第40話
枝を伝って大きい鳥を追い駆ける。大きい鳥の正体はあのサイレントイーグルだった。
何故サイレントイーグルが樹海の中にいるか謎だけどそんなのは後回しだ。
サイレントイーグルは枝に当たっても気にすることなく飛んでいく。樹海を抜けられたらもう追いつく手段がない。
『ハルナ、行くよ!』
サイレントイーグルとの距離はあるけどコガネがそう判断するなら俺も応えるだけだ。
「おう! 【共鳴技・スパイダースネット】」
『スパーク!』
全ての指から帯電したワイヤーが伸びていく。
「は!? えええええ!」
『驚いてないで集中して!』
「え、はい……」
新しくなった共鳴技に驚いているとコガネに注意されてしまった。
俺はワイヤーを操ることに集中。ワイヤーは太い枝を切断しながらサイレントイーグルに迫っていく。
『ハルナ、指借りる!』
コガネがそう言うと指が勝手に動きだした。
「キッモ!」
『うるさい!』
自分の指が勝手に動いて気持ち悪がっていたら今度はうるさいと言われた。俺が悪いのか?てか、そんなことできるの初めて知ったわ。
コガネの操るワイヤーはサイレントイーグルを捉え全方位から襲う。
サイレントイーグルは迫りくるワイヤーを華麗にかいくぐっていく。あのサイレントイーグル凄いな……って感心してる場合じゃない。頑張れコガネ!
サイレントイーグルのスタミナが尽きてきたのか少しずつだが被弾し始める。すると、急に動きが早くなったサイレントイーグルはコガネの包囲網を抜けてしまった。
ワイヤーの攻撃で邪魔になる木々がなくなってサイレントイーグルは上空に逃げてしまう。
「ピィイイイ!?」
突然、シロガネが捕まっているサイレントイーグルの左足がスパッと切れ悲鳴を上げた。
『ハルナ、今だよ!』
「お、おう!」
そこら中に張られているワイヤーを足場にして急いで向かい落ちてくるシロガネを受け止めた。
「シロガネ大丈夫か!」
シロガネはゆっくりと目を覚めして俺と目が合った。
キョロキョロと周りを見るシロガネ。翅を動かし飛行する。
怪我はないようなだな一安心
「ピィイイ!」
鋭い足の爪を向けて襲いに来るサイレントイーグルに気が付いた俺はシロガネを庇って背を向ける。
だけど、いくら経ってもサイレントイーグルの攻撃が来ない。ゆっくり目を開け振り向くとワイヤーを重ねて攻撃を防いでいた。
『油断し過ぎ』
どうやらまたコガネが俺の指を動かして操作して守ってくれたようだ。
サイレントイーグルはまた距離を取って上空で俺を見下ろす。
「コガネ、助かった。ここは一旦引こう」
「ビー!」
シロガネが俺の回りを飛び回りなんか言っているようだ。
『あいつを倒したいって』
「そんな無茶な……」
サイレントイーグルのレベルは35。前回合った奴よりも強いし、今の俺たちじゃ正直に言ってキツイ。シロガネを救出したから戦う意味はあまりないけど。
「ビー!」
シロガネは余程戦いたいようだ。俺は軽く溜息を吐く。
「わかった。やばくなったら逃げるからな」
「ビー!」
「まぁやるからには勝つ気で行くぞ」
「ビー!」
シロガネが気合を入れて鳴くと急に光りだし特殊な革手袋に吸い込まれていくと元の武器に戻りコガネが出てきた。
「シュ!?」
武器と分離したコガネは近くの足場に着地した。
「え……嘘だろ……?」
強制的にコガネが武器と離れたせいでワイヤーが消え俺は落下していく。咄嗟に近くの枝に掴まり難を免れる。
そんな俺を置き去りに武器は姿を代わっていく。将軍蟷螂の革手袋とまた一体化して今度は掌に機械的な開閉口みたいなのが取り付いた形状になった。
そして、この武器の使い方が頭に流れてくる。
『私を使ってよね、ハルナ!』
コガネの時と同じく頭にシロガネの声が語りかけてくる。
「分かってるよ」
体勢を整えて上空で俺を見下ろしているサイレントイーグルに【挑発】を使う。
「ピィイイ!」
挑発されて怒ったサイレントイーグルがこっちに急降下してくる。それに合わせて枝から飛び降りた。
サイレントイーグルは止まることなく俺を狙ってくる。作戦通り。
サイレントイーグルが迫ってくる直前、体をくるっと回転させ掌から黒くて丸い物体を沢山ばら撒く。
「【共鳴技・ハニーボム】!!」
俺が叫ぶと一斉に黒くて丸い物体が光りだし爆発して大量の蜂蜜が広がり、サイレントイーグルと俺は蜂蜜に呑み込まれ地面に落ちた。
「いてて……」
落下ダメージで体力は大分減ったけどまだ平気だ。それよりもサイレントイーグルはどうなった。
そう思い辺りを見渡すと蜂蜜まみれのサイレントイーグルを見つける。羽ばたこうとしているサイレントイーグルだが蜂蜜の粘着力が凄すぎてまともに動かせないで立ち上がっては地面に倒れるを繰り返している。
【共鳴技・ハニーボム】は殺傷能力は無いけど、こうやって相手の動きを完全に止めれる共鳴技だ。まぁ使うにはインベントリにある蜂蜜を消費しなきゃいけないけどね。
「うへ……俺も蜂蜜まみれだ……」
両手の掌で体についた蜂蜜を触れると開閉口が開き蜂蜜が吸収されていく。こうやって使った蜂蜜も再利用できるのは消費が減って有難い。
よし、蜂蜜も取れて動けるようになったな。
「シュ」
「コガネも来たし、それじゃ動けなくなったサイレントイーグルを倒しますか」
「シュ!」
『やっちゃえー!』
俺とサイレントイーグルをフルボッコにしてようやく倒し切る。
戦い終わった俺はへたり込み空を見上げる。
「やり過ぎた……」
散々枝を切断しまくったせいか大分スッキリして青空が樹海の中でも見えた。
「まぁいいか」
そう言って俺は考えることを止めて大の字で寝そべる。