第4話
翌朝、朝早く起きた俺は身だしなみを整え朝食を作りにキッチンに立つ。今日は俺が当番。兄ちゃんが起きる前にさっさと作ろう。
「おはよう~……」
大きい欠伸をしながら兄ちゃんがリビングに来る。
「兄ちゃんおはよう。もうすぐ朝食出来るから座ってて」
「ん……」
俺は料理をお皿に盛りながら眠たそうな兄ちゃんに話しかけた。
「徹夜したの?」
「まぁな……」
「朝食あとにする?」
「いや、食べるよ。食べてから寝る」
「あんま無理しないでね」
料理をテーブルに並べ、エプロンを外し席について兄ちゃんと一緒に朝食を取る。
ゆっくりと食べる兄ちゃんが聞いてくる。
「逆に春名は徹夜してないの?」
「してないしてない。零時前にログアウトしたよ。で、今日はこの後からずっとやるつもり」
「ちゃんと休憩挟めよ」
「わかってる」
先に食べ終わった兄ちゃんは空になった食器を片付けて自室に戻っていく。
流しに置かれた皿を洗ってから俺も部屋に戻ってログインした。
「おお、人多いな~」
街中は昨日の夜よりも人が多いことに俺は驚いた。
土曜の朝だし人多くて当たり前か。
今日の目的はレベル上げ。一人でもいいけど、どうせならフレンドになったモレルさんとレベル上げしたいな。
俺はプレイヤーカードを確認したけどモレルさんはログインしていなかった。
「え……モレルさんレベル5になってる」
俺がログアウトした後レベル上げしてたのか。にしても、凄いな。俺も追い付かないとな。
レベル上げならあの森がいいかな。そうと決まれば向かおう。街を出るために門に向かった。
人の出入りが激しく中々前に進めないでいると、急に手を引かれた。
「大丈夫ですか?」
「あ、昨日の門兵さん!」
顔を上げると街に入る時に対応してくれた門兵さんが手を引っ張ってくれたようだ。
よく見ると兜を外して剣を腰から下げて、動きやすそうな装備を身に纏っていた
「この時間帯は人の出入りが多いのでこちらへ」
若めの門兵の人について行くと、人が通れるぐらいの木製の扉が見えてくる。
その前にいる他の門兵となんか話をしているようだ。少し経つと他の門兵が扉を開ける、若めの門兵が手招きをする。
扉を出ると皆が通っている門とは少し離れた所に出てきた。
「へぇ~ここに出るんだ。あ、門兵さんありがとうございました」
「いえいえ、私もレベル上げに行く予定だったので」
「ああ、それでいつもの重そうな装備じゃないんですね。森に行くんですか?」
「ええ。といっても奥の方に行く予定です」
「そっちの方がレベルが上がりやすいんですか?」
「私のレベル帯だとそこからじゃないと上がりにくいだけです」
頬をボリボリと掻く門兵さんのレベルが気になった俺は尋ねた。
「門兵さんって何レベなんですか?」
「私ですか?」
門兵さんは懐から俺に渡したプレイヤーカードみたいなカードを見せてくれた。
そこには門兵さんの名前とレベルとジョブが記載されていた。
剣士と槍士の二つのジョブ持ち。門兵の時は槍でオフの日は剣って感じか。それよりも。
「ヴェルガさんってレベル10なんですね。それぐらいで森の奥に行ける感じか……」
「複数相手なら少し難しいですけど、一対一でなら立ち回りさえ気を付ければ大丈夫ですよ」
「そうなんですね。あ、そうだ」
俺はヴェルガにプレイヤーカードを見せることにした。
「改めましてハルナっていいます。ジョブは盾士です。レベルはまだ2ですけど」
そう自己紹介をするとヴェルガさんは目を丸くしていた。
あれ、俺なんかしちゃった?
「あ、すみません。私たちに……いわゆるNPCにプレイヤーカードを見せる人はいなくて少々驚いただけです。よろしく願いますハルナさん」
「俺の方が年下なんで敬語じゃなくていいですよ」
ヴェルガさんの年齢は22歳。これはカードの名前欄の隣に書いてあったのだ。
「それなら……お互いに敬語なしはどう?」
「ヴェルガがいいなら」
「なら、そう言うことで」
俺とヴェルガは互いに握手を交わした。