎだよ」
「うぅ……だってせっかく春名に教えて貰ったし、しっかりしないとと思うとな……」
相当緊張してんな。こうなれば最終手段だな。
俺は颯音に耳打ちをする。
「いい成績が取れたら兄ちゃんが褒美くれるってよ」
「それ……本当……?」
「勿の論」
「おっしゃあ! 頑張るぞ!」
現金な奴だな。まぁこれで大丈夫だろう。
予鈴が鳴り、先生が教室に入ってくるとテスト用紙が配られテストが始まった。
テスト期間は三日間。俺も成績を落とさないように頑張ろ。
テスト期間はあっという間に過ぎ去り。
「時間だ、テスト用紙を回収するぞ」
最後のテストが終わって、テスト用紙を回収した先生は教室を出ていく。
「お、終わった……」
机に突っ伏して颯音は言う。
「お疲れ。手応えはどうだった?」
「うん。大丈夫だと思う」
「そっか。テストも終わったし久しぶりにゲームするか?」
「するする!」
「HR始めるぞ」
教室に担任が入ってくる。俺と颯音は姿勢を戻して長い担任の話を聞く。やっとHRも終わり俺と颯音はさっさと学校を出て帰路に着いた。