第39話
マップを見ながら樹海の中をしばらく進むと先頭のベオルさんがしゃがむよう指示をする。
ベオルさんの指差した方に視線を向けると木の上や地面を突っついているサイレントバードが沢山いた。
あれだけ沢山いれば結構素材が手に入るな。
「作戦通りに行くぞ」
ベオルさんの言葉に俺と颯音は頷く。
俺は弓を構え、ソウルを消費して矢を作り出し木の上に居るサイレントバードに放つ。
矢はサイレントバードに飛翔して貫いて消滅した。
それをきっかけに他のサイレントバードたちが一斉に飛び立つ。
すかさずベオルさんが飛び出し大声で叫ぶ。
「【重圧】!!」
ベオルさんがスキルを使うとサイレントバードたちの挙動が一瞬止まり落ち始めるのを見てから颯音は駆け出し、次々とサイレントバードにコンボを叩きこんでいく。
コガネは地面に落ちたサイレントバードに噛みついて攻撃、シロガネは毒針を突き刺して攻撃をしている。俺はそんな二体のサポートをしながら倒していった。
「ふぅーようやく倒し終わったな」
「そうだな。コガネもシロガネもお疲れ様」
コガネには串焼き、シロガネには蜂蜜をあげて休ませる。
「全員怪我ないな?」
「はい! ベオルさんの【重圧】凄かったです!」
キラキラした目で颯音は言う。
ベオルさんの【重圧】というスキルは中範囲にいる自分よりも低いレベルのモンスターのほんの数秒間動きを止めるという便利なスキルだ。
俺も欲しくてベオルさんに習得方法を聞いたら大盾士でしか取れないスキルがあるようで早々に諦めた。
「そんなことないさ」
頬をボリボリと掻くベオルさん。あ、これ照れている反応だな。
「ベオルさん、照れてます?」
「なっ! ハルナまで揶揄わないでくれ!」
「あはは、すいません。でも、かっこよかったですよベオルさん」
「……勘弁してくれ」
顔を手で抑えてしゃがむベオルさん。揶揄ってないんだけど。
ベオルさんが通常運転に戻ってからそこら辺に転がっているサイレントバードの素材を回収した。
結構拾ったけど足りたのかな。
「颯音、素材足りそう?」
「少し足りないみたい」
「そうか、次行くぞ」
少し歩てまたサイレントバードの集団を見つける。さっきと同じ作戦でさくっと全滅させ素材を搔き集め颯音に渡した。
「……うん。なんとか揃った。早速アトラさんに送ってみる」
少し離れた颯音はメニュー画面を操作して素材をアトラさんに送る。
「アトラと顔見知りなんだな」
「アトラさんのこと知っているんですか?」
「ああ、前に素材を集めにパーティーを組んだんだ」
「へぇー」
「まぁ、あいつは戦闘はからっきしだったけどな」
「なるほど」
そんな話をしていると送り終わったのか颯音が戻ってくる。
「今から製作してくれるって」
「今から? もう早朝なんだけど。どれぐらい掛かるって?」
「昼には終わるって。夜にならいつでも取りに来ていいって」
「ふーん、じゃあ今日はもう終わりかな」
「かな。ベオルさんお付き合いありがとうございました」
「ありがとうございました」
俺と颯音は頭を下げてお礼を言う。
「気にするな。さ、街に戻るぞ」
俺たちは来た道を戻り街に向かった。
「ビー!」
「シュ!」
樹海を歩いていると突然コガネとシロガネに背中をどんと押され俺は地面に倒れ込んだ。
すると、同時に突風が起きた。
「春名、大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だけど……それよりもさっきの風なんだったんだ?」
「目を閉じていたからわからないけど、怪我がなくてよかった」
「おい、コガネとシロガネの姿が見当たらないぞ」
「……え?」
ベオルさんに言われ周りを見渡してもコガネとシロガネの姿はなかった。
「春名、上!」
颯音は必死に上の方を指差す。
目を凝らしてみると大きい鳥が枝を掻き分け空に向かって飛んでいた。
「あの鳥の足にコガネとシロガネが捕らえられているよ!」
「マジかよ……!」
俺は盾を弓に変え、最大まで溜めていたソウルを全て消費。大きい鳥に目掛けて放つ。飛翔する一本の矢は無数に分裂する。この【トランス・ソウルボウ】の隠された能力で最大まで溜めたソウルを全て消費することで使える能力。これを使ったら次のはもう撃てなくなるけど、今は悠長にしてられない。
大きい鳥は無数の矢を避けようとするもそのうちの一本がコガネが捕まってる右足に当たりコガネを離した。
落ちてくるコガネを下で受け止める。
「コガネ!怪我は?!」
俺はステータスをみてコガネの体力が多少減っていたけど、怪我無くて俺は胸を撫で下ろした。
「シュ!」
コガネは体を光の粒子にして武器に吸い込まれ特殊な革手袋に変わる。
『ハルナ、シロガネを助けに行こう!』
「ああ、分かってる。颯音、ベオルさんちょっと行ってくる!」
頭上の枝にワイヤーを伸ばして絡めて一気に上昇する。
待ってろよシロガネ、今助けてやるからな!